Ofuri long novels | ナノ
19
翌日、放課後のことだ。
「今日、西広早退したから。」
偶然、みんなの耳に入るほどハッキリと発言された言葉に花井は少し驚き気味だ。
「西広が休みとか珍しいな。」
「なんか、体調がよくないんだって…」
「風邪とかじゃねーの?最近流行ってるし。」
泉は少し不思議そうに呟く。
花井は「風邪ならまだいいけど…」と、言葉を重ねる。
「…まあとりあえず、西広のこと、監督に言ってくる。」
花井は部室の扉を開いた。
すると、何かを思い出したように振り向いて、栄口と阿部を見る。
「あっ…栄口と阿部、先に練習始めといてくれないか。」
栄口は「わかったっ」と緊張気味な表情で言い、阿部は花井を一瞥し、軽く頷く。
そうして、花井は出ていった。
「しっかしさぁ、西広が休みだなんて珍しいなぁ...」
静かな部室に、水谷の発言がその場の冷たい空気を引き戻した。
「…風邪なら仕方ないけど…」
「けど昨日とかは全く咳とかしてなかったし、寧ろ、元気だったけどなぁ…」
沖は右手で顎を掴み、不思議そうに首を横に傾ける。
部員たちは、少し不審な表情を浮かべる。
そんな空気の中、阿部の言葉が遮る。
「早く練習始めようぜ。」
部員たちは心配そうな面持ちを浮かべながらグラウンドへ向かった。
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