嫉妬心 (1/3)
(!)嫉妬深い平介。病み気味。
「おい、名無し。」
呼ばれて振り向けば、いつもさながら不機嫌気味の鈴木がいた。
「お前、俺の貸した英語のノートどうした?」
「あ、」
「あ、じゃねえよ、返しやがれ。」
「ごめん、忘れちゃった☆」
「はあああ!?忘れちゃったじゃねえよ!お前、この間も世界史のノートで同じことした所じゃねえか!反省してなかったな…名無し…。」
「いや、ま、待ってよ!ごめんって、鈴木!ごめんなさい!お、おお怒りを鎮めて下さいよっ!」
「これが鎮めていられるかあああ!」
鈴木と俺は幼馴染みで、こんな調子。いつも鈴木には助けてもらってる。
「鈴木と名無しーどうしたの?」
「お!佐藤〜良いところに来た〜助けてくれ!」
佐藤の背中に隠れると鈴木は更に凄い形相で俺たちを見た。
「佐藤…お前はどっちの味方だ…?」
「す、鈴木!落ち着けよ!ほら、名無しもこんなに反省し……」
「鈴木のバーカ!許してくれてもいいじゃんか!アホ!」
鈴木の方から何かがブチッと切れたような音が聞こえた。
「名無し!覚悟しやがれええ!」
「す、鈴木!俺まで巻き込むな!」
ギャーギャーと騒いでいると、俺の襟を引っ張るものを感じた。
引っ張れるまま後ろに下がると、何かが背中に当たった。
「…?平介。」
振り向くと、真っ直ぐ俺を見つめる平介が俺の腰辺りに腕を回し、抱き寄せられていた。
「平介、そいつを捕まえておけよ…」
「鈴木!おちつ……」
「名無し、ちゃんと謝らないといけないでしょ。」
平介の声にはやけに冷静で逆らえない圧力を感じた。俺は平介より少し小さいので、見下される形になっているのにも原因があるだろう。
「ご、めんなさい…鈴木。」
「え、お…おう。」
鈴木も平介の雰囲気に拍子抜けのようで、さっきまでの怒りは消えていた。
「この通りなので、名無しを許してやってね、鈴木。」
「…。」
「ロールケーキ作ってくるしさ。」
「よしわかった、許そう。」
早っ!と思ったが、まあこの場が納まったなら何でも…。
「名無し、行くよ。」
「ちょ、平介!どこ行くの!」
「屋上。」
「おい!授業はー!」
佐藤の叫び声は聞こえていない、聞こえてないフリのようだ。
屋上に連れて来られてたものの、会話はなく、遠くで授業の始まりのチャイムが聞こえる。
「へ…すけ?」
「…名無しが、鈴木と幼馴染みなのは知ってる。」
平介が静かに話始めた。
「佐藤とも仲良しなのは知ってる。でも、名無しは俺のものだろ。」
平介っていつも思うんだけど、嫉妬深い。まあ、女子と話しているならまだしも、男子、特に鈴木や佐藤までにも嫉妬心を抱くのは、とても不思議だ。
「…もの、ではないけど…平介の、恋人…だよ…」
「じゃあ、もう、鈴木や佐藤と話すのはやめてくれ…」
「何で…鈴木や佐藤は友達だよ…?」
「知ってる、けど…俺は耐えられない。名無しがみんなと話すだけでみんなを殺してしまいそうなる、名無しが誰かに触られたらそこを削ぎたくなる。俺はこんなにも、名無しを……」
残酷なほどの熱烈な愛。
怖いよ、平介。
「キス、して…名無し。」
断れないほどの熱視線。
俺は震える手で平介の頬に手を添えた、途端、平介が乱暴に唇を奪ってきた。
絡まる舌、手、指。
すべてが熱い、苦しいよ。
平介の手が俺の髪を乱しながら、下へと探っていく。首筋、肩、肩甲骨、背筋、尻。遠くの意識で、抱かれるのかなと考えた。
すると、平介が小さく呟く。
「好き、だよ…名無し。」
end
主人公溺愛平介。
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