夢小説 ジョジョの奇妙な冒険 | ナノ




いいにおいですね、吉影さん



今日もお仕事から帰ってきた吉影さんを温かく迎え、部屋で彼が脱いだスーツを受け取る。
きちんとハンガーにかけてあげるのがいつもの流れなのだが、私にはひそかにずっとやりたいことがあった。だから今日こそ、ちょっとだけ……。


「はー、ふー……吉影さんのスーツ……いい匂い〜……」
「何やってるんだ、なまえ」
「いやあ、エネルギーチャージをですね……。あ、お嫌でしたか?すみません、これ、ハンガーにかけておきますね」
「いや?フフ、そういうワケじゃなくてね……」


優しく微笑んだ吉影さんが、己のネクタイに手をかけ、しゅるりと抜き取った。
お次に着ていたワイシャツ……見慣れた緑のストライプのワイシャツのボタンを、私の目の前でぷちぷちと外していく。
ボタン一つを外すごとに私に流し目を送ってくるさまは、色気に満ち溢れた光景だった。

……何やってるんだ、吉影さん。なんか恥ずかしいよ。

徐々に露わになる、吉影さんの肌。男らしさを感じる大胸筋に、ガッツリ割れた美しい腹筋はとても見事だ。男性として魅力的な肉体をしていると思う。
いきなり始まったストリップショーに困惑していると、上半身裸になった吉影さんがこちらに着ていたシャツを差し出した。
たった今の瞬間まで吉影さんのぬくもりを与えられていたシャツはほんのり温かい。
これは洗濯機に入れればいいのかな?と考えながら受け取ると、吉影さんはニヤリと笑って言った。


「ホラ、こっちの方がいいだろう。こっちを堪能するといい」
「え、え?本当に?本当にいいのですか?」
「好きにしなさい」
「よ、よ、吉影さぁぁあん……!!さすがです!!天才なのでは!?好き〜っ!!」
「知ってるよ」
「そうでしたね〜!」


ぬくもりシャツを胸いっぱいに抱きしめて、思いっきり顔を埋めて息を吸い込んでみた。
……ひぃ、いい匂い……。吉影さんの匂いが……いっぱい……好き……幸せ……。


「はふぅぅ、へへへ〜〜〜」


デレデレとアホ丸出しの顔で幸せに悶える。
私のI.Qは今、2くらいしかなかった。

ヨシカゲサンスキ、ワタシ、シアワセ。

そのまま、背後の吉影さん用の布団にぱたりと倒れこむと、私は完全に吉影さんの匂いに包囲されてしまう。くらくらとして、夢中で雌猫のように布団に体を擦り付けた。


「なまえに喜んでもらえて嬉しいよ。反応が想像以上だったが……」


そんな私を興味深げに見つめた吉影さんは満足そうに頷くと、彼もまた手にした小さな布を鼻先に持っていくと、その匂いをウットリ堪能し始めた。

あれ、何だろう。ハンカチかな?
ハンカチに香水をワンプッシュするといい匂いがするって聞いたことがある。


「吉影さん、それ、ハンカチですか?」
「いいや、これはなまえの下着だよ」
「ええ……?」
「いい匂いがするね」
「そうですか。柔軟剤がいいのかもしれませんね」


もういちいちツッコみませんからね、私。

それにしてもいつの間にタンスから出したのやら。
彼が鼻先に押し当てている布はよく見ると刺繍があしらってあったりレースが縫い付けられていたりしており、間違いなく私の下着だった。……あれはお気に入りのピンクのパンツだ。
呆れたが、私も今吉影さんからワイシャツを借りている身なので反論はできない。

この部屋にいるのは男のワイシャツを抱きしめてくんくんしている女と、上半身裸でピンクのパンツを嗅ぐ男……。
なんだろう、この状況は。変態しかいなかった。
でもまあいいよね。別に誰かに迷惑かけている訳じゃないし。


「ふはぁ……。吉影さん、いらないワイシャツとかないですか?いつでもくんくんできるようにひとつ欲しいのですが……」
「ん、まぁあまり着なくなったやつはあるな。それをあげよう。そのかわりなまえもわたしにパンツを寄越してくれ。」
「言うと思いましたよー、もう……。まあひとつくらいなら、いいですよ。もともと吉影さんのお金で買って頂いたものですからね」
「じゃあ、今持っているこれを貰うよ」
「はーい」


交渉成立。私は無事にいい匂いの安眠アイテムをゲットできる運びとなりました。やったぁ!
代償はパンツ一枚、安いものです。
でも……。


「吉影さん、本当に私のパンツなんか必要ですか?別のものにした方が良かったんじゃあ……?」
「いや、これでいいんだよわたしは。なまえはホラ……持ち歩けないだろう?だから少し寂しくなる時があってね。でもこれならなまえの代わりとしてスーツの内ポケットにも問題なく入るよ」


!?

別に匂いをかぎたい訳ではなく、携帯したいらしい。
どういうことだ。持ち歩いてどうするんだ。


「いや、問題しかないじゃないですか!どうするんです?うっかりポロっと落としちゃったら……社内で噂になりますよ……」
「落とさないさ。きちんと肌身離さず持つからねぇ?」
「……そうですかー。でもあまり変なことはしないで下さいね」
「しないよ、変なことなんて」


でも吉影さんドジだからなぁ。心配だなぁ。
それに手首の代わりということは……私のパンツに話しかけたりするんだろうか?うわっ、ちょっと嫌だ。それは気持ち悪い。そんなことはきっとしない筈だ。うん、絶対にしない。
ここは吉影さんを信じよう。






*******






スーツの胸ポケットを上からするりと撫でる。
かつて手首を入れていた時のような厚みこそないが、これはこれで柔らかくて案外癒されるかもしれない。
会社になまえを連れて行けないことがわたしの悩みであったが、まさか意外な形で解決してしまうとは。


「これでずっと一緒だね……。会社にいる間もきみといられるなんて夢のようだよ。フフフ……幸せだなぁ」


常になまえの存在が傍に感じられる。心が凪のように穏やかになってゆく。これは画期的かつ革命的なアイデアだった。

下着を撫でていると、自然となまえがこの下着をつけていた時のことを思い出してしまう。わたしが贈った下着をつけてはにかむなまえ。懐かしいな。
そう、確か……贈ったからには着ているところを見る権利があるとわたしが言えば、なまえは恥ずかしがりながらもきちんと要求に応えてくれたのだった。愛らしい娘だ、たまらなかった。だからあの後無茶苦茶に抱いて……。


「ム……、……」


いけないいけない。なまえのせいでわたしの雄が少しだけ反応し始めてしまったじゃないか……。

少し熱を持ち、今にも頭をもたげ始めようとしている。元気があるのは良いことだが、しかし今は困ったものだ。
このままでいればわたしは会社内、オフィスの自席で白昼堂々と勃起する羽目になってしまうじゃあないか。今すぐどこかへ退避しなければ社会的な地位が危うい。絶対にこんな場所でそんな恥をかくわけにはいかない。


「……少し休憩してきます」
「あ、はい。吉良さん、お疲れ様です」
「お疲れ様です」


デスクを後にし、廊下へ続くドアを開ける。
人通りの少ない廊下を選びながら目的地へと向かう最中、既にわたしの下半身は痛い程に張り詰めていた。
妙な背徳感が背筋を駆け巡っている。

……なまえのせいでわたしはコレを勃起させたまま社内を歩くことになってしまったよ、まったくどう責任を取ってくれるんだい?
なんて悪い子なんだろうね。

声には出さず、ポケットの中の「なまえ」に語りかける。
わたしの足はまっすぐ、手洗いへ向かって行った。

まあ、こういう使い方だって当然ありだろう。変なことはするなとなまえに言われたのを思い出したが、これは断じて変なことではない。生理現象を抑えるために必要なことなのだ。まさかわたしも社内で自慰行為に勤しむことになろうとは思わなかったが……今日限り、一度くらい……いいじゃあないか。
なぁ、なまえもそう思うだろう?




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