あたたかいね




「っ!?…な、何ですか!!」

「いやぁ〜……」

「隣に座らないで下さいっ!!」

「…そんなに俺のこと嫌いだったのね……」

「あっ、え……!!」


座らないで下さい、の一言にガチで傷ついてその場から立とうとすると、海藤くんが何か言いたそうにした。


「あ、いや…その……嫌って言うか、授業に遅れますよって言うか……」

「そういうなら、海藤くんだって遅刻しちゃうよ?」

「俺はいいんです…何て言うか………」


海藤は思い詰めた様子で下を向いて黙ってしまった。


「今は、授業を受ける気分ではないので…」

「何で?」


大体、理由は察する。
さっきの出来事だろう。


「…なんか、授業に出たくない気分なんです。」

「何で?」

「っ…モヤモヤ、してるんです…」

「何で?」

「っ!…さっきから何ですか!?」


平介の繰り返しの答えに海藤は立ち上がって、とうとう怒ってしまった。しかし、今は授業中。そのため少し声を抑えて。


「さっきから何度も、俺をバカにしてるんですか!」

「違うよ。」

「違うことないです!何ですか…先輩はっ!そうやっていつも俺の事をバカにして、見下してっ…!」


顔を真っ赤にさせて俺に訴える海藤くん…かわいい。ふと、そんな単語が浮かんだ。


「いつもいつもっ!そうやって!」


握りしめた拳をふるふると震わせて、俺にまっすぐ訴え続ける。かわいすぎ。

そして、俺の右手は無意識に伸びて…――


「先輩に優しさなんっ…か……」


海藤くんの細い腰に腕を回して、立ち上がっていた海藤くんを自分の胸の中に落とした。


「え…ぁ……」


膝立ちになった海藤くんの腰を強く抱き締めた。頭上の海藤くんの表情は見えないが、この服越しに伝わる熱から、海藤くんの真っ赤な顔が目に映る。


「せ、せせ…先輩っ!」

「海藤くんはあったかいね。」


海藤くんの熱が更に上がったのを感じた。




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