夢小説 弱虫ペダル | ナノ




にくと言っても色々ありまして



放課後。部室の中から声が漏れているのに気付いてドアノブに伸ばした手が一瞬だけ止まった。


「っんく、……ぁ!痛いぃ……!そこ痛いよ小鞠ちゃん〜…ッ」
「はいはい、ちょっとの間ですから我慢して下さいね」
「とか言ってずっと痛いとこばっかり、ぃ…!やってる、で、しょ……ッ!?」
「それもひとえに先輩の為です」
「ひっ…鬼ぃ…!わああごめんなさいごめんなさい指ぐりぐり嫌ぁぁぁぁ無理痛い痛いよおッ!!!???」


マッサージである。別に変な考えなどよぎってはいない。
というか妙な声出していないで仕事をして欲しい。
何やら変な雰囲気を纏った押し殺したような声がただのわめき声に変わったところで躊躇いなくドアを開け、そこから顔だけをのぞかせる。


「そんなマネージャーばっか揉んどらんでこっちのマッサージ頼むわ、小鞠ィ」
「あっ御堂筋さんいいんですかいいんですね?どうぞこちらに!」
「うぅっ…痛かったぁ…」


小鞠はボクの筋肉を随分と気に入っているようで頼むやいなやなまえちゃんを放り出してすっ飛んで来た。
ベンチのなまえちゃんはうつぶせで打ち上げられた魚のようにぐったりとしている。無様なその様子に命拾いできてよかったなァ、なまえちゃん?と心の中で吐き捨てた。


「それじゃあ失礼しますね。…あ、そうだ」
「何や」


小鞠の顔がぐっと近づき、手はしっかり動かしたまま耳元で楽しそうな声色で囁いた。


「なまえ先輩、肩が凝ってるって言ってたからちょっとほぐしてあげてたんです。ふふ、どうして肩凝ってたんでしょうね」
「知らん」


ばさりと言い捨てる。個人的なことなんて別に興味もない。
まあそれでマネージャー業に支障が出る場合はあかんけど。
特に聞きたいわけでもない情報をこの男は話し続けていく。


「肉…ですね」
「ハァ?何言うとるん。なまえちゃんにまともな筋肉ないでぇ?」
「ああ間違えました。なまえ先輩の肉が…いや、胸が大きいからやっぱり肩凝るんでしょうね。ね、御堂筋さん」
「知らんわ」


ほんま何言うとるんコイツ、と思いっきり訝しげな表情で睨んでやった。
そんな事をしている間にボクらの会話が聞こえてないなまえちゃんはやっとのろのろと起き上がる。


「ふ、うぅ…それじゃあ、ドリンク足りなくなったらまずいから私水道行ってくるね。小鞠ちゃん…あ、ありがと?」
「なんで疑問形なんですか。まあ、また揉んでほしくなったらいつでもどこでも揉んで差し上げますから遠慮しないでくださいね?」


あはは、と苦笑いを浮かべたまま言葉を濁して逃げていくなまえちゃんの胸元は薄いTシャツを確かにハッキリと押し上げていて、
まあ、確かに重そうだと素直に思った。
ちょっと走るたびにぽよんぽよんと揺れているのも知っている。
あれをやられると部員の目が一斉にそっちに向いてしまって集中力が切れるわ練習にならないわで困っていた。
別に気にしてるわけではないがボクもボクで視界に入ると何となく見てしまっているのも事実。それに関しては目立っているのが悪い。


「うん、やはりなまえ先輩はいいにくしてますよね。美しいです」
「…揉んだらあかんよ?」
「そこは流石にお許しが出なければしませんよ。多分」
「多分ってなんややめろ。」




[ 19/19 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -