あなたが嫌いだ
不意に、真っ赤な顔がかわいいなんて思ってしまった。
「あの後輩くん、すごくキョドってる。どうする、平介。」
「いや、佐藤が呼んだんだから、佐藤が責任取るべきだろ。」
すると、あの後輩の顔が照れまじりの怒りの顔に変わった。
そして俺たちの元へ小走りでやってきた。
「せ、せせせ!先輩方ッ!!!」
言葉がすごく詰まっている。相当、佐藤に呼ばれたことに動揺している様子。
佐藤は「あはは!ごめんごめん!」と、何に謝るべきかわかっている様子で、やっぱり面白さと興味で呼んだんだなと悟った。
後輩は「さ、佐藤先輩!何故俺を呼んだんですかァ!!」と怒っている。
そんな2人のやりとりに、少し違和感ってのを感じた。
「あんな!生徒の前で!大声で呼ばなくたってッ…!!………あ。」
すると、後輩は俺のほうに気づいた。
さっき視線が合ったのは気のせいだったのか。
真っ赤な顔は少し白さを取り戻しつつあった。
「…な、何故…小川先輩が……」
「何故って朝ですから、学校へ。」
普通に返したら「きっ」と睨まれた。
その睨みはいつもと同様、本気の欠けた睨みだ。
「…俺は………っ」
後輩は俺のほうを向きながら、目線を合わせずに何かを言おうと口を開閉させる。
佐藤と俺は頭上にハテナマークを浮かべながら見つめる。
「俺は…」
何となくわかっている、この後輩には何回か同じようなことを言われていたから。
「あなたが……」
嫌いだ。
「嫌いだッ!!!!」
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