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膝丸と薄着

小部屋でまったりとくつろぐ、静かなひととき。たまにこうして、空き部屋で雑誌を読んだり、ふかふかの座布団を積み上げて眠ったりするのがなまえのひとつの楽しみだった。部屋にいると大体誰かがやってくるものだから、のんびりしたいときは離れの一室でぼーっと過ごすのが一番楽で自由なのである。
並べた座布団に投げ出された剥き出しの白い足が、パタパタと機嫌良さげに動いている。夏は暑くて嫌いだが、こうして冷房の効いた部屋で過ごせるのならば文句はない。
ずり落ちたキャミソールの肩紐を直しながら、なおも彼女の視線は、熱心に雑誌の記事に注がれていた。彼女のいた現世、かつて通った学校の近所にどうやら素敵な店が開かれたらしい。でかでかと紹介されているメロンのジェラートは、とても美味しそうだった。


「主、ここだったか。戦績評価が届い、て……。」
「あ、膝丸さん。わざわざありがとう。そこの机にお願いね。」
「あ、わか、分かった……。」
「……?どうかした?」
「いや、何でもない。」
「そう?ならいいけど。」


カラフルな雑誌がたくさん積まれた机のわきに重い封筒を乗せ、膝丸は誤魔化すようにひとつ咳払いをする。そのままどこぞへと行ってしまうものと思ったら、意外なことに彼は、むっ、と眉根を寄せて彼女の隣に座り込んできた。まだ何かあるのか、と初めてなまえは顔を上げる。それに答えるように膝丸は喋り出した。


「今しがた何でもないと言ったところだが、ひとつ聞きたい。失敬なことで大変申し訳ないが、しかしこの場合、聞かないわけにもいかないからな……」
「?……なに?」
「いや、その、君のその服は下着ではないのか?」
「は!?」


真面目な顔をしていきなり何をいい出すんだと膝丸の頭を疑いかけたなまえだったが、すぐに思い当たった。悪いのは自分だ、と。
膝丸の慣れ親しんだ時代のことを考えてみれば、至極簡単なことだ。重ね着に次ぐ重ね着で、とてもかさばる格好をするのが普通の頃。女性が肌を見せることなどそうそうありはしないのだろう。そんな常識を持った者が今のなまえの姿を見れば、驚いても仕方ないといえた。

「離れとはいえ誰が訪れるとも分からない部屋なのだから、女人がそのような……破廉恥な格好をすべきではない。これはきみの為を思って言っている事、どうか理解してくれ」
「いやいやいや、待って待って……!!これ、下着じゃないよ。心配してくれるのはありがたいんだけど」
「な、何……!?それはまことか!?」
「まことまこと」

なまえは苦笑いだった。男所帯の本丸で、下着でゴロゴロなんぞ出来るはずがない。
盛大な恥ずかしい勘違いをしてしまった膝丸は、一気に顔をぼんっと赤らめると、ぎこちない動作で立ち上がった。

「うううあああすまない!!!忘れてくれ!!今のは!!!それでは俺は失礼する!腹を冷やさないようにな!!」
「どーもー」

逃げるようにタタタと早足で去っていった膝丸。なまえはそれに可愛いな、という感想を抱きつつ、広げていた雑誌に再び視線を落とした……のだが。
遠のいたはずの足音がなぜだか再びこの部屋に近づいてきて、不思議そうに顔を上げた。訪れたのはやはり膝丸だ。言い忘れた事でもあったのだろうか?
きょとんと彼を見上げていると、膝丸は手に持っていた薄い掛布団を審神者にかけた。

「……これ、掛布団だ。暑いだろうが、腹にだけは掛けておくといい。女人は腹を冷やしてはならないらしいぞ」
「えっ、いいの?面倒見いいなあ、膝丸」
「兄者の世話を焼いている癖でな……」
「ふふふ、ありがと」
「礼には及ばんぞ。主を大切にするのは当然だからな!」




臣下として主を気遣っているのだと思っているものの、実際は無自覚に女人として意識しちゃってる膝丸くん。


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