Ofuri long novels | ナノ
08
「俺見たんだぜ?
三橋が女子に告白されてるところ。」
三橋は寒気で全身に鳥肌がたった。
何故体にそんな異変が起きたのかはわからない。
「やっぱエースはモテるな。」
ただ、阿部の表情は穏やかのようで、何処か恐怖を感じる笑顔だった。
「結構可愛い子だったじゃん。」
暗いせいもあるのか。
ふと感じる、バッテリーへの恐怖。
ただ、何故なのかわからない。
「付き合うのか?
付き合ったら、付き合ったらで野球に手を抜いたら許さねぇからな。」
あれ?怖い。
「お前、話聞いてんのか?」
「えっ!?あ..聞いて、るよ..!」
三橋は心臓が飛び上がりそうになるほど驚いた。
目の前に阿部の顔があったからだ。
「ったく...しっかりしろよ。」
「うひっ」
阿部は、わしゃわしゃと三橋の頭を撫でた。
その感覚がこそばくて笑うと、阿部も微笑んでいた。
三橋はそんな空間が嬉しくて、ニコニコと笑顔を浮かべていた。
しかし、そんな空間が嬉しくても、本当に心から嬉しく思えなかった。
さっきの阿部の恐ろしい笑顔が忘れられないから。
そして、阿部も心から笑ってはいなかった。
ニコニコ笑う三橋の笑顔に憎悪を感じていた。
三橋に愛を感じた。
それを、愛憎と呼ぶことに、だいぶ後に気づいた。
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