朝に君を見たとき
「へーすけー!」
背後からの声に振り返ると満面の笑みを浮かべた佐藤が走ってきた。
朝だというのによく走れるな…なんてちょっと驚きながら横目で見つめる。
「おはよう、佐藤。」
「おはよう!あれ?鈴木は?」
「あー何か少し遅れるってさ。」
「へぇー珍しいね。いつも平介が¨だいぶ¨遅れるって鈴木とよく話すのに。」
「¨だいぶ¨って所、強調しなくても…」
鈴木どうしたんだろ。
昨日は普通に元気だったし、何か忘れ物とかかな。
と、考えていた時だった。
「そういえば、昨日さ!……あれ?あれって、後輩くんじゃない?」
佐藤の視線を追ってみると、ちらほらといる同じ学校の生徒の中に見覚えのある天パの髪が見えた。そう、まさしくあの後輩だった。
背中しか見えないが、毎日のように教室に来ていた後輩の背中くらい嫌でも見覚えてしまう。
「あ、うん。」
「…呼んじゃう?」
「………は?」
「おーい!そこの天パの1ねんせーい!」
ちょ、まっ…!
ちょっと待て、という短い言葉で止める前に佐藤は大きな声で呼ぶ。
周りにいた生徒の何人かは、驚いた様子で俺たちのほうを振り返る。
すると、あの後輩が足を止めた。
そして、ゆっくりと振り返った。
「あ、気づいた。」
面白さを含んだ笑みで佐藤が呟いた。
きっと面白さが6割、興味が4割といったところだろう。
後輩は、最初俺たちを気づいていなかったようで、振り返ってすぐは少し目線を泳がせていたが、俺と視線が絡んだ瞬間。
「……ッ!」
口ぱくで「なんでッ!」と遠くからでわかる動揺と驚きと羞恥。
見開いた目と真っ赤な顔が語っている。
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