夢小説 ジョジョの奇妙な冒険 | ナノ




「好きな人ができました」



声をかけてきたと思えばワンピースの裾を握りしめてしばらく押し黙ってしまったなまえの様子に、吉良さんは不審げに眉を顰めます。
沈黙が重く、なんとも言い難い微妙な空気が二人の間に流れていきました。
演出はこのくらいで十分。なまえは沈んだ面持ちの裏にこっそりと悪戯な笑みを秘め、演技を続けます。
心許なさそうにワンピースの裾を握りしめると、さも思い悩んでいるかのように顔を伏せて言いました。


「私……好きな人が出来たんです」
「そこに正座をしなさい」


なまえは一瞬で後悔しました。
やりすぎたくだらない嘘をついた事を……。



*******



「わたしはそういう嘘は好かないね。今日はエイプリルフールだって知ってはいたが……大体、いくら嘘だって限度があるというものだ……。なまえ、きみは自分が何を言ったか分かっているのかい?」
「……ごめんなさい。反省しています」
「本当に反省してるのか疑わしいんだがね」
「この度は私が愚かなばかりに吉影さんにこの上なく不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ありませんでした……!!二度としません!」
「フン……」


正座で頭を下げたなまえを見下ろす吉良さん。仁王立ちで腕を組んでいる彼は最高に面白くなさそうな顔をしています。誰がどこからどう見ても不機嫌度合いはマックスです。
いつもなまえといる時は穏やかな水面みたいな青色の揺らめく綺麗な瞳も、今は神経質そうに歪められて苛立ちも露わ。時間が経って落ち着くどころか、段々と怒りに火が着いてきた様子。
なまえは地雷を踏み抜いていたのです。

今にも爪を噛み始めそうな様子の殺気立った吉良さんの様子に、さすがになまえも自分がとんでもない過ちを犯した事を自覚するしかありません。こんな、誰も面白くない嘘なんてつくべきではなかったのです。しかしいくらそう思ったところで、時は既に遅く……。


「ああ……!!苛々が収まらない……!凄く不快なんだがわたしはこの気分をどうしたらいいんだ……?」
「……私のせいです。私に責任があります。何でもいう事を聞きます……」
「そういう問題じゃあない……!」
「っ……」


自分でも制御不能な苛立ちに精神を掻き乱されるこのしんどさは、吉良さんが大層嫌う感覚でした。爪は異様なスピードで伸び、いよいよもって我慢の限界を迎えてしまったようです。
ピタリと動かなくなった吉良さんの眼差しは虚ろで、どこを見ているのか分からない不気味さがあります。先程までの荒れた様子とは一転、突然さざ波のように静かになった口調で彼は言います。


「……これはもう無理だ。しばらくわたしは外出してくる。きみはくれぐれもいい子で待っていろ。二度とこんな事しないように反省していればいい」
「……!!!」


許容量を超えた苛立ちに対して吉良さんが出した答えは、他害。冷えた目をした吉良さんは完全に人殺しのスイッチが入ってしまって戻ってきそうにありません。
苛立ちをまさかなまえにぶつける訳にもいかず、だからといって我慢も出来そうになかった吉良さんは、全くの赤の他人をいたぶってくる事で気分を晴らそうとしているのです。まさかこんな取り返しのつかない事にまでなるなんて、誰が想像したでしょう?

さっさと玄関へ向かい始めた吉良さんにかける言葉もないなまえは、縁側に正座で呆然としたまま取り残されています。
百パーセント自分のせいだという事もあり、なまえにはそんな彼を止める権利などありません。


おしまい。



- BAD END -



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