夢小説 弱虫ペダル | ナノ




ほのぼの同居生活



夕食後のまったりとした時間。
私たちはリビングでTVをぼーっと眺めながら時折話したりして過ごしていた。
ちなみに大きいみどくんの方はお先に入浴中で、今私の隣には小さいみどくん…翔くんがちょこんと座っている。


「……あの」
「ん、どうしたの?」
「こ…ここ…」


何やら翔くんがもじもじしながら私の太腿を軽くトントンとつついてくる。


「ここ、座っても、ええ?」
「へっ」


どうしたどうした。珍しいな。
翔くんの方からこんな甘えるような言葉が出てきたことに驚き、数秒かたまってしまう。
答えを出さない私に翔くんは焦ったように続けた。


「あ、や、あの、…ちゃうわ。今の、嘘…嘘やから」
「あっ…ごめんね翔くん。嫌だからかたまってた訳じゃあないんだよ!!嬉しいなって!ほらおいでおいで〜!!!」


珍しいデレにテンションの上がった私は半ば抱きしめるようにして脇の下から腕を通してひょいと抱き上げ、翔くんは膝の上へ着地。いや〜可愛いねえ。
どさくさで抱きしめた時に背中に押し付ける形になってしまった胸に一瞬体がこわばったとことか本当に可愛い。もうデレデレになりそう。
翔くんは子どもなんだからそんなの気にしなくていいのに。

白い膝小僧がお行儀よくぴたりと揃えられている。
膝の上の翔くんはなんだかいつもの倍ちぢこまって座っていた。


「いきなり珍しいね、お膝抱っこなんていつでも大歓迎だけどねえ」
「…みょうじさんが怖がると思てくっついてあげてるんやよ」
「怖がる?何を」


私の問いかけに翔くんはすっと前を指差した。

TVに映っていたのは…ああ、なるほど。ありがちな心霊番組。
ごめんね、翔くんのこと見てたからTVの内容全然気にしてなかったよ。
大画面に鮮明な心霊写真が浮かぶたびちょっとビクってしてるとこを見るに、自分が怖かったから私にくっついてきたっていうわけだろう。
ちゃんと子どもらしくて、それがなんだか可愛いなと感じる。


「そだね、一緒に居てくれるととっても心強いよ!」
「そ。…いつでも居たるで」
「ありがとうねえ」


強がるのが可愛くて頬が緩んだままで思わずその華奢な背中をもう一度抱きしめた、その時だった。











「……何してはるの」


声のした方を見ると、そこにはさも面白くないですというような顔をしたみどくんがこの部屋と廊下を繋ぐドアのところに突っ立っていた。

髪が濡れているせいで普段はぴょんぴょんと元気よく跳ねている襟足が今は心持ち下を向いている。
なんだか適当に選びましたという感じの黒のスウェットは肩にかけられたタオルと彼自身の色白さを一層際立たせ、
その色っぽさに一瞬くらりとしてしまいそうな感覚に襲われる。やっぱり黒似合うなあ。
思わず風呂上がりの若干頬がさくら色に染められているみどくんに見とれていたら翔くんが私の膝から素早く飛びおり口を開いた。


「ちゃうわ!これは…とにかくちゃう!そや、あの…アレや。みょうじさんがTVこわい言うてたから傍にいただけや。それだけやし。」


みどくんは今も流れっぱなしの心霊番組にチラリと視線を向けた後、さっきの状況の理由が分かったらしく意地の悪い質問を投げつけた。


「へぇ〜?それはえらい頼もしいなァ?そやね、そんなに頼もしいなら今夜一人でもトイレいけるよなァ?」
「そ、れは…」
「何やハッキリ言わんと分からんよ?」
「ぅぅ…!」


口だけ楽しそうにニヤリとつり上げてみどくんは翔くんに追い打ちをかけていく。
何してるんだあんたは。


「はいはいはいみどくん自分のこといじめないの!終了!翔くんお風呂先入ろっか。廊下までついてくから、ね?」
「みょうじさん…!」


威圧してくる視線から逃れるように私の服のすそをパッと掴んで顔を伏せてしまった翔くんの小さな手を上から握って、廊下に出た。
みどくんの呟いたキモ、といういつもの口癖が閉めたドアの向こうから小さく聞こえた。











「服は・・・自分で脱げるよねぇ、うん」
「そんなん当たり前やろ」
「偉いね翔くんは、よしよし。脱いだら先に入っててね、着替え用意したら私もすぐ入るから!」
「え」
「ファ!?」


翔くんとドア一枚隔てた向こうからのみどくんの大きな声がそれは綺麗に重なった。


「ちょお、ま、待っ…何しとんのやなまえちゃんは!?馬鹿か!!出ぇ!!」
「えっ何みどくんなんでそこに居るの」
「歯ブラシ忘れたから取りに来たらこれや!何しとるん!!」

「あ、勘違いしないでよ。私が強引に迫ったわけじゃないからね?さっき廊下で翔くんが一人じゃこわいわ〜って言ってて可哀想だったから、今日だけ」
「い、一緒に入れとまでは言うてへんわ!ただ、入ってる間脱衣所にいてほしかっただけで!ていうか別にそこまで怖ないし!」


次いで焦ったように隣の翔くんも声高に主張してくる。
え、そうなの。効率的だし丁度いいとも思ってたんだけどなあ。ちょっと残念。


「ほんまなに考えてはるんそれボクやで!痴女か!ふざけてないで早う出てき言うとるんや!!」
「べつに翔くんは子どもだもん。ね〜」


手ごろな位置にある頭を撫でながらそう言うと目をそらされた。あれ。


「そういう問題やないわ!それにその年子どもちゃうわ馬鹿なん?馬鹿やね?なぁ馬鹿やろ」
「分かった分かった外で待ってるから……みどくんもそこまで怒らないでよ」


いつになく強い口調で騒ぐみどくんに私が折れた。ハァ、と大袈裟な溜息が聞こえる。


「これだから危機感ない阿呆は嫌やわァ〜。…風呂上がりにもしパンツでうろついたりしたらしばくで」
「流石にそんなことしないよ!」


みどくんの前でそんなことできるか。
私たちの変なやり取りを途中から黙って聞いていた翔くんを残して一旦脱衣所を出る。


「じゃあごめんね、ドアの外にいるからゆっくりあったまっておいでね」
「……ん」




廊下ではすんごいジト目で色々言いたげにしているみどくんが出迎えてくれました。













(なまえちゃんには羞恥心いうのないんか…)
(そんなに変だった? あー…私実家に年離れた弟いるからそれでかもしんない)
(ボク弟やないんやよ他人やで)
(翔くん小さいし可愛いし似てるからつい。それにみどくんは他人じゃないでしょ友達でしょ!)
(痴女と友達になった覚えないわ)




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