センパイと後輩 (2/3)
(!)主人公→平介の後輩設定。
平介の片思い目線。
「あっ名無し。」
「おはようございます、平介センパイ。」
朝の高校の廊下は騒々しくて、後輩の声さえもかき消してしまうほどだった。
それもSHRまで5分前と毎回のギリギリ登校をする俺。
名無しは軽く会釈すると、俺の横を過ぎ去った。
「(あれ、)」
仄かな花の香りがした。
「へーすけ、何してんだ。」
ぼーと、立っていると目の前に鈴木が立っていた。
「俺たちが助けなくても早く来れたじゃねーか。」
5分前を早くと言うのはどうなんだろうと、自分のことながら考えてしまったが、まあ鈴木や他の奴らからしたら珍しいことなんだろうな。
まあね、と軽く微笑むと、鈴木は調子に乗るなよ、と教室へ向かっていった。
俺もそのあとを追って、騒々しい廊下を歩いた。
一年生の教室は、一個下の階だった。
だから、名無しともよく会う。そして、その度、あのクールな瞳が俺を見て、会釈する。
「おはようございます、平介センパイ」
「こんにちは、センパイ」
「お疲れ様です、さようなら、センパイ」
君は、何を思って俺に挨拶をするんだろうか。
その「センパイ」と言う単語に何かこもっていたりするのかな。
やっぱり唯の「センパイ」と「後輩」って関係だけなのかな。
まあ、それだけでもいいけどね。
あれだよ、俺が名無しを思う感情って、禁断てかダメな感情なんだよ。
俺は、朝の廊下、昼の購買、夕暮れの靴箱で、名無しに挨拶されるだけでいいよ。
「お疲れ様です、センパイ」
そう言って、今日も靴箱で会釈する君。
「お疲れ。」
俺も何も言えないまま、名無しの背中を見つめる。
佐藤が、今日の小テストの結果について話していることなんて耳に入っていない。
今日もまた、明日も明後日も、一年後だって、この関係は続いていくんだ。
センパイと後輩、という関係。
「平介、どうしたんだ。」
「いや、何でもないよ。」
そうして、靴を履いて昇降口を出る。と。
「平介センパイ。」
背後からの声。それも、毎日聞いて、恋しく思う声。
振り向くと、無表情に立っている名無しの姿。
佐藤も鈴木も、俺自身びっくりしている。
「これ、落としていましたよ。」
そういう名無しの右手には、生徒手帳。
ポケットを手で探ると、ない。
「あ、ありがとう。」
近づくと、改めて後輩としては丁度いい五センチほどの身長差。
勿論、俺のほうが身長は高い。そして、サラサラな髪の毛。
「いいえ。」
その一言にきれいな微笑みを浮かべて、俺の手に生徒手帳を渡す。
その瞬間に、ちょっと触れた薬指が痺れた。
名無しの顔は何も感じていないようで、俺は赤くなった自分の顔を隠そうとすることでいっぱい。
「では、センパイ。さようなら。」
「さようなら。」
そよ風でなびく髪が俺の横を過ぎ去った。
そして、また花の香り。
まだ薬指が痺れている、甘い痺れ。顔が熱い。
「へーすけ、帰るよ。」
佐藤の声がまた聞こえなくなった。
嗚呼、やっぱり俺、名無しが好きなんだ。
どうしよう。やばいよね。
そういえば、今日はあっくんが来るんだっけ。
もう何か、それもどうでもいいことのように感じてしまうほどに、やっぱり好きなんだな俺。
「平介、帰るぞ。」
「あ、うん。」
また明日も挨拶をしてくれるんだろうな、明後日も、一年後もきっとね。
そして俺は、ちゃんとそれを返してあげよう。
これからもずっと「センパイ」と呼んでほしいしね。
end
――――キリトリ――――
初夢です。
何か途中で平介がヤン
(デレ?)になりかけ
て危なかった。
まあ主人公は純粋に平
介を尊敬している感じ
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