Ofuri long novels | ナノ




33




「お、邪魔しまっす…」

「お、上がれよ。」


三橋はいつもより一層緊張している様子だった。


「つーか、三橋は一回来たことあんだろ。」


と、呆れた様子で呟けば、三橋はビクビクと、ご、ごめん、なさいっ…と身構えながら謝ってきた。まあ、やっぱりまだ怯えられてるんすね…はぁ。

そんな三橋に内心傷つきながら客間に通した。
おどおどした三橋を肩を掴んで座らせて、コップに入ったお茶を目の前に置いた。


「っぁ、りがと…」


「どーいたしまして。」


ちびちびとお茶を飲む三橋の前に、阿部はどすっと座り、お茶を一気に流し込んだ。

そんな阿部の姿に三橋はちょびちょびとお茶を飲みながら見つめていた。三橋の視線を気づいて、少し荒々しくコップを置いて口を開いた。


「んで、相談って何?」

「あ、ちょ、ぷっ!?」

「…あちょぷ…?」


唐突な話の展開に動揺した三橋は持ったコップを零しそうになった。


「ちょっ!…お前…大丈夫かよっ」

「っごめ!だ、だいじょ、ぶ!」


三橋の手に、阿部の手が触れた。三橋はコップを持ち替えてすぐに手を離した。


「っ…!」


三橋は驚きで顔を真っ赤にさせて下を向く。


「…んで、相談って?」

「そ!そ、うだんっ!」


三橋は一変、目を見開いて阿部を見つめた。

そして、正座をし少し苦味を帯びた表情を浮かべながら、しかし目の奥には強い意思を感じられた。


そうして、真っすぐ阿部を見つめて口を開いた。




「野球、を…辞めた…ぃ…」






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