Ofuri long novels | ナノ
31
『お疲れっしたあああ!!!』
夕暮れのグラウンドに響く野球部員たちの声。みな、泥塗れになって部室に向かって行った。
「あっちぃ〜!疲れたぁ!」
田島は部室に入った瞬間に叫び、ユニフォームをその場へ脱ぎ捨てた。
「オイ、田島ー脱ぐのはいいけど、ちゃんと片付けろよっ!」
泉は呆れた表情で田島を一瞥した。
田島は「はいよー」と少し不服そうに頬を膨らませて汚れた服を取った
「ぁ…阿部、くん……」
「んだよ、三橋。」
騒がしい部室の傍らで、阿部と三橋は視線を絡ませた。三橋の小さな声に少し眉を潜める阿部。
「あ、べく、に…相談が…」
「相談?」
「…っここ、じゃ…」
三橋は周りを見渡して、苦い顔をした。そんな三橋の様子を、不思議そうに見つめて「わかった。」と一言呟いた。
「じゃあ……部室は今日、監督と花井が話し合いするって言ってたからなぁ………ぁ、」
すると、阿部は何かを思い出したかのように、欝すらと笑った。
「三橋、今日は無理だ。だから、明日夕方に俺の家に来いよ?」
阿部の突然の提案に、三橋は動揺していた。
「うっ!ぉあ…!!」
「明後日は部活休みだろ?」
「う、ん…」
「じゃあ、おっさきー!」
「また明日!」
話の合間に水谷と栄口の声が響く。その声に「お疲れー」と阿部は言うと、あとに三橋が「っお、疲れさま…!!」と言った。
「まあ、嫌なら別にいいけどな。」
そう言えば、三橋は気を使って反対できない。そんなことはわかっていた試合でもそうだ。俺の指示に首を振ることはない。
いつも忠実に守ってくれる。
「いい、よっ!阿部くん家、行き、たいっ!」
真っ赤な顔をした三橋はとてつもなく可愛い。そんな三橋の頭を撫でてやると、「うひっ」と笑った。
泉がすごく痛い目で俺を見ていることはわかっているが、まあ気にしないでいよう。
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