(!)敏夫×静信。▲10巻か11巻くらいネタバレ有り。
   シリアス捏造物語。










静信の目に映る俺は、屍鬼よりも恐ろしい姿をしていたと自覚する。
そして、顔中血糊だらけ、血に染まりきった白衣は医師としての貫禄を消している。


「敏夫。」


小さく俺の名前を呼ぶ静信の瞳は、真っ赤に烈火の如く光っていた。
そこで、改めて感じるのだ。

こいつが、屍鬼だということを。

しかし、その烈火の瞳の赤でさえ、今の俺には今まで殺した殺された村人の血に見えてしまう。
何とも愚かしいのだろうか。


「…俺は、お前を狩らなくてはいけない。」


「嗚呼、知っている。」


静信の口角が少し上がって見えた気がした。そして、その歯は赤く血に染まっていた。


(お前も襲ったんだな…屍鬼。)


そうやって、お前も生きたいと望むんだな。
耳の中で、何かが震えた音がした。


「私はわかっていたつもりだ、敏夫に狩られることを。
 そして、今の私は兼正の一人と言っても過言じゃないかもしれない。
 死を望み、沙子に血を分け、大川富雄さんを殺した。」


静信は真っ直ぐな視線を俺に向けてきた。
そして、その視線から目を離すことが出来ない。


「そして、今も、生きるために、人を襲った。私はもう、人では無くなった。」


静かな森の中、俺たち二人だけ。
静信の傍らで横たわる人間は、もうすでに死んでいる。
言葉通り、静信が殺したようだ。


「静信、どこでお前は…」





(間違ッタンダ…?)





右手に握られたハンマーが小刻みに震える。
ハンマーについた血は、俺を狂気に変えてきた。
しかし、今静信を目の前にしては何の効力を示しはしない。


「敏夫…私は、今の道を悪の道をは考えていない。それはお前もだろ?
 いくら、屍鬼になったからとはいえ、村人と殺してきたお前には、
 私の道を否定することは出来ない。」


「ああ、そうだな。」


そうだ、お前を否定することはできない。
しかし、俺は、俺の正義で生きることにする。

もう、誰かに縛られ操られた人生には愛想尽きたんでな。


「村人殺しの俺と、反逆者のお前と、どちらが正義なんて知ったことじゃないが…」


「…」


「お互いに、お互いの信じた道で生きるしかない、それしかないんだろうな。」


「…嗚呼。」


一瞬、静信の目が赤から黒に変わった気がしたが、目は赤を濃くさせた。
これで、最後だ。


「先に言っておく、さようならだ、静信。」


「嗚呼、さようなら…敏夫…」


静信は歯を剥き出して俺に向かってくる。
嗚呼、何て悲しい運命にいるんだろうな、静信。
俺たちの人生はここで終わりだ。

さようなら、静信、愛しい友よ。




end




(屍鬼の漫画を衝動買いで買ってたら、1ヶ月で全巻揃えた)







← | 次