01.序章:狂犬と浮気者


目が覚めると、時計は0時を指しるのが見えた。
ふと、仕事のことが頭を過ぎったが、ああ今日は休みだ。
そう頭で呟きながら体を起こすと、体はだるく頭がすっきりとしない。
髪の毛を雑に掻き毟りながら、ベッド横に手をつく。
はっとしてベッド横を見つめると、隣にいたはずの鈴木はものけのからだった。
あれ?と思って机に視線を向けると、一枚のメモ用紙があった。

『おはよう。仕事に行ってくる。』

…そっか、鈴木は今日仕事なんだ。そのメモ用紙を手に取り、鈴木の性格を表した文字を見つめて小さく微笑んだ。そんな素っ気ない置き手紙でも、俺自身は鈴木の字を見るだけで胸が締め付けられるほどに嬉しくなる。だって、鈴木は俺の恋人だから。



高校卒業間近の頃、突然鈴木から告白された。

『出会った時から佐藤のことが気になっていたんだ。好き、だ…付き合ってくれ…。』

告白を受けた時、とても驚いた。
だってあの鈴木が俺のことが好きだとかありえないから、何かの罰ゲームかと思った。
でも目の前にいる鈴木は、俯き気味で顔を真っ赤にさせて、小刻みに手を震わせて、そして、少し俺に視線を戻したと時の瞳が本気だと語っていたから。

『…本当に?』

『あ、ああ…』

俺は自分でも驚くほどに気持ちが高揚しているのを覚えている。
そして、鈴木にとても興奮していた。

『…うん、いいよ。付き合っても。』

『!…』

見開いた瞳はとてもかわいくて、反射的に鈴木の唇にキスしていた。
俺の鈴木なんだ、と心が躍った。

そして、俺たちは付き合うことになり、それから現在に至る。
最初に俺が借りていたアパートに鈴木を半ば強制的に住まわせているような状況。鈴木自身、もう今では普通に暮らしてくれていて嬉しい。
しかし、互いに仕事を持つようになり鈴木も今では立派な教師になっている、忙しくすれ違う日々。
だが、俺は、鈴木といれるだけで幸せを感じていた。





2013.06.08加筆



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