夢小説 弱虫ペダル | ナノ




カウンター・猫パンチ





「おはよッ……な、何それー…」
「知らん」
「知らんて…いつから?」
「今朝」
「他に異変とか具合悪いところは」
「ない」
「そっか…」


朝起きて顔を洗ってトイレに行って、リビングに来た所まではいつも通りだったが、そこで待ち構えていた御堂筋くんは普段と少し違っていた。
会話の最中もぴこぴこぱたぱたと気ままにゆらめく頭頂部とお尻の猫パーツに目を奪われる。
夢じゃない。本当に、何だろうこれは。
せわしなくブンブンと振られる尻尾といつにも増して少ない口数からしてきっと機嫌が悪いのだろうから本人には言わないけど相当可愛い。


「直に生えてるの、それ」
「そうやけど」
「そっか…。ま、今日が休みで良かったよ。とりあえず落ち着いて様子見てよっか、ノーヘルで自転車乗るわけにいかないし。困った事あったら何でも言っていいからね」
「…ん」


表情こそ変わらないものの尻尾は正直なようで、今度は上機嫌そうにゆるく揺れ始めた。
分かりにくすぎるのでもう少し感情を顔や態度にも出して欲しいかなと常々思わされてはいるが、もう慣れっこでもあり、そこが寂しい。
さっきのなんて一見すると冷たいように聞こえる「…ん」だったが心配した事に対しちゃんと喜んではいてくれたようだった。
失礼ながらいっそこのままの方が分かりやすくていいんじゃないかとすら思えてくる。可愛いし。


「…それ、そのうち戻るんだよね」
「まぁ、多分」
「て、いうか、さッ!」


我慢の限界というやつだ。
さっきから視界の隅でパタパタと床を叩いているふわふわとした魅惑の真っ黒尻尾に堪らず手が伸びる。


「あぁっ…!!や、柔らかい…!」
「!?」
「しかも生温かい!生きてる!すごいよっ」
「なっ、ぁ、……!」
「うわー毛並ツヤツヤだよぉ!最高!!」
「うッ…、…」
「…御堂筋くん?」


夢中で尻尾を堪能していた私に突然御堂筋くんが倒れこんできて驚いて顔を覗きこむと、いつもは雪のように白い頬をわずかに紅潮させ、恨みがましく睨んでくるジト目と目が合った。
超至近距離だ。
相変わらず綺麗な肌をしていてじっと見入ってしまう。
しばらくそうしていただろうか。


「…キミなぁ、何やの…?」
「あっごめんね」
「わけも分かっとらん癖して謝らんでくれるゥ?何してくれとんのかなァキミは、ほんまに」
「それは……その。御堂筋くんが大変な事になってるのにはしゃいでごめんなさい…ど、どうしても一回触りたくて」
「それだけやないわ阿呆、…ぅ」
「…力、入らないの?」
「見て分かるやろ…、…!!」


体勢を立て直そうとしたものの上手く力の入らない体ではあえなく失敗し、再びこちらに倒れこんできた。今度は胸に。
…大きな黒い猫ちゃん、という感じである、…かわいい。


「……」
「見とらんで助けるなりあるんやないの」
「うん、そうなんだけどたまにはっていうか…もう少しこのままでいいかなーと」
「また随分と楽観的やね。これで嫌な思いするんなまえちゃんやよ」
「え?私嬉しいよ?」
「……。」


やはり何か言いたそうな顔をしているのが気になるが、だって勿体無さすぎる。
体勢だけ見れば、いつも決してツンツンとした態度を崩さない御堂筋くんがまるで私に抱きついて甘えてくれているかのようだ。
もう少し、もう少しだけ。
尻尾だけは素直な可愛い御堂筋くんと遊んでみたかった。


「あとで鰻でもお豆腐でも好きなご飯作ってあげるから今だけ、堪忍ね」
「ハァ?ええからはよ…、ッ!」


床に力なく倒れている黒尻尾の根元を捕まえ、愛でるような優しい手つきで毛並に沿ってくすぐると予想通りというか大変美味しい反応が返ってきて口角があがる。
もしかしなくてもビンゴだろう。
いつもより大きく見開いた目が少し潤んでばっちり感じているようにしか見えない。
その上抵抗も出来ていない彼を見ていつも逆の立場だった私の加虐心に火がついた。
少々悪い気もするが仕方ない。
今楽しまなくていつ楽しむというのだろう。
完全にスイッチの入った私の手の中でビクつくそれを試しにぐにぐにと弄んでみる。


「調子に、乗って…!」
「ごめんね?だけど、いつも散々いじめてくれたお返しだと思ってよね」
「ぁ…、あっ」


それに動物は大好きなのだ。
純粋に思ったままの行動をしていて打算や計算がないし何より見た目が愛らしい。
ノドをそっと撫でると気持ち良さそうに目を細めて静かになった。
頬は未だ赤いけど。
とろーんと惚けた表情を見せるなんて珍しい。
動物のように快楽に対してあまり自制が効かなくなっているのだろうか。


「ふぅッ……、…ぅぁ」
「ねえ、ゴロゴロ言ってるね。これ気持ちいい?」
「あっ…!?い、言うてへん、そんなん、…!!放せっ…いい加減…!」


ああ、可愛い可愛い!!段々と無抵抗になっていく御堂筋くんを横目に、夢中になって触りまくった。
今のうちに堪能しておかなければ、そう考えて思うがままに人様の体を弄り回していたのだが……。
首筋を温かい舌がベロリと這った。不意打ちの感覚に思わず尻尾を握っていた手に力が入ってしまう。


「ぅあっ…!?ひ、何ッ」
「ン…!」
「ちょっと…何で形勢逆転みたいになってるのッ、どいてよ重い潰れるっ…!」
「ふーッ…」
「おーい…ちょっと、みど…っ!!」


歯を立てられた。
何だ。食われてしまうのだろうか。


「ん…、ふぅッ…バカ…バカや。元々知っとったけどボクの想像を上回るバカさ加減で呆れる、わ」
「なっ…」
「全部なまえちゃんが悪いんやよ。後で泣いたってほんまに知らんからな」
「は、何が、ていうか噛むの、やめてよ、痛っ…いってば!ごめんて!」
「だからやめろ言うといたのにほんまにバカや、キミの為にわざわざボクが忠告したのに、…んッ、何も聞かへんからな、うん、完全にキミが悪いわ……」
「なんか瞳孔開いてて怖いよ…痛、痛いって、…あっ!?」


着ていたTシャツを乱暴な手つきで首まで捲り上げられて一瞬で肌が露わになる。さすがに何をされるのかと思い本気で抵抗を試みるが、流石運動部、鍛えているだけあって本気を出せばビクともしない腕にじわじわと怖くなってくる。もがいてももがいても本当に振りほどけない。こんなに白くて細い腕なのに。見とれている場合じゃあないが。


「んな、なに、これ…」
「何って、セックス」
「は!?」
「なんなんその反応、散々煽っといて自分だけ無事で済まされるとか思っとるの?虫がよすぎるで?何されるかわかっとるんやろうな」
「そ、それは普段御堂筋くんが私を虐めて面白がってるから今日くらいはって…!私も悪かったけど…ほ、本当にいきなり変な事言うの…やっ…やめて…よね」
「…今更びくびくしたって、もう遅いわ」
「ひっ…!!」


むき出しの肌の上を御堂筋くんの白い手のひらが撫でるように滑ってゆく感覚にぞわぞわした痺れが駆け巡り思わず上擦った声が出て一気におかしな雰囲気になってきたのを実感した。御堂筋くんの目がギラついている。
ここまで来るともう涙目になるしかなかった。


「そういうのほんとにやめて…恥ずかしいから、…!」
「ふーん、ボクに体見られて恥ずかしいんか、なまえちゃんは」
「当たり前でしょ、謝るからほらご飯食べよう、ねっ?」
「そやね、ほな遠慮無く、いただきます」
「!?やだやだちょっとやめッ…むぅ!」
「大人しくしとき」
「ううう〜っ……!!」




つい遊んでいたら反撃を食らうの巻。


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