夢小説 ジョジョの奇妙な冒険 | ナノ




親愛なる殺人鬼へ。





「だからさっきのは知り合いでも何でもないですし、これから会うようなこともありえませんって。」
「……」
「そもそも、ただ道を尋ねられただけでしょう?よくある事じゃないですか……」
「言いたいことはそれだけかな」


えらく不機嫌な吉影さんが放つ、どんよりとしたオーラ。
別に何も間違ったことは言ってない筈だが、何となく気圧されてしまって口ごもった。

きっかけは、先程二人で近所のスーパーに食材を買いに行った帰り道でのこと。
夕暮れに染まる街並みの中、私たちは、男の人に杜王駅への道を尋ねられた。
あれは確か私と同じくらいの年齢だっただろうか……。普通の青年だった気がする。特筆することもないような見た目だったため、よく覚えていない。
大分困っている風だったから適当なメモ紙に簡易的な地図を書いて渡して説明した。
青年は礼儀正しくお礼を言って去って行った。
その間ずっと吉影さんは押し黙って、私の方をじっと見ていた。
その時は、「あー、早く家に帰りたいんだろうな。こういうトラブル嫌いだし」くらいに思っていたのだが、どうやらそう単純な話ではないらしい。
でも、一体何にここまで怒っているというのだろうか?
きちんと言葉で言ってくれないと、私だって吉影さんが何がそんなに気にくわないのかいまいち分からない。だから謝りようがないのだ。


「な……何が不満なんですか?」
「何がって……少しくらいは心当たりあるんじゃあないのか?」
「えーっと……。トラブルに巻き込んでしまってごめんなさい……?」
「……ハァ」


呆れ顔の吉影さんが、緩慢な動作で大げさなため息をつく。
どうやら違ったみたいだ。


「不貞行為じゃあないか」
「ふてい……?」
「浮気って言えば分かるかな」
「ああ、浮気ですか。……って、ええ!?あれのどこが!?」


不貞の意味くらい知っているが、あまりに突飛だったもので意味が繋がらなかった。

この人はいい歳して何を子供みたいなことで駄々をこねているんだろう。
話したら浮気って何だ。正気なのか。


「こっちへおいで」
「……」


相当気が立っているようだし、今は逆らわないでおこう。それが私にできる最善の判断。
吉影さんの後にくっついて、黙って寝室へ足を運んだ。大人しくついてはきたものの、疑問が残る。
普通のセックスがお仕置き……?いや、この男に限ってそんな筈はない。断言できる。
ならば一体、ここで何を……?

いつも通りの丁寧な愛撫を全身に受けながら、私の頭の中は疑問でいっぱいだった。
上の空で喘ぎながら、妙な不安に心を萎縮させていた。
そうこうしているうちにお互い一糸纏わぬ姿になって、いよいよ挿入するのかと身を固くして待っていると、不意に吉影さんが立ち上がる。


「さて…今日はお口でしてくれるかな」


座る私の前に、仁王立ちの吉影さん。
眼前に堂々と突き付けられた、上を向いてそそり勃つそれ。
いつも何度も私の体内を暴れ回り、屈服させるもの。
ゴクリと唾を飲み込んだ音が、自分の中で大きく響く。


「分かりました……いただきます」
「ちゃんと挨拶ができたね。いい子だ。よく味わいたまえ……」
「んぇ……、れろっ、ちゅぅ……」


充血した鬼頭にちゅっ、とキスを落とす。
きちんと「頂きます」を言ってから舐めさせられるのが、私たちの作法。
最初は何言ってんだ変態かと思ったが、それで吉影さんが喜んでくれるなら別にいい。
髪をかき回すように優しく頭を撫で回されながら、私は吉影さんの大きすぎるものに舌を這わせた。
ちょっと―――いや大分横暴で変なところがある吉影さんだが、撫でられると嬉しくなってしまって、体の底から幸せが湧いてきてしまう。
やっぱりこのひとが好き―――そんな風に思ってしまう。
私は既に色々と手遅れだった。
先端から透明な汁を溢して感じる様子を観察してドキドキしながら、彼の気持ちに応えるべく熱心に奉仕をする。


「はむ、んふ、んっ……れろ……」


先を口内に迎え入れ、つるりとした鬼頭をアイスキャンディかのようにちゅばちゅばと味わう。
舌と、頬の内側の温かい粘膜で包み込むことを意識して行うと、吉影さんは先端からとろとろと涎を垂らして悦んでくれる。

まったく、吉影さんのおちんちんだけはいつも素直で可愛いことだ。

玉を揉みながら、熱い肉竿を上下にさする。
下の柔らかい玉にもキスをし、唇だけであむあむと優しくはみ、愛でる。
暴発しないように根元を押さえて、苛めるように激しく幹を擦りあげた。
限界が近づいて手の中でビクビクのたうつそれを、私は執拗に嬲り続けていた。
このひとの足元に跪きしゃぶらされているというシチュエーションに、私の足の間も熱くぬるぬると潤みきっているのが恥ずかしい。
けれどどうしようもなくドキドキ……ゾクゾクしているのも事実で。
上から私を見下ろす人の息も段々上がってきていた。


「なまえ……あ、ぁ、……なまえ」
「んむっ……なんれふか?もっと……ちゅっ、れろ……苛めてほひい、……ですか?」
「ぐっ、はぁぁっ、んんぅ……」
「かあいいですね、よひかげさん」


隠しきれない興奮を熱く滲ませ、ふっ、ふっと漏れ出る息がたまらなくセクシー。
イケメンだなあ、ずるいなあ。
しゃぶりつつ吉影さんの顔を見上げながら、なんとなくそう思った。
目が合い、吉影さんはちょっと意地悪に微笑むと、厚い唇をニヤリと歪める。
―――ああ、綺麗な顔だなぁ……。

思わず顔に見とれていると、口からにゅぼっとモノを引き抜いた吉影さんが先端の穴を私に向かって固定する。
こ、これはまさか。


「くっ……、そら、出るぞッ……。きみの顔にホワイトクリスマスだよッ……!!」
「……!?え、あの」
「うぅッ……!!」


びゅぐびゅぐと勢いよく、真っ白な精液が振りかかってくる。それを顔で受け止めさせられながら、私は呆然としていた。
ホワイトクリスマスってなんだよ。

射精し終えたのにまだ萎えないものを、私の顔に擦り付けられる。
鬼頭をグリグリと私の頬に押し付けると、精液をなすりつけ、染み込ませるような動きを丹念に繰り返していく。
マーキングじみた行為に、何か微妙な気持ちになった。
精液臭くなるし、顔射は出来れば勘弁してほしいプレイだった。今の私には拒否する権利なんてないのだけれど。


「ンン……はーっ……。いっぱい出たよ。よしよし。ちょっと待っててくれ」


充足感に満ちたいい笑顔で私の頭を撫でると、吉影さんは股間丸出しのまま寝室の隅に向かう。
まさか放置プレイを……!?まあ、楽だしそれなら別にいいかな……。と投げやりな気分で吉影さんの裸の背中を見つめて大人しく待つ。
しかし残念ながら放置プレイではないらしかった。
部屋の隅にあった何やら大きい家具……布を被せられているので何かは分からないが……を引いて持ってくると、布団の目の前に置かれる。


「……何だと思う?」
「……いや、知りませんけど……」
「そうかい。ま、実際見た方が早いな」


謎に勿体ぶる吉影さん、いいからさっさとして下さい。
夕食の時間がどんどんズレていっちゃいますよ。
吉影さんが、それに被せられた布をゆっくりと引くと、中から現れたのは……。


「か、鏡……!?まさかそんな……え、え、違いますよね?」
「そのまさかだと思うよ。フフフ。残念だったねぇ、なまえ……」
「ちょっと待って下さい……!いくらなんでもこんなのは……!」
「いやだね。待たない」
「ッ……」


素早く背後から抱きしめられて、そのまま後ろへ体ごと引かれた。二人して布団に座り込むと、これからどういうことをされるのか分かってしまい、体が凍りついた。

お仕置きのメインは、こちらだった―――。

抵抗を無効化するために後ろから私を羽交い締めみたいにしながら、私のお股に狙いを定めて、吉良さんが己のモノをぬぷぬぷと沈めていく。
先程までの愛撫で準備万端だったそこは熱くぬかるみ、容易く吉影さんを受け入れようとしてしまう。
敏感な部分をゆっくりと割り開かれ、熱くて固いもので着実に埋められていく感触。


「んんっ……、あはぅ……!」


雌穴を満たす雄に本能的にぞくりとして、恍惚とした甘いため息が漏れでてしまった。恥ずかしい。
感じている場合ではないのだ。鏡で見せつけられるプレイなんて嫌なのに……。抵抗しないといけないのに……。

全てを私の体内に埋め終えると、吉影さんは大きな手で頬をゆるりと撫でてくる。


「なぁ……気持ちいいかい、なまえ……。大人のチンポを随分と美味しそうに咥えこんでいるじゃあないか……。フフ……こうするとよく見えるね?」
「あっ……、うぅ……っ!!嫌ですこんなの……!だめ……!」


両足を開かれたまま固定され、動けない。
目の前の鏡には、二人の全身が写り、私たちが繋がっている恥ずかしい部分までもが丸映しだった。
お互いの体液でてらてらと光っている私のあそこに、吉影さんのものがはまり込んでいる。それはもう、遠慮なくずっぷりと。
ここがわたしの居場所ですとでも言うかのように、堂々と私の中で存在を主張する。
猛り立つ凶悪なものにそんなことをされているのだと思い知らされ、体が震えた。


「あ、あああぁぁ……」
「何をそんなに驚いているんだ。いつもこうやって繋がっているんだよ?きみはいつまでもうぶだなぁ。それはそれで……ンッ……いいものだが……」
「こんなの、みっ、見たくない……。もういいですから、普通にしましょう……?吉影さん……!!」
「なまえはよくてもわたしはまだ満足してないんだよ……ッ。ホラ、繋がっているところに集中するんだ。よく目に焼き付けておくんだな……自分が、ッ……誰の所有物かってことをね……!!」


あまりの衝撃的な光景にぐずる私めがけて、吉影さんが再び腰を揺すり始める。
ずぽずぽと無遠慮に出入りして暴く光景が、目の前の鏡に全て映し出される。

……こんなの、羞恥心の限界だ。

どうしようもなく耐え難くて、ガクガクと揺さぶられながら思わず目を瞑ってしまう。
どうせ吉影さんからはいつも結合部は見えているんだし、この際もういい。
いくらやめてと懇願したところで聞かない人だし、諦めるほかないんだ。
ならば、私さえ視界をシャットアウトできれば、もうそれで……。
揺さぶられながら、私の心は違うどこかへと飛んでいく。現実逃避というやつだ。
早く終わってくれないかな。そしたら夕飯を食べて……ゆっくりお風呂に入って……。
それから温かいお布団でゆっくりと眠れるんだ。いいな。


「おい。何目を瞑っているんだ?」
「……」
「ちゃんと見なきゃ駄目じゃあないか……。きみが見ないと意味がないんだよ、ちゃんと分かってるのかい」
「……」
「……強情なことだ。まあいい」


あれ、珍しく諦めてくれた?とホッとしのも束の間、突然乳首をきゅっとつままれ、そのまま強めに弄り回される。
油断したところへの不意打ち、強烈な刺激が全身をビリビリと駆け抜けたせいで、つい驚いて目を開けてしまった。


「んひぃッ!?な、何をっ……」
「フフ。やっと目を開けてくれたね。きみはここも弱いからなァ……。もうこんなにコリコリと……固くなってるよ」


言いながらも責めを緩めることはなく、強すぎる刺激を送り続ける吉影さん。もちろん下からもずこずこと突き上げられ続けている。
胸もナカも同時に意地悪をされて、私の体は抗えない歓喜にビクビクとのたうってしまう。


「ん、んんっ……!ひっ、くうぅんっ……」
「桃色で可愛らしい乳首だねぇ……。ぷっくりして、愛らしい……。つい、たくさん触りたくなってしまう」
「い、いやぁ、いやあぁ…っ!」


乳輪だけをくるくるとなぞられ、焦らされる。
突然乳首をぴんっ、と指先で弾かれ、遊ばれる。
指の腹で押し潰され、執拗に捏ねられる。
かと思えばキツくつままれて、擦られて―――。


「あっ……!あぅぅんっ……!」
「はぁ……なんてエッチな声を出すんだ。おねだりかな?いいよ……ッ」
「ひゃぅうう……はぁあ…っ!」
「ああ……本当に可愛い。なまえ」


だ、駄目……。こんなの、無理だ。頭にぼやーっと霞がかかり、変になってきた。
乳首を苛められるたび胎内が甘く疼き、挿し込まれる吉影さんのものに、ナカがねだるような動きでむしゃぶりついてしまっているのが自分でも分かる。
乱暴な動きで出し入れされるそれを、悦んで迎え入れた上に、淫らな動きで奉仕してしまうなんて。
自分の意思を無視して弱い雌に成り下がる己の体に、悔しさと嫌悪を覚えた。

屈服―――屈服してしまう。
ああ、雄の吉影さんに私は、どうしたって勝てないんだ―――。


「ご、ごめんなさいぃっ!むりっ無理です!あっ、あっ……!そこっ、一緒に苛められたら死んじゃうぅッ……!!」
「やめてほしいのかい」
「ああああっ!やぁぁあっ、あっ……あーっ!!」
「今、なまえの中をいっぱい可愛がっているものは何かな。言ってごらん。そしたらやめてあげるよ」
「あぁああっ!お、おちんちん!吉影さんのおちんちんです!!」
「そうだね。わたしのおちんちんがなまえの中をたくさんずぽずぽしているね……ッ」


おちんちんが私のナカを好き勝手に行き来するたび、ぐちゃっぐちゃっと聞くに耐えないいやらしすぎる音が響いた。
耳元では吉影さんの苦しげな息遣いと、堪えるような低い声が私の聴覚までもを犯し尽くしていく。
体内全てを、吉影さんで埋め尽くされる。
きっとこのままでは私はいつか、頭の中まで吉影さんでいっぱいにされてしまうのかもしれない。
吉影さんのことしか考えられない馬鹿になってしまうのかもしれない―――。


「ぁっ……、はぁッ……気持ちがいいね……ッ。なまえ、このいやらしい穴は……誰のものだい?」
「吉影さんの……っ、吉影さんの大きいおちんちん専用の穴ですっ!」
「ンン〜……」


私の吐いた猥語をまったりと吟味する上機嫌の吉影さんに、頬が熱くなる。
そんな、しみじみと感じ入らないでほしい……。
しかしとりあえず吉影さんの満足のいくセリフを選べたようで、胸への責めは解放されたし腰の動きも止まった。
九死に一生を得たものの、今も割と死にかけである。
これ以上されたらどうなってしまうのか、自信がない。
力の抜けた体をぐったりと背後のたくましい肉体に預けて、浅い呼吸を繰り返す。
はっ、はっ、と……まるで犬のような二人分の呼吸音が無様で浅ましく、他人事のように笑えてくる。
ここには今、本能に乗っ取られた二匹の動物しかいないのだ。


「ハァ。いけない子だきみは……。誰彼構わず大人の男を惑わして……淫魔なのかもしれないな」
「あ、いやぁあ……、わたし、に、人間ですよぉ……。とにかくもう、意地悪するの……やめて下さいね……」


いや、今日のあの青年に関しては道を教えただけであって惑わしてはいないだろう。
吉影さん、やっぱりおかしい。あんなことで浮気認定されたら、私は誰とも話せないじゃないか。
あんまりすぎる。そんなのは御免だ。


「イヤイヤ言いながらあんなに感じるなんてどういうことなんだ?ま、なんにせよこんないけない子にはわたしが直々にお仕置きをしなくてはならないよな?ホラっ、こんな風に……なぁッ」
「そんなぁっ、あはぅっ、やっ、ぁあ!!は、速くしないでくださ……ッ、!!ひ、ひぃ!!ぁっ!あ、あ!どうしていつも苛めるのぉッ…!?嫌、嫌、嫌ぁあ!!もうやだぁ!!」
「おや、酷い言い草じゃあないか。それじゃあまるでわたしがなまえを虐待してるみたいに聞こえる。しかし違うだろう……ッ。元はといえばきみに原因があるのだから、こうされるのは当然のことなんだよ?分かるねッ……?」
「そんなの分かるわけないでしょっ……!吉影さんの言ってることっていつも変ですよぉっ!どうかしてます!おかしい!!助けてぇえッ!」
「は?よく聞こえなかったよ」


ずしんっ!と、お腹の中を勢いよく突き上げられ、一瞬息が……止まった。


「か……はっ……、ぁ、あっ……」
「ンッ……!こんなにガクガクと震えて……気持ちが良すぎたのかな。それなら期待に応えてあげないといけないようだ……。そらっ……、どうだ!?」
「ひぃっ!!ぐっ……、ぐるじっ……!!じぬっ、じぬぅう!!」


知性のかけらも感じられない嬌声をみっともなくあげながら、次第に意識が遠のいていく。

吉影さんの横暴など今や慣れたものだと思っていたが、これは―――これだけは!!

ズン、ズンと重い一突きを、確実に中に打ち込まれる。
ごりごりと内臓を押し上げる、ガチガチの吉影さんのおちんちんはまるで凶器なのだ。
それに、抉り罰するようなその動きは、私には負担が大きすぎた。
なんせこの体格差だ。ただでさえ色々と精一杯だというのに、その上配慮のない動きをされては……、私は……。

そもそも、なんで私……こんなことされて……―――。
何か悪いことしたっけ……―――。









*******









ばん、ばん、と叩きつけるような音が響く。

吉良はその体を大きく揺さぶり、体ごとぶつけるようにしてなまえに自身の雄を突き立てていた。
ヘコヘコと腰を振り立て、幾度も幾度も狂ったように同じ動きを繰り返す姿はどこか滑稽に見える。
性行為というよりは暴力に近いような激しい行為の中で、なまえはただされるがままに、男の酷い振る舞いを甘受するほかなかった。体力の限界なのだ。
そんな様子に気付くこともなく、吉良は夢中になってなまえの体を貪り尽くしている。


「ああっ……、気持ちいいよ……!!なまえの淫乱なあそこがわたしのものを……ッ、にゅるにゅると擦ってきて、すごいっ……ぁあぁ、すごいんだッ」
「ぅ……、くっ……」
「なまえも感じているんだろ?隠さなくていいよ……。たくさん声を出して、おかしくなってしまえばいい……!なまえッ!!」
「ッ……、……。はっ……、はっ……」
「おや……なまえ。なまえ?」


反応が消え、弱々しい呼吸音を漏らすだけとなったなまえに吉良は怪訝な顔をして、やっと動きを止めた。


「……いけない。少し夢中になって強くしすぎたかな。すまないね。気を失ってしまって可哀想に……」
「……、……」


悪魔のように責め立てていた態度から一転、吉良はなまえを労わるように抱きしめて、頬をすり寄せていた。
しかし未だになまえにみっちりとはめ込んだままの剛直は、萎える気配すら見せていない。
その元気さを誇示するかのように、なまえの膣内でビクンビクンと脈打っている。
早く吐精したいというように。


「気持ち良くトんでしまっているところ悪いんだけどね……わたしもこのままというのは少々辛いんだよね。最後までなまえのちっちゃいおまんこでビュービューしないと収まりがつかないんだよ……。ああ、辛いなぁ」


なまえの意識がないのをいいことに、いやらしい言葉を投げかけて悦に浸る。趣味の悪い行いだ。


「と、いうワケで……。今しばらく体を借りるよ」


先に意識を失って自分を置いてけぼりにしたなまえを責めるように、吉良は意思のない体を再びゆっくりと揺さぶり始めた。










*******


 < なまえ視点 > 







なにこれ……。

目が覚めた時、最悪だった。
体中が精液まみれ、赤い噛み跡だらけ。
ズタボロにぶち犯された後みたいな、凄惨な見た目だった。
塗りつけられた精液は乾いたせいで肌がパリパリするし、とにかく匂いが最悪。
おまけに中にまでたっぷりと出されている。
筋肉を酷使していたからか節々が痛む体をゆっくりと起こすも、動くと太腿を伝い流れる不快感に眉をひそめた。
別にいいのだ、中出し自体は。普段から中出しをねだる吉影さんのために、私はいつからかピルを服用するようになった。問題はなくとも、ただ後処理が大変だから、面倒で嫌いというだけだ。

私を散々汚し尽くした当の本人は、隣ですやすやと寝息を立てていた。平和なことだ。


「…………」


腹が立ったので、軽くデコピンしておいた。


「はぁ。からだ、流さなきゃ……」


おぼつかない足取りで布団を後にし、全裸のまま浴室へ向かった。
どうせもう着替えたいし、上がったら新しい服を出せばいい。
タオルなら脱衣所にあるから、自室まではそれを巻こう。
お風呂で至る所を洗いながら、髪にまでべっとりとあのひとの出したものが付着していたことに気づいてゲンナリする。
こんなところにまで塗り込めるなんてどれだけ執念深いんだ。おかしい。

……匂い、ちゃんと落ちるかな。










*******










「さっきは無理を強いてすまなかったね。体は大丈夫かい。ご飯できてるよ」
「……」


ああ、夕食……。そういえばそうだった、楽しみなのに何故だか忘れていた。
自室で着替え終わった私は、そのまま室内で頭と体の熱を冷ましてから吉影さんを起こしに行くつもりだったのだが、どうも思ったよりずっとぼーっとしてしまっていたらしい。
部屋にやってきた吉影さんもまた、お風呂に入り終えたようですっかり身綺麗になっていた。ご飯もできたのだという。


「そうですか。ありがとうございます。今、行きますね」
「なまえ」
「何ですか?」


部屋の入り口で、ふすまに手をかけたまま動かない吉影さん。
まだ何かあるのだろうか。


「……怒ってるだろう?」
「え……いや、別に」
「……」
「ご飯、冷めちゃいますね。行きましょう」


ふすまと吉影さんの隙間をするりと抜けて廊下へ出ようとするも、手首を強く掴まれて阻止された。
腕を引かれ、がくんと吉影さんの胸にぶつかってしまう。


「、つっ……」
「きみは何をされてもぼくを嫌わないのか?」
「……そう思いますか?」
「ぼくが聞いているんだろ。質問に答えろ」
「……」





「それはどうかは分かりませんが、例えどうだとしても一緒にいますよ。私は」










*******










一緒にご飯を食べて談笑して、並んで洗い物をした。
洗剤で手が荒れてはいけないから水仕事禁止、とのお達しが定められている私は、吉影さんの洗った皿をひたすら拭くだけ。
大して役に立ってないだろう私だが、吉影さんは私が手伝っていることに嬉しそうにしていた。
今私の隣にいるのは、いつもの穏やかな紳士の吉影さん。優しい大人の吉影さん。私を褒めてくれて、私が傍にいるだけで嬉しそうにする、可愛い吉影さん。

嬉しかった。

いつもこうでいてほしいものだが、そんな日が来るのかは私にも分からない。
洗い物を終えた吉影さんの手をタオルでポンポンと拭いてあげた。


「はい、これでいいですね」
「ありがとう。……ところで、なまえ。ちょっと話があるんだがいいかな」
「あ、はい。……ちなみにどういった類のお話でしょう?」


吉影さんが無言で指差す先は居間の低い座卓。
その上に置かれている、私の携帯電話。
私はもう、半目だった。どうやら穏やかラブラブタイムは終了を告げたようだ。
なんて呆気ない時間だったろう。ありがとう、さようなら。
何となくだけど、吉影さんが何を言わんとしているのか悟ったが、出そうになった溜息はギリギリで飲み込んだ。
どうせ男の連絡先を消せとか強要し始めるのだろう。しかし私は屈しないぞ。
それにしても困ったものだ。携帯を手に取り、考える。
そういえば何人くらい登録してあっただろうか。確認のために連絡先を開いてみて、一気に違和感に呑まれた。


「…………あ」


絶句した。したとも。
だって、どうして―――ここまで。

登録件数、二件。
吉影さんと私の実家。それだけ。

清々しいほどにすっからかんだ。
待て待てどうしてくれるんだ。控えなんてないのに。
せめて聞いてよ。度を超してるよ。こんなの酷いよ。










*******


 < 吉良視点 > 







携帯の連絡先をわたしによって全て消されたなまえ。
さすがに怒り狂うかと思いきや、返ってきた反応は案外静かなものだった
わたしのことをカワイソーなものを見るような目で見ると、悲しそうな顔をして黙って自室に戻ってしまった。


「…………」


拒絶も怒りも泣きもしない。
ただ、悲しそうだった。諦めきった、疲れた目をしていた。
それに対して何故か強烈な居心地の悪さを感じたわたしだったが、しかしこれは必要なことだったのだと自分に言い聞かせて心を鎮める。
なまえが他の男のところへ行ってしまわないように、きちんと守るのが恋人のつとめというもの。
当然のことだ。

……なのに何故わたしの胸中がこんなにもざわざわとして落ち着かないのかが、どうしても分からない。
引っかかるのだ、「何か」が。何か―――とても大切なことが。
まるで封印された記憶かのように思い出せないでいるが、本当は忘れてはいけないはずの何かが―――。
記憶力には問題がないはずだが、どうしてスルリと出てこないのだろう。

それは確かわたしの、子どもの頃の―――。


「……ッ、……なまえ、……!!」


それの正体が分かった瞬間、わたしは弾けるように居間を飛び出した。










*******










わたしのやったことは、かつてわたしが母親にされていたのと同じことだった。



相手の主張を聞かず、一方的に強制する。
それは最も忌むべきことだ。わたしが嫌うことだ。
そう、子どものわたしはそれを激しく嫌っていた。今思い出した。


「はぁ……はぁ……」


なまえの諦めの目。あれがわたしの子どものころのものと重なったから、あんなにも居心地が悪くなったのだ。
なまえに謝らなくてはいけない、そうしないと気が済まない。わたしは違うんだ、母のような人間ではない。
それを彼女に証明しなくてはぐっすり眠れそうにない。
しかし一度思い出してしまうと次々と溢れ出し、頭がぐるぐるとしてきて、何やら段々と酷く辛くなってきた。
何が何だか分からない。滅茶苦茶な記憶が波のように押し寄せて、ただ、辛かった。


「くっ…、はぁ……はぁっ……!」


助けて欲しいと思った。

なまえに助けてほしい。
酷いことをした後だが、わたしを助けてほしい。
なまえ、なまえ……なまえ。

なんとか眩暈を押さえ、なまえの部屋のふすまに手をかける。
いた―――ちんまりと縮こまって、クッションに座っている。


「あ……よ、吉影さん」
「……ッ、……」


声もかけず突然押し入ってきた私を見て、一瞬ぽかんとしたなまえを抱きしめた。
柔らかい胸元に顔を埋めると、とても暖かかった。
体温も、言葉を喋る唇も、死体の手にはなかったものだ。きみに会ってしまう前まではそんなものなくとも満足出来たはずなのに。


「すまないなまえ」
「……」
「なまえをあんな気持ちに……傷つけようとした訳じゃあないんだ」
「……」
「すまなかった、謝るよ、でも聞いてほしい。ああでもしないと不安で、わたしは、」
「……」
「確かに悪かったが、でも仕方がない。仕方がなかったんだ、なまえなら、分かってくれるね……。優しいから、許してくれるんだろう……。わたしを許してくれるんだろう……」
「……」


ブツブツと一人で口走るわたしにぽたりと降ってきた、温かな水。
ハッとして見上げると、なまえは大きな瞳にわたしを映していた。
その目から白い頬に伝う透明な雫。
言葉を失っているわたしを、なまえは守るようにそっと抱きしめ、頭を、背中を、撫でてくれる。
その体温も手もまなざしも、まるで子を慈しむ母のようだと思った―――わたしはそういった類のものを知らないが、とにかくそんな風に錯覚したのだ。

なまえは静かに、しかしぼろぼろと涙を流して言った。


「吉影さんは、寂しがりやさんです」










*******



 < なまえ視点 > 






「吉影さんは世界で一番寂しがりやさんです。女の人の手を獲って、お風呂もトイレもお外でも、片時も離れずお傍に置いて。痛んできたらまた新しい子を捕まえてきて悦に浸って。欲しかったんですね、味方が」
「ああ、ああ……。傍に、いてほしかったんだ。愛しい人に傍にいてもらえたら、わたしは大丈夫だと思えたんだ。どうしようもなく、ほしくてほしくて仕方なかったんだ。やはりなまえなら、分かってくれると思っていたよ……」


甘えるように、私の胸に顔をギュウギュウと押し付け、珍しく素直な言葉を零す吉影さん。
柔らかい金髪に指を滑らせると、安心したように目を細めて吐息をもらすのが愛しい。
まるで赤ちゃんみたいだ。
スカして格好つけて、他人を見下す、プライドの高いあなたの本質はこんなにも弱々しかった。
彼の頭を抱きながら、唯一死体の手だけに愛と安らぎを得て、心と体の慰めとしていたこれまでのことを考える。
吉良吉影という男の孤独な人生を、考える。

ねぇ、吉影さん。
だから私は、あなたをどうしても嫌いになれないんですよ。


「今は私をそうしてるんですよね。出来るだけ一緒にいて、なるべく家の中にとじこめて隠して、他人の接触を避けさせて……独り占めしようとしてる」
「そうだよ、そうだとも……。わたしは……だって、なまえが……誰かにとられたら困るだろう?そんなことになったら生きていけなくなってしまう。だから守らないといけないんだ……。誰にもとられないように、わたしが守ってあげないといけないんだ……なまえ……」
「あなたはとても自分勝手なひと」


私に縋り付く肩がビクリと揺れた。

世間の誰もが、罪深いこの男のことを許さないでしょう。
でも私は。


身勝手で横暴で、自己都合しか考えられない吉影さんが。

愛を知らず、挙句に女を殺して快楽を得るしかない、人としてどうしようもないほどに堕ちた身で生きてきた吉影さんだけれど。

そんな彼を、とても。


「でも私は、そんなあなたを心から大切に思います」


あなたの頬を撫でる手にぽたぽたと熱い雫が落ちてきて、私はあなたが泣いていることに気がついた。










*******










吉影さんは、自分が泣いていることに気がついていなかったようだ。
こうしている今もぼんやりとしがら、壊れてしまったように絶えず青い瞳から透明な雫をこぼし続けている。
さっきから一向に止まる気配がなくて、心配だ。大丈夫なのか―――いや、大丈夫ではないのだろう。
多分この人はとうの昔から、大丈夫じゃなかった。誰にも助けてもらえなかったから。
昔、素直に子どもらしく流せなかった涙を、今やっとこうして流しているのかもしれない。

部屋にあるモコモコのひざ掛けを二人の体にかけて、私は吉影さんの背中をゆっくりゆっくりとさすっている。
畳は固いが仕方ない、今日はこのままここで眠ってしまおう。


「…………」
「……いいんですよ。いいんです。泣いていいんです。私たちってなんだか、上手に生きるの下手ですねぇ。笑えちゃうくらいに。でも、ね、二人でいたらいつか、ちょっとだけ前に進めると思うんですよ。まぁ……今がマイナスだから、ゼロに向かって行けると言った方が正しいかもしれないけれど」
「……ゼロ、に」
「ふふ。今は無理でもきちんと努力すれば、きっと来世では健全に幸せな二人になれるかもしれませんねー……。なんて、夢見るくらいならきっと神様も許してくれますよ」
「……わたしは今世でも十分、なまえといられて幸せだが」


ぼたぼたと涙を流しながら、消え入りそうな声で呟いた吉影さんの額に、私は優しく口づけた。

願わくは、このひとの魂がいつかどこかで救われますように。覆しようのない歪みも、手遅れなその全てもどうか無に帰して。
私はいつもそんなことを考えています。

これからもずっとそう願っている人間が一人いるということを、吉影さん……どうかいつも忘れないで。




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