Ofuri long novels | ナノ
07
「...あ、べくん?」
まるで静物のように立っている阿部くんは、少し気味悪かった。
それに、表情は無い。
真っ直ぐと俺を見つめてくる。
「あ、べくん、ごめんね。
今日の鍵当番、阿部くん、だ よね...?」
阿部くんは、何も答えてくれない。
それほど怒っているのだろうか。
すると、阿部が口を開いた。
「...三橋?何で遅かったんだよ。」
「えっ?」
「...俺、ずっと、三橋のこと待っていたんだぜ?三橋のこと心配で堪らなかったんだぜ?」
阿部くんが、俺なんかのことを心配してくれていたみたいだ。
俺は、なんか嬉しかった。
阿部くんみたいな凄い人が、俺みたいなちっぽけな存在のことを心配してくれるなんて、それだけで天にも昇る気分になった。
「...ごめん ね?
ちょっ と、呼び 出されて...」
「誰に?」
「...先生。」
咄嗟に嘘をついた。
何故か口から出たのが嘘だった。
阿部くんの表情は、柔らかく
しかし、少し怖い笑顔を浮かべていた。
そんな時に思った。
阿部くんが変だと。
そう思っていた時に、阿部くんから返ってきた言葉に、俺は絶句した。
「嘘だろ?」
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