Ofuri long novels | ナノ




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<abe side>



アイツのことが好きになったのは、三星戦が終わったくらいからだった。
三橋の中の三星学園への未練を断ち切りたい。最初はそれだけの気持ちだった。
しかし。気づかない間に、それは違う思いに変わった。
三星から西浦へ向かせる、ではなく、三星から俺に向いてほしい。


「俺だけを見てほしい。」


歪んだ独占欲が生まれた瞬間だ。

自分の中に、こんな気持ちがあったんだ、と俺自身、自分が恐ろしく感じる。しかし、まだその時は、少し歪な愛だった。



あの時、三橋が女子に告白されている状況を見てしまった俺は混乱した。

同級生として、女子に告白されるという羨ましい気持ちと、何で三橋が、あんな女なんかに。
そして、付き合うだなんて…。


まるで、裏切られたような気分になった。


しかし、三橋は、
「だって、阿部く…いつも、輝いて、て…俺には、ない、もの、沢山持ってる…とても、カッコイイっ!!!」と、いつもと変わらず、尊敬した眼差しで俺に言う。
残酷な奴だよ、お前。





あの時、頭を撫でた手で首を絞めたいという衝動にかられた。
瞬間、何かが心の中で渦を巻いて俺の理性を食い尽くしていった。黒くて、歪んだモヤモヤとした汚れた渦。しかし、その渦が俺を殺していく時に、俺はどこか晴れ晴れした気分だった。

ずっと、俺の中にないと思っていたもの。

しかし、それは俺の心の奥底で眠っていただけだったんだ。

渦は愛情に近いもので、殺意にも似た感情。
それを人は、愛憎と言うのだ。



そして、その愛憎は俺の中で育っていき、俺を操って三橋を手にかけようとしていった。

もう俺の弱りきった理性では抑えられないほどに、愛憎は俺の中でいっぱいだった。





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