Ofuri long novels | ナノ
10
三橋もそんな二人の姿に笑みが零れた。
すると、二人にモモカンの激が飛んだ。
花井は恥ずかしそうに顔を歪めて、田島もはにかんでいた。
そんな二人を見つめていた三橋。
「どうしたんだ、三橋?」
唐突に自分の名前を呼ばれて、驚きに体が飛び上がった。
振り向くと、
「そんな驚くことねぇだろ。」
阿部隆也。
黒髪に、整った顔にはタレ目。
三橋より約5センチ程身長が高い。
「今日も田島と花井、馬鹿やってんな。」
まるで昨日、何もなかったかのように話しかけてくる阿部。
三橋はそんな阿部の姿に目を丸くしていた。
阿部はいつもと変わらずに話し掛けてくる。
そんな阿部を見つめた。
すると、何も話さない三橋に阿部は、眉間に皺を寄せて見つめた。
「三橋、何?」
...ゾワッ。
「!っな、んでも ない...です。」
「ったく、言いたいことあんならしっかり言えよな。」
阿部はそんなことを言い残して、そそくさと去って行ってしまった。
練習が始まった。
走って、走って、走って、追い掛けて、取って、投げて、また走る。
その情景は、青春と言われるものだと思う。
汗や土にまみれながら、ボールを追い掛けて走り込み。
監督の怒声が飛び、また走り込む。
狙って、狙って、狙って、飛んできた球を思いっきり打つ。
飛んだ球が、青空に吸い込まれていく。
そして、また狙って、狙って打つ。
誰もが熱い目標を持ち、練習に打ち込んでいた。
しかし、三橋はある苦く、暗い気持ちに練習の集中力を掻き乱されていた。
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