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マーキングする吉良さん



※暗いお話です。ちょっと(?)痛いこともされます。
※書き途中なので中途半端なところまで&文として滅茶苦茶なところがあります。






私の体は痣だらけだ。
といっても、無理な乱暴をされているとかではない。
全て合意の上で行ったこと。責任は私と彼のどちらにもある。

着替えの際、身体中のそこかしこに刻まれた生々しい痕を目にするたび、これをつけられた時の記憶が脳裏に蘇る。




*******




吉影さんと付き合い始めたのは、私が高校生の時。
大きな問題もなく、それなりに仲良くやっていたのだが、私が大学生という年齢になった時、それは起きた。
高校の時は友達もあまりおらず、部活にも入っていなかったため放課後はさっさと下校して吉影さんの広い家に入り浸っていた私だったが、環境が変われば生活もまたガラリと変わった。
新しい友達。いろんなサークルの勧誘。そしてサークルの説明会という名の飲み会。
授業が終わった後も、むしろそれからが本番といった感じで、私は気の合いそうな友人と共に夜まで出歩いていた。だってそれが、普通だったから。周りもみんなそうだった。
ちょっと帰りが遅くなる程度なら、吉影さんが会社から帰ってくるまでに間に合うからバレなかったのだが、夕食を外で食べてくるようなことが何度も続くと、いよいよもって動向を怪しまれ始めたことが発端である。


「ただいまー……って、誰もいないんですけどね」


私が珍しく吉良邸に早く帰ってきた日。
二人で暮らすには広すぎる家に、誰に届くこともない挨拶が虚しく響いた。
玄関で靴を脱ぐと、吉影さんに怒られないようきちんと揃えて端に寄せる。


「……」


きしきし、と。
私の歩幅に合わせて床が静かに鳴るのを聞きながら、長い廊下を歩いた。
居間のふすまを開けると、私のいつも座る座布団めがけて持っていたバッグを無造作に放った。
吉影さんが見ていたらこんなことは死んでも出来ないけれど、今はいないから、関係ない。
家事も掃除もこれといってあまりすることがないため手早く済んでしまい、早速暇を持て余す。
先ほど放り投げた買ったばかりのバッグを漁るも、入っているのは講義のプリントくらいでげんなりした。
優等生じゃあるまいし、帰ってきてまで勉強は遠慮させて頂きたい。


「あー…。何もないや。本でも持ってくれば良かったかなぁ」


かといってここには暇を潰せるものなどろくにないため、どうしようかなぁと悩みながら縁側でだらしなく寝転がって外を見ていた。
床にばらばらに広がった髪も、捲れたスカートの裾も気にせず、ただ外を見ていた。
夕暮れ時の静かな世界に一人きり。
ふと、なんだか色々なこと―――学校も、吉影さんのことも―――全部に疲れてしまって、そのまま目を閉じた。


「……めんど」


なんかだるいな。
生きるのって想像以上に面倒くさいな。
もうこのまんま世界とか、目を瞑っている間に、なんかそういうの全部、終わってくれないかな。
そしたら私、きっと自由に―――

ピンポーン、と、もうすっかり聞き慣れたチャイムの音が鳴って、私は微睡みから現実に引き戻された。
一瞬ではっとして飛び起きると、身だしなみを整え、一秒でも早く戸を開けなければと玄関に飛んでいく。
自分で鍵を持っている癖に、どういうわけかあの人はどうしても私に玄関の戸を開けさせたいらしい。


「…ただいま。なまえ、いたんだね」
「あ、おかえりなさーい。いますけど、どうかしました?」
「どうもしないよ。聞いただけだ」
「そうですか?あ、鞄預かりますね」
「ああ」


そのまま踵を返して吉影さんの部屋へ向かおうとすると、ぐいっと肩を掴まれ留まらせられた。
やっぱり何かあるのかと向き直るも、吉影さんは口を噤んだまま、何か言いたげに私を見下ろしていた。


「…おい、なまえ。何か忘れてないかい?ホラ…とても大切なことなんだが」
「え、何が…………。って、ああ!ごめんなさい!ちょっとうっかりしてました」


私が慌てて吉影さんの首に腕を回して目一杯の背伸びをすると、上からキスがひとつ落とされた。
おかえりのキス、いつもしていたはずなのにどうして忘れてしまったんだろう。
大切なことなのに。


「…次からは決して忘れないでくれるかな」
「はい、気をつけますね」
「わたしは別に怒っている訳じゃあない。だから許そう。いいよ」
「……?」


なんだか吉影さんがピリピリしてるなと思ったので、会社で嫌なことでもあったのかと聞こうと思っていたのだが、その予想は外れることになる。
二人きりの食卓で、吉影さんの作った夕飯を食べようとテーブルについた時のことだった。
ふわっと香る食欲をそそる匂いに、一瞬で脳内が幸せに満ち溢れた。
ザ・単純人間の極みである。
でも自分のそういうところは、不思議と嫌いではなかった。
(わぁー美味しそう!トマトベースのカレーだよね、これ!はぁあ、すっごくいい匂いがするよ〜…)
さっきまでの鬱々とした気分はどこへやら、吉影さんは料理が上手いなぁ、私もいい歳だしそろそろ教えてもらわなくちゃ、とウキウキした気持ちになる。
つい目の前に置かれた好物のカレーライスに完全に気を取られていると、それは唐突に始まった。


「なまえ。最近、何やってるんだ?なんで帰りが遅い」
「…ぅっ。…えっと、それは」


冷えた声音にまたも現実に引き戻された。
カレーから吉影さんへと視線を移すと、真っ直ぐ目が合い息が詰まる。
正直、まあいつか聞かれるだろうなとは思っていたが、実際言及されると想像よりずっと気が滅入った。
食事の席のただの雑談…なんて甘いものじゃない。
それよりも、取り調べという表現の方が近いという和やかさのかけらもない空気の中、私は出来るだけ穏便にことを運ぼうと、慎重に慎重を重ねた言葉を選んでゆく。


「…友人と、サークルの説明会に行ってて…。説明会っていうのは、まわりの新入生も行ってるやつで…。それでその、みんなでご飯を食べてきてるの。…夕飯、最近一人きりにしてしまってたのは、ごめんなさい」
「……」


大学生なら普通のことだ。別に悪いことをしているわけではない。
ないはずなのだが、私はこの時、吉影さんの威圧的な雰囲気に気圧されてしどろもどろになっていた。
そんな私を見て、吉影さんは「ハァー……」と、大きな溜息を吐きながら言った。


「きみは『ご飯を食べてきてる』、と表現したが…いわゆる飲み会だろ?酒が出る席に行ってるんだろ?…悪いことは言わないから、やめなさい、なまえ。そんな所に行くのは」
「えっ。でも、みんな行ってるし…それに色んなサークルの説明会に行かないと雰囲気が分からないんです。ちゃんと見てからどこに入るか決めたいって思ってて…」
「なんだってェ?」
「……?」


嘆かわしい、とでもいうように吉影さんがかぶりを振る。


「おい…なまえ…サークルに入るつもりなのか?どうして?」
「え…、え…?」


どうしてって、何だろう。単純に入りたいから入るだけであって、何を聞かれているのかよく分からず余計に狼狽する。


「普通は、入るものだから…私も入ろうと思いました。高校では部活やってなかったし…えっと、」
「……」
「せっかく大学生になったんだから、心機一転こういう新しいことに挑戦するのもいいかなって…そ、その…。…思いまし、た…」
「……」


一秒たりとも逸らされない険しい視線に晒されながら必死に紡ぐ言葉は、どんどん尻すぼみになっていって、やがて消えた。
黙っている吉影さんの視線が怖い。
吉影さんが、怖い。
今日の吉影さんがこんなにも苛立っているのは、最近忙しくて放置気味だったからなのだろうか。
私にも私の生活があり、吉影さんのための私ではないというのになんでここまで怒るんだと、理不尽なものを感じて若干憤る。


「…あのなぁ」
「っ…な、何です」
「大学なんてバカな男がたくさんいるんだ。酒の席なんかにホイホイ行くなんて、ハッキリ言ってきみも大概だ」

「それにきみは気が弱いから、雰囲気に流されて変な男に言い寄られてしまうということだってありえるかもしれない」
「そんな…私、そこまで気弱じゃありません。大切なことは、ちゃんと自分で断れますよ。子供じゃないんだから」
「いいや、分からないよ。口でそうは言ってもね、もし力で強引にねじ伏せられそうになったらどうするつもりだい」
「そんなことする人いませんったら!」
「なぜそう言い切れる?相手は酒が入って羽目を外している学生なんだぞ。なまえは本当に危機管理がなっていないな…」

「はぁ、まったく、きみがぼやぼやした子だとはよく知っていたけどね、わたしは心配でたまらないんだよ。…本当は大学にだって行ってほしくなかったのに。こんな思いをするくらいなら家に閉じ込めておけば良かったかな…今更か…」


なにを言いだすんだとギョッとして吉影さんの様子を伺い見たが、別に平然としていて逆に驚いた。
私を脅すための言葉というよりは、ただ吉影さんが「そうしたい」と思ったからポロリとこぼした、そんな言葉のようだった。
怪しい発言に肝を冷やしながら、これ以上彼の機嫌を損ねないように言葉を選びつつ、それでもきちんと言いたいことは言おうと再び己を奮い立たせる。
さすがに大学をやめたりなんかは絶対にしたくない。そんなのはありえない。


「じゃあどうしろっていうんですか…?私、大学はちゃんと卒業するつもりですよ…。それに、大人になったらお仕事だってする訳ですし、もう、常に吉影さんの目の届くところにはいられないんですよ」
「こうするんだよ」

ガタリと音を立てて食卓を立ってこちらへ近づいてくる吉影さんに、何事かと体に緊張が走る。
まさか言うことを聞かない私に痺れを切らして、暴力に訴えるつもりでは…!?
最悪の想像がよぎったが、あまりの緊張に体が言うことを聞かず、私はただただ座ったまま石像のように固まるほかない。

何故か私をぎゅっと抱きしめてそのまま服を捲り上げて背中を露出させると、名残を惜しむようにそこをゆっくりと撫でさすった。

意味がわからず呆気にとられる。
とりあえず暴力をふるうわけではないらしいが、では一体何だと言うのか。


「とても綺麗な肌だ、本当に。…だが、勿体ないが、この際だから仕方ないな…。なまえ、ちょっと失礼するよ」
「は?何するつもりで…、…あッ!?」


何か不穏なものを感じ取って身構えるより早く、背中に熱い痛みが走った。
突然のことにパニックになり、咄嗟に吉影さんから離れようとした私の体はきつく抱きしめられ容易く押さえつけられる。


「ぅっ…!?く…!!……ぎ、…っ…!?」


ゆっくりとした長い痛みを受けている間、私にできるのは噛み締めた唇から抑えきれない悲鳴を小さくこぼし続けることだけだった。
こんな異常事態だというのに、叫んだら吉影さんが嫌がるだろうと思ってなんとか声を抑えた私を誰か褒めてほしい。
私も大概、呆れるほど従順である。
やたら長く感じる時間の中、ようやく痛いことが終わり、緊張で強張っていた体から一気にガクリと力が抜けた。

はっ、はっ、と乱れた呼吸の中、徐々に事態を把握していく。
抱きしめられ頭をスーツの胸元にうずめたまま息を吸い、そして吐くと、吉影さんの匂いでいっぱいになる。
いつもは安心していた筈の吉影さんの、大好きだった匂い。でも今は。
私、私は今、吉影さんに。吉影さん、に。


「っはぁ、はぁ、……い、いたッ…痛い……」


背中を爪で、ぐぐぐと。ゆっくり引っかかれた。

思いっきり。

それはもう、凄い力で。


背中だからそこが今どうなっているのか確認できないが、じんじんとした熱とヒリヒリとした痛みに、恐らく見事な赤い5本線―――吉影さんの爪痕がクッキリと残されていることがわかった。相当痛かったし、多分ちょっとくらい血が出てる気がする。
いや、ちょっとで済んでいるのかすらよく分からなかった。
吉影さんは唖然とする私の耳元へ唇を寄せ、たった今行った凶行など忘れたかのような優しい声で私に囁いた。


「―――なまえ、震えているね…。怖かった?」
「……よ、吉影さ、…っ…、なんで……」
「なんでって、いった通りだよ。」


こんな痕ついてる娘、まともじゃあないに決まっているだろ。
脱がした所で、抱こうとは思わないはずだ。

吉影さんはさも名案というように、得意げにそう教えてくれた。
確かに、背中にこんな派手な爪痕がある女は、誰の目からも危なく見えるだろう。
暴力的な彼氏がいるか、自分自身の体に傷をつけるような情緒不安定な女だと思われ、距離を置かれることは請け合いだ。
抱こうとは思えないだろう。
結果的に私の体は吉影さんの爪痕に守られることになる。
―――だから自分のしたことは、理にかなっている正当な行いだとでも言うつもりなのだろうか?


「まっ、治って消えるまでの期限付きだが…。万が一の保険にはなるな。今日のところはこれでいいか…」


自分の中でぐるぐる巡っていく言葉も結局何一つ言い返せず、私はただ黙って荒い息を吐いていた。




*******




「香水の匂いがする」
「っ…、女の子で、派手な子がいて」
「嘘をつくな。この匂いは紛れもなく男物だよ。」

マーキング行為は次第にヒートアップしていく。







吉良さんに痣だらけにされる話。

わたしは別に怒っている訳じゃあない(激怒)
怒ってないとかわざわざ言ってくる人の機嫌が悪いことは明白ですね…。


お互いに依存しあい、愛し合っているうちは良いのですが、もしそうじゃなかったら…というお話が書きたかったものです。

ヒロインが何かのきっかけでまともな精神を取り戻し始め、吉影さんおかしいのでは?と気付き始める&自然と距離が開く
→吉良さん情緒不安定になる
→お互い微妙に疑心暗鬼。吉良さんはヒロインを手放すまいと傷をつけたりするようになる
→歪な関係へ…

という方向に進めようと考えていました。ざ、挫折!
ここまで読んで下さりありがとうございました〜!






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