Ofuri long novels | ナノ




11





「で..阿部、くん 何?」

三橋の表情は固かった。





阿部は四限目の休み時間に、三橋に「放課後、少し話あるから。」と言った。

三橋は一瞬驚きの表情を浮かべたが、元の表情に戻した。

そして阿部の誘いを諾い、立ち去る阿部の背中を、田島ごしに見つめた。





放課後。教室に一人残った。
阿部の姿はまだない。


あの時の阿部はいつもと変わらない表情だった。
対して、あの夕方の部室での阿部の表情は。



「はっ..三橋っすまな、い。」


少し走ったのか、息があがっていた。


「っぉ、阿部、くんっ。」

三橋は軽く微笑んだ。
阿部は三橋の目の前の席についた。
足を組み、着いた席の机に頬杖をついた。そして、軽く欠伸をした。



「で..阿部、くん 何?」



三橋は、震えた声で聞いた。
そして目線は阿部から外した。


「ああ、お前に聞きたいことあってさぁ。」


「な、に?」


震えた声の三橋に阿部はニヤリと笑った。




「こないだの女子の告白どうした?」


「えっ?」


三橋は阿部を見つめた。


「いやさぁ、エースの恋路が気になってな。
お前の事だから、まだか?」


阿部の意外で且つ、突拍子もない質問に目を丸くした。


「えっ..と、まだ..だけど、付き合おう かなって..」


顔を真っ赤に言う三橋の表情は初々しさたっぷりだった。
阿部は、呆れたようにため息をついた。





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