変化を求めて
化学の時間は途轍もなく暇で、辛いものだ。
しかし、出席日数がギリギリの俺は逃げることもできずに今ここにいる。
この日常の動きには何もなく、ただ日常が流れていく。
「おいっ!こっちにパス!」
大きな声が耳に響いた。
外を見ると、体育の授業だろうか、男子たちがサッカーをしている。
体育なんて嫌いだ、めんどくさいしね。
「海藤!守れ!!」
さっきの倍の音量で呼ばれる名前に、その人物を探して目が泳ぐ。
そして、はっとした。
ゴールに蹴られたボールに向かっているのは、紛れもなく、あの後輩くんの姿だった。
後輩くんは、肩をガチガチに硬くしながら、おもいっきり蹴られたボールに両手を広げた。
そのボールは、海藤の胸に直撃した。
「っ!」
後輩くんは少し苦しそうな表情をしたが、そのあと、喜びの顔に変わった。
それは、輝く笑顔。
「(彼は…あんな風に笑うんだ…)」
いつもの仏頂面に、不満げな表情、笑った表情の要素なんて全くもってゼロな子だったのかと思っていた。
楽しげに、でも少し引き攣った笑顔。
仲間もまだ気を使ったような笑顔で話しかけているようだ。
確か、あまり友達付き合いが得意じゃなかったような…。
変わらない日常の、ちょっとした変化を求めて、君を見つめる。
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