夢小説 弱虫ペダル | ナノ




ハッピー・スイート・ニューイヤー!




秒針ががぴたりと12を指し、日付と年が変わった。さようなら2017年、こんにちは2018年の瞬間である。
テレビでは毎年お決まりの除夜の鐘と初詣に人が押しかける神社の光景が流されている。
凄いなあ、寒いし眠いだろうに……と私はこたつの中でまどろみながらちょっと感心した。
もう寝ようかな。なんとなく年越しは起きてないともったいないかも、と思ったのでこうして睡魔と闘いながら持ち堪えられたけれどやっぱり眠いし、目的は達成したからまあいいか。
そのままコタツで意識を手放す選択をした瞬間、手元に置いておいたケータイが鳴って見事に私の安眠は妨害された。

一体こんな時間に誰だ……。
表示もろくに確認しないまま通話のボタンを押した。



*******



[新開隼人&???]


「よう、あけましておめでとう。今大丈夫か?」
「し、新開くん?どうしたの?……あっごめん、その前に……あけましておめでとうございます」


電話越しに聞こえる予想外の声に落ちかけていたまぶたが開く。本当にどうしたというんだろう。……ただ新年の挨拶の為だけにこうしてわざわざ電話をしてくれたのだとすると、むずむずと恥ずかしくもあるが、単純に嬉しい。
いやぁ……、と珍しく歯切れの悪い返事を不思議に思いながらも静かに次の言葉を待った。


「今年一番におめさんの声聞いたらなんかいいことある気がしてな」


普段通りのキザなセリフには変わりないのだが、今の声はなんだか少し恥ずかしそうで新年早々大変驚かされた。いつもみたいにサラッと言ってよ、思わずドキッとしちゃったでしょ、とは言えず。


「ふふふ〜、残念ながら私にご利益はありませんよー」
「そうでもないぜ。実際、この間の部内レースでなまえの声援が聞こえた時なんかめちゃくちゃ元気出てきた」
「あー……、あれ別に新開くん個人を応援した訳じゃないんだけどね。というかマネージャーの立場上誰か一人を贔屓する訳にはいかないから。でも、そっかぁ、そう言ってもらえると嬉しいかも」
「はは、分かってたけど、なんかな。なまえに見られてるって思うとカッコ悪いとこ見せられねぇ、って気合入んだ」
「ん……そう?」
「ああ」


わー、わー……!なんか電話越しって恥ずかしい。相手の姿が見えない分、どこかぎこちなくなっちゃうし……。
恥ずかしい事言われてもどつけないから、なんか調子狂うな……。うううっ。
電話口でもごもごしてたら、不意に新開くんとは違う声が聞こえてきた。


「なまえちゃん!なまえちゃんでしょ!?」
「わ、……その声悠人くん?うわぁびっくりした〜!久しぶりだよねえ!!元気?」

悠人くんとは趣味が合う。好きな少女漫画が一緒で、意気投合した仲だ。しばらくぶりの元気そうな様子に嬉しくなって、つい長話をしてしまう。

「ごめん。電話横取りされた」
「いーのいーの!私も久しぶりに悠人くんの声聞けて嬉しかったし!」
「おめさんいつの間に悠人と仲良くなってたんだ?」
「ふふ、秘密!」
「妬けるなあ」
「……」
「……」


またコメントに困るようなセリフを!
なんだかまたもや私は口ごもってしまった。
って、あれ?私が意識しすぎてるだけなのかな。新開くん、息をするようにキザっぽいセリフ言うもんね……。
本人にとっては何てことない社交辞令みたいなものなのかもしれない。だとしたらこれぐらいで緊張してしまうような私は、新開くんからすればちょっと滑稽に見えてもおかしくはない
うう、恥ずかしいよ……。


「……なあ、これからもオレの事応援して欲しいんだけど、いい?」
「もー何聞いてるの、当たり前でしょ!皆が引退するまで私もマネージャー頑張るんだから!!」
「ありがとうな。……これからもオレが走るとこ、ずっと見てて」
「いいよ、約束ね」
「ああ。はー、……いい新年になりそうだ」



********



[荒北靖友]


「初詣行くぞ」
「開口一番それ〜……。まあいいけど。明けましておめでとう、荒北」
「ン……あ〜……まあ……オメデト。で、どうなんだよ」
「初詣ね〜。……ん〜、外寒そうだね」
「いーだろドーセこたつん中でゴロゴロしてんだろ。予定ないなら来いよ。異論は認めねーからァ!」


強引すぎでしょ。とか思いつつ結構嬉しいんですけどね。新年から元気だなあ。


「まあ、そうだねー。……行く!でもなんで私を誘ってくれたの?」
「どうでもいーだろォ」


大分気になるところだが、答える気はなさそうだったのでこれ以上の追及はやめた。
それよりもっと気になる事があるからだ。


「あ!ねえアキチャンの写真送ってよー!ずっと見たかったんだぁ、ね、いるんでしょ?」
「オレ今年は寮なのォ。だから無理」
「……えっ、荒北帰らなかったの?」
「仕方ねーだろ」
「何かあった?」
「何もねーっつの。……てかワカンネーかなァ」
「え、何」
「実家戻っちゃったらなまえチャンと初詣行けねェだろーがヨ……」
「なるほど」
「……分かったァ?」
「わ、分かりました」


理解はしたけど何故。荒北はそういうワイワイした行事とかあまり好まない印象があったから、びっくりした。
でも、なんか嬉しいかも。わざわざ私に声かけてくれるなんて、荒北も可愛いところがあるなあ!
ちょっぴり、朝が来るのが楽しみになった。
新年早々あの荒北がデレるなんて、今年はいい事ありそう!


-fin-


2015.01.01


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