夢小説 ジョジョの奇妙な冒険 | ナノ




酔っ払いを甘やかそう!





「ただいまなまえ…。うっ…、はぁ、はぁ…」
「おかえりなさ……うわ!吉影さん大丈夫ですか!?顔色が悪いですよ…!」
「大丈夫じゃない。わたしはもうだめなんだ…」
「ええっ…。それは困りましたね…」


帰るなり、玄関で崩れ落ちるようにして私に抱きついた吉影さん。
ずっしりとした体重をなんとか体全体で受け止め、そっと様子をうかがいました。

そんなにも今日の飲み会は最悪だったのでしょうか。
明らかにヤバそうな様子に胸が不安で包まれます。
もともとやつれてそうな顔つきではありますが、今はまさにげっそりという言葉が似合うくらい具合が悪い様子。
目に覇気もありませんし、なんだかどんよりとしたオーラを纏っています。
ここまで弱気なのは本当に珍しいくらいです。

時期的にどうしても外せないらしく、出席せざるを得ない会ではあったらしいですが、こんなにボロボロで帰ってくるなんて…!
裏を返せば、ポジティブの権化みたいな吉影さんが、そこまでになるようなことがあったということでした。

そして、気持ち悪そうなのも気にかかります。
特にそこまで酒くさくはないんですけど、お酒の飲みすぎでしょうか。
吉影さんは決して自分から無茶な飲み方はしないひとなので、流れで強要されたということも考えられます。
いつもと違うメンバーだったから、たまたま上手くかわせなかったということも充分ありえる話です。
そうだとすれば、こんなに疲れ切って生気のない顔をしているのも納得。
さすがに可哀想だし、吐いたりしないか心配でたまりません。

少しでも気分が和らぐといいなと、ぎゅっぎゅっと抱きしめ返して、背中をポンポンします。


「お疲れ様です。よく頑張りましたね。とりあえず、ほら…玄関にいても仕方ないですから、行きましょうか。靴脱げますか?」
「脱げないよ…」
「はいはい。一回座ってくださいね」


愚図る吉影さんを座らせて、綺麗に磨かれた靴を片方ずつ脱がせました。
肩を貸して移動しようと思い、もう一度吉影さんにくっつくと、吉影さんがぽつりと言いました。


「手…」
「手?どうしたんですか?繋ぎますか?」


コクリと頷いた吉影さんの手に、指を優しく絡ませました。
無言できゅっと握り返され、これで良いのかとホッとし、立ち上がります。
ごつごつとした大きな手が包み込んでくれるこの感触は大好きなので、正直満更でもありません。
しょうがないひとだと思いながら、同時に可愛いなと思ってしまいました。不覚です。
一人できゅんとしている場合ではありませんし、こういう時は私がしっかりしなくちゃ。

まずは着替えをと思い、吉影さんの自室に行こうとしたのですが、絡みつくかのように異様にぴったりとくっつかれ、動きづらいことこの上ないです。
挙句、ふんふんいってるから何かと思えば私の髪のシャンプーの香りを嗅いでいました。
うなじに顔をうずめるようにして、随分と熱心に香りを堪能しています。
何してんですかと突っぱねたくなりますが、そこは堪えてやんわりと言いました。
疲れてるんだから、優しくしなくちゃ、ですよね。


「吉影さん、ええと、大変歩きにくいのですが…」
「……」
「……あの、吉影さん?」
「……」
「もう、なんでじっと見るんですか!?分かりましたよ、もうこれでいいですから行きましょうね。さすがに歩くのは自力でお願いしますよ。抱っことか言われても私潰れちゃいますから…」
「分かったよ……フゥゥ……はぁ……。いい匂いがする。なまえ…」
「こ、腰は擦り付けないでください…!!」
「んんっ……はぁ、はぁ…」


時折体を撫で回してくるちょっかいをたしなめがら、ゆっくり歩を進めます。
酔っ払いだから理性が薄いんでしょうか…、とも思いましたが、考えてみれば普段からこんな感じでした。
勘弁してほしいです。
玄関から部屋へ移動するのに、こんなに距離を長く感じたことはありません。
ふたりでもつれ合いながら歩く廊下はいつもの数倍長く感じました。
ひいひい言いながらも、なんとか部屋にたどり着きました。
私までやつれちゃいそうですよ、吉影さん!


「んっ…着きましたよ、お部屋。いい子ですから、一回離れて…。かっこいいスーツがシワになっちゃいますから、着替えましょうね。」
「いや、無理だ。わたしは何も頑張れないよ」
「そうなんですか?うーん…」


このままここで寝られても困るし、どうにかしてあげなきゃいけません。
大人しい…というか依然としてぐったりした状態の吉影さんから、ネクタイとスーツの上着を脱がせます。
されるがままなので割とすんなり出来ました。
よし、問題なしです。

それにしても先ほどからあまりにも意気消沈している吉影さんですが、本当に大丈夫なのでしょうか…?
魂抜けてるんじゃ?と思って吉影さんの前でパタパタと手を振って見せると、目がしっかり左右に追っていました。ガン見です。こわいなあ。
こんな時でも手に執着するとは、業が深いというか…。

ああ、そうだ。
しかし、そういうことならば、手を使えば吉影さんを元気にしてあげられるかもしれません。
私の元へ、けっこう冴えたひらめきが舞い降りました。
多分上手くいくと思うんですが、喜んでくれるといいなあ。

虚ろな吉影さんの手を引き、ゆっくりと膝の上に寝かせます。


「なまえ…?」
「吉影さん。お風呂に入ってくださいと言うつもりでしたけど、そんな気力なさそうですからね。その前に、少し休んでいきましょうか…」


綺麗な目をぱちぱちさせて不思議そうに私を見上げる吉影さんは、とても年上には見えません。
守ってあげなきゃ、という庇護欲すら駆り立てられる弱々しい姿でさえありました。

状況がよく分かっていないこの人の、厚くてセクシーな唇を指先ですーっとなぞります。
誘惑するように、抗いようのない本能を掻き立てます。
男らしい喉仏がごくりと上下した次の瞬間、まるでえさにくらいつくかのような勢いで、ぱくっと食べられました。
やっぱり、かかりましたね。


「ふふっ、吉影さんこれ好きですよね?今日は特別にいっぱいしてもいいんですよ〜。サービスですからね!」
「ン、ンン〜〜ッ……。ちゅ、ハァッ、ぁ、あ…ふ、んん…ハァッ」


ちゅぱちゅぱと必死に甘えるようにしゃぶる吉影さん。
一旦スイッチが入ってしまえば、あとは夢中で貪るだけです。
物凄くうっとりした表情で目を瞑り、二本の指の感触を堪能しています。
そして吉影さんの手は縋るように私の服をにぎにぎと掴んでいました。
赤ちゃんみたいで変ですが、なんだかやっぱり可愛く思えてしまえて、ニコニコしながら見守ります。
もう吉影さんがすること全部手放しで可愛い可愛いと愛でちゃいたくなる気分でした。
末期みたいな症状で困りますね。
こんなところ、私も吉影さんも、恥ずかしくて人にはとても見せられません。


「そんなに舐められたら指、ふやけちゃいそう…それに…あっ、…くすぐったいですよ。もう、熱心なんですね」
「んん…ちゅ、ちゅうっ……はぁ」
「お顔がだらしないですよ、吉影さん。もっとだらしなくしてあげますね」
「んむ…?」
「どうされると思いますか…?分かりませんよね。だったら体験してみるのが一番だと思いますよ。例えばこんな風に…」
「ん!ぐ、ぐうっ…」


頬の内側の粘膜をこすりあげると、明らかに快感を含んだくぐもった声が聞こえました。
口の中なんて普通触らないですし、さらに言うと性感帯の一つでもあるのでとても敏感な場所でした。
そんなところをを大好きな指で弄り回されて、果たして吉影さんは耐えられるでしょうか。
分厚い舌の裏をくすぐると、のたうつように跳ねて反応しました。
ここは太い血管があるから、誰でもくすぐったくなるでしょう。
人間の弱点の場所を私に触らせるなんて気が緩んでいる証拠みたいです。
そのまま歯のつけ根の裏側をなぞり、こそばゆい感覚でいっぱいにします。
静かな部屋に響くぐちゃぐちゃという卑猥な音に耳も犯されて、こちらの気分までほのかに高揚しました。
直接的な場所に触れているわけでもないのに、とってもいけない、恥ずかしいことをしているみたいな雰囲気です。

ついでに指で喉奥を突くようにすると、さすがの吉影さんもぐっとくぐもった声をあげてえづきましたが、吐く素振りはありませんでした。
少しでも気持ち悪そうならお手洗いに連行して吐かせてあげようと思ったのですが…。
お酒のせいでこんなことになっているならいっそそうした方が楽なんですけど、そこまでではないみたいです。
そのまま気まぐれに喉奥に触れながら、吉影さんの様子を観察しました。
眉根を寄せていますが、抵抗してはいません。


「苦しいですか?違いますよね、気持ちよくてたまらないって顔ですよ…?」
「んう、はぁあっ、き、きもちい、なまえっ」
「そうそう、上手上手。きもちいきもちいですね〜」


空いた手で丁寧に頬を撫でさすると、安心したみたいで眉間のしわが薄くなりました。
きちんとセットされた金髪に、撫でるように指を通します。
吉影さんはふわふわのくせ毛なので、ある程度髪をまとめないと子どもっぽくなってしまうのです。
朝とかお風呂上がりとかはそのままの髪型をしているわけですが、やっぱり若く見えます。

そんなことを考えながら、両手を使って存分に愛でていました。


「よーしよし、いい子、いい子」
「ん゛、ふっ…むぐ…きもひいい、きもちいい…」
「そんなにいいんですか…?」


いつまでも言われた通りに「気持ちいい」を繰り返す吉影さんに、やばい、止まらなくなりそうだと思いました。
今も、絶えず吉影さんの舌が蠢き私の指にぬるぬるとまとわりついて刺激を与えてきています。
自分までもドキドキしてきてしまい、手遅れになる前に慌ててブレーキをかけます。
すっかり吉影さんの唾液まみれになった指をそっと引き抜きました。
意外にもすんなりと放してくれたので、大体満足できたのでしょう。


「ここまでにしておきましょうか。いい加減、お風呂に入らないとですからね」
「…そうだね。ならなまえも一緒に入ろうか」
「残念ですけど、私もう入っちゃったんですよ」


私だって今日はひとりで夕飯を食べて寂しい思いをしたんですから、吉影さんもひとりでお風呂に入ってくださいねと言って何とか納得してもらいました。

よろよろとした危ない足取りで、しぶしぶ向かう吉影さん。
ふすまが閉められ、吉影さんの部屋に一人残されました。
…まさか溺れたりはしないと思いますが、ちょっと怖いですね。
部屋にあるタンスから、ふかふかのタオルを探します。
バスタオルを持っていくついでに、扉越しに待っていてあげましょうか。
それなら寂しくないでしょうからね。

それにしても吉影さん、早く回復するといいなあ。
辛そうな顔を見ていると、私まで辛くなってしまうのでした。










*******


( 吉良視点 )











ふすまを閉めて、軽やかな、それでいてしっかりとした足取りで風呂場へ向かう。
間違ってもフラつきなどはしない。

爽快感、幸福感、満足感。
そんなものがわたしの胸をたっぷりと満たしていた。

最高の気分だった。
なまえにたくさん甘やかしてもらった。
鼻歌でも歌いたい気分だったが、聞こえたらさすがに本当に具合が悪いのか疑われそうなのでやめた。

実のところわたしはそこまで酔ってはいない。
当たり前だ。
このわたしが他の奴らの前で前後不覚に陥るような醜態を晒すわけがなかった。
面倒だったので程々に飲んで、あとは適当に誤魔化した。
つまらない話に相槌を打ちながら、なまえは一人で寂しくないだろうか、何をしているだろうかとばかり考えていた。
そこはいつも通りだった。

ただ、いつもより疲れる飲み会だったのは本当だ。
精神的に疲弊したので、今にも倒れそうな弱々しい振る舞いでなまえに世話を焼いてもらい、リフレッシュした。
時間を無為に過ごすような、何の楽しみもない集まりではあったが、結果としてなまえと普段できない趣向のいちゃつき方ができたので、まあいい。
こういうのもお楽しみのひとつだ。
飲み会など面倒なだけだが、あんなものでもたまには役に立つじゃあないか。

脱衣所で服を脱ぎながら、先ほどのとろけるほど濃厚な触れ合いを頭の中で反芻すると、自然と口角が上がった。
あれは人生の中で間違いなく上位に入る良い思い出になる。
なまえが積極的にわたしに触れる優しい手つき、熱い眼差し。
忘れないようよく目に焼き付けるようにしていたから、全て詳細に思い起こせる。
わたしに触っている最中、あの子はとんでもなくいやらしい顔をしていたが、自分で分かってるのだろうか?
ああ、指摘してやればよかったな。
きっと驚いてしどろもどろになりながら、つたなく反論をするんだろう。
「吉影さんのせい」「意地悪言わないでください」とか言って、頬を真っ赤に染めるに違いない、手に取るように想像できた。
喉でくっと笑って、服を洗濯機に入れた。
洗面台の大きな鏡に写った自分の顔は思ったよりもニヤついていた。


「ふー……。」


高揚感を冷ますように頭からシャワーを浴びたが、まだまだしばらくあの感動は薄れそうにない。
なまえが自分からあのように触れてくるなんて。
これから毎日思い出そう。
なまえとはけっこうな頻度で体を交わらせているからあまり自分でする機会はないが、おかずにもちょうどいいだろう。
今までどうしても一人で処理しなければならない時は、一時的になまえの下着を拝借したり(勿論洗って返す)、淫乱になったなまえがわたしに襲いかかって乱れまくる妄想をしていた。
今日のでレパートリーが増えたな。
いいことだ。

幸せな記憶を脳内再生しているうちに、勝手に勃起したものを横目でちらと確認して、シャワーを止めた。
自分でする必要はない。
何故なら、これからもっと素敵なことが起こるからだ。
だからどうしてもニヤつきが抑えられない。

きしきしと床が軋む音が聞こえる。
その音はどんどん近づいてきて、やがて脱衣所のドアがノックされた。

来ると確信していた。

なまえが、フラついていたわたしを気にかけないわけがない。
がちゃりとドアが開き、浴室の薄いガラス越しになまえの姿がぼんやりと見えた。
曇りガラスで良かった。
こんなにニヤけているのを見られたら、せっかくついた嘘ががバレるからな。


「吉影さん、タオル置きますから入りますよ。あと私ここに居るんで、何かあったら言ってくださいね。お水も用意したので、上がったら飲みましょう。いくらかスッキリしますよ」
「なまえ…。何から何までありがとう。だけど…。うう…まだ酒が残ってるみたいでちょっとフラフラして不安なんだ。さっき、そこで足を滑らせそうになった」
「え!や、やっぱり私も中までついてましょうか?転んだりしたら一大事ですから」
「本当かい?悪いね…。だが、とっても心強いよ。なまえが優しい子で本当に良かったなあ〜…」
「大げさですねえ、吉影さんは。…開けますよ」
「ああ、おいで」


ぼやけたガラス越し、目と鼻の先に、ドアの取っ手に手をかけたなまえが見えた。
わたしはドアの前で仁王立ちをしている。
タオルなどは何も巻いていないから、上を向いたものが真っ先になまえの視界に映るだろう。
疲れマラだとでも言って甘えて、弱っている風を押し通して、さっきみたいに死ぬほど可愛がってもらおうじゃないか。
先ほどの触れ合いは最高だったが、ここでわたしにさらなる幸せが訪れるのだ。

ガラスのドアが横にスライドするのを悠然と眺める。
現れた心配そうな顔つきのなまえが、気遣わしげに口を開こうとして…わたしの股間を見て、そのまま止まった。
思わず笑いそうになるがギリギリで堪えて、わたしは再び「飲み過ぎでフラフラのしょうがない男」を演じるのだ。


「待ってたよ、なまえ。あぁ…とてもとても、疲れているんだ…。わたしに、優しくしておくれ」




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