夢小説 弱虫ペダル | ナノ




パンツを拾った荒北くん





うちの合宿はなかなかハードだ。朝から晩までみっちりしごかれる。
そんな地獄みたいな生活の癒しといえばウマい飯と無駄にだだっ広い風呂である。
いつも人より遅くまで一人で練習しているから、風呂も他の部員とは時間がズレて必然的に一人になれた。
馬鹿みたいに広い風呂を貸切気分で好きに出来るのはなんとなく気分が良い。
今日もそうしてさっぱりした気分で部屋へ戻ろうと廊下を歩く途中、曲がり角で向こうからとことことやってきたなまえと鉢合わせ軽くぶつかってしまった事が全ての発端だったんだろう。
こっちはダメージゼロだがなまえは違う。ふわふわ軽くて小さななまえのよろめいた肩を咄嗟に掴んだ。


「わ、……っと。荒北かぁ」
「あ……ワリ、大丈夫ゥ?」
「平気平気」


ぼーっと歩いていた事を詫びながら、これから風呂だというなまえと、事務的な話を少ししてからそれじゃ、と声をかけた。
もう眠い。さっきから立ってるのがやっとな状態でかろうじて会話が成立していた。


「じゃあおやすみね〜」
「おー」


遠ざかる足音に耳を傾けながらしばらくその場に立ち尽くしていた事にふと気付いた。
さっさと寝よう、とまたのろのろと歩き出そうとして前に目をやると、ふと視界に今までなかった物が映る。


「……ア?」


多分さっき話した時に落としたものだろう。なまえの去ったあとにぽつん、と小さな何かがあった。


(ったく……しゃーねーのォ。届けてやるか)


そう思い水色の落とし物にぺたぺたとスリッパを鳴らしながら近付く。
ひょい、と手にした薄っぺらい一枚の布。つい癖で鼻先に押し当ててみたが確かにこれはなまえのいい匂いがするからアイツの物だ、と未だ思考能力の低いぼやけた頭でそう結論づけた。
これは何だろう。改めてそれに目をやりまじまじと観察してみる……が、違和感。

オレはいつから目がおかしくなったのか。

数度ぱちぱちと瞬きを繰り返しても目を擦ってみても自分の横っ面を引っ叩いても目の前の光景は変わる事がなった。
ハンカチっぽく見えたので何の気なしに拾い上げたが、見間違いではない。……コレは。


(アイツのッ……、パンツじゃねェか……!!!)


一気に目が覚めた。ヤバい、という三文字が頭の中で点滅する。
咄嗟に周りを注意深く見回したが幸いに誰の気配もない。危なかった、こんな所を見られていたら絶対に妙な誤解をされる。
ちょっとホッとしてしまったが最大の問題はむしろこちらである。手の平の上の手触りの良いそれは、ハンカチではなくなまえの下着なのだ。
そんなものをまず面と向かってコレ落としたぞ、などと言って渡せないし、だからといって自分が所持していたらもっとヤバい。
しかし見て見ぬ振りなど言語道断だ。他の輩に何をされるか分かったもんじゃない。変な事に使われるかもしれない危険性がある。
となるとどうしていいか正直分からなかった。


(落ち着け、待て、落ち着けよォ、オレ……。クソッ、このままココで固まってても何も解決しねェし……)


深呼吸をしながら最善策を探る。
そうだ、これは落し物なのだ。たまたまパンツだったというだけで、なまえの落し物だという事実に変わりはない。
落し物は普通落とし主に返すが、なまえは今頃風呂だから追いかけて行っても無駄足。
なまえが出るまで待つという手もあるが、ここで考えてみてほしい。
深夜に女物の下着を握りしめて女風呂の前でうろうろする男。
字面だけでなんかもう駄目だ。反論の余地なくそれは変質者でしかなかった。
そして必然的に結論が出る。


(とりあえず一旦持ち帰って……。そんで、明日にでもコッソリなまえのバッグにでもブチ込んでおけば誰も気まずい思いはしねェよな)


よし、仕方ない。
至極もっともな言い訳に自分を無理矢理納得させ、手にした布を隠すように握ってそそくさとその場を後にした。




******





合宿所の自室。落ち着いた色合いのこの部屋で鮮やかに目を引く明るい水色がまぶしい。
ずっと持っているのもどうかと思い目の前のベッドに置いてみたが気になって落ち着かない。かといって別に何をする訳でもないが。
あまり悶々としていても変な気分になりそうだったのでやっぱもう寝たほうがいいかもなァ、と横になった。ふかふかのベッドは寮のそれよりも気持ちがいい。

あれからなまえはどうしただろう。
風呂からあがって服を着ようとしたら下着がない事に気付いて脱衣所で一人裸で大慌てだったかもしれない。
周りを涙目になって必死に探してもそれは見つからなくて、結局……ノーパンで部屋まで戻ったのかも、しれない。
羞恥に肩を震わせて、誰かと会いやしないかと真っ赤な顔でオドオドビクビクしながら。
服のすそを頼りなく握りしめ泣きそうになりながら内股気味に廊下を歩くなまえの姿が容易に想像できた。

風呂上がりの身体はきっといつもよりさらにいい匂いがしてきて、体温も高い。
寝る前だから薄着で、そのパジャマのズボンの下、本来あるべき物がないせいでやすやすといやらしい所まで侵入を許してしまうのだ。

やめて、とか細い声で鳴いても嗜虐心を煽るばかりで、余計興奮したオレにもっといやらしい事をされていく。
半ば強引に柔らかくぷにぷにとした割れ目をなぞれば敏感に体をビクつかせる可哀想ななまえ。
背後からがっちりと抱きすくめて、もう片方の手では割れ目の感触を好き放題に堪能しているとぬるぬるとしてくるソコに自然とオレの口角が上がる。
耳元にすっかり荒くなった息と、尻にガチガチの自分のモノを当ててやると怯えて縮こまる様はまるでひ弱な小動物のようだ。

……ヤベエ。
本日何回目の「ヤバい」であったかなんてもう忘れたが、気付いたらごく自然になまえでいかがわしい妄想をして、しかも勃っていた。
体がくたくただの言った割にそこだけ超元気だ。ふざけんな。

しかし元はと言えばなまえがパンツなんか落とさなければ……もっとしっかりしていればこんな事にはならなかったのに。
そうだ、なまえが悪い。だから少しくらいは何をしたって許される筈だと、水色の布を恐る恐る鼻先まで持ってくる。

「……、なまえ、の……ハァ……」

途端に体の中心がぶわっと熱くなるのが分かって、ハ、変態みてェ、と自嘲した。
罪悪感はない訳じゃない。しかし勃ってしまったものはどうにかするしかないし、どうせ抜くならせっかくだしなまえのパンツを使いたかった。
覚悟を決めて下着ごとずりさげると勢い良く出てきたソレは既に首をもたげて透明な汁をにじませている。期待、している。
散々言い訳を並べてきたが、本当はこうなる事を望んでいたんじゃないか。

先端にパンツのクロッチ部分の内側を押し付け、そのまま包み込むようにして握る。
……ここに、なまえの敏感な場所がいつも当たっていたんだ。
これは間接的になまえの性器でチンコを擦っている事になるんじゃないかと考えるともう止まらなかった。

「ア……、エッロ…なまえ、こんな濡れてェ……」

無論濡れているのはオレの先走りのせいだがそんな事はどうでもいい。描いた妄想に浸り、ひたすら刺激を繰り返す。
くちゅくちゅとどちらのものか分からない程混ざり合う体液が派手に音を立てるたび昂ぶる互いの体。無理矢理の癖に感じて濡れてンのは、なまえもオレが好きだから。
きゃ、あぅ、と小さな甘い悲鳴を漏らしながらなまえも無意識に腰をゆらめかせてはチンコにぐちょぐちょのソコを押し付けてはよだれを拭うのも忘れて恍惚の表情ですっかり溶けきっている。

(可愛い、ネェ……ッ、実は淫乱じゃナイのォ?は、やらし……!)

意地悪な言葉を吐けば目に涙をいっぱいに溜めて、だって荒北のおちんちん気持ちいいのぉ、と卑猥な言葉を口にしつつ一生懸命に腰を振って快楽を貪る姿はやはり淫乱に他ならない。

バレたらなまえはオレの事をどう思うだろう。いくらなまえが優しい性格だとはいえ、気持ち悪い、と嫌悪に眉を寄せ汚い物でも見るような一瞥を最後に二度と口をきいてくれなくなる可能性だってある。そしたらそこでオレの恋路も強制終了だ。
だが、バレなかったらそれはそれでまたヤバい。
このパンツは無事に持ち主の手元へと戻り、オレがチンコを押し当てていかがわしい事に励んだパンツをそうとは知らないなまえが履く。
凄まじい罪悪感と背徳感に加え、隠しようのない興奮もまたそこにはあった。


「あっ……くッ、ふ……!」


口から溢れるだらしない声を抑える事も忘れてそれからはもう夢中で手を動かしていた。
頭の中のなまえはオレの手にその白い手を重ねきゅっと握り、揺さぶりに耐えている。辛そうに引き締めた唇に出来るだけ優しく自分のを重ねると大きな瞳を驚きに揺らめかせ、それからぽたりと雫を落とす。ずっと好きだったの。嬌声の合間に聞き取れた言葉を脳内で何回も反芻して、オレもォ、と必死に返す。息が詰まりそうな程くらくらする。
そのままぐちゃぐちゃに愛し合って……もう、どうにかなってしまいそうだ。

オレはさっさと寝たかった筈なのに、こうなってはもう止まれそうにもない。
ああ、夜が更けていく。




******




あれから結局、こっそりとパンツは返した。
学校に戻って、いつも通りの日常に戻って。
あの日の合宿のことが、やっと忘れられそうだった頃、事件は起きた。


「荒北〜!!スポドリ入れなおしてきたよ〜!!」
「お、サンキュ……って、おああ!!ちょ、押さえろってェ!!!」
「え?……きゃあぁああ!!!」


突然の風に弄ばれ呆気なく翻るスカートのその奥。なまえの白い肌を包む、見覚えのある鮮烈な水色にオレは固まった。なまえがいくら慌ててスカートを抑えようとも、バッチリすぎる程に見えてしまっていた。焼き付いてしまっていた。


「あっ……!!ちょ、……ごめん!ごめんねお見苦しいところを……!」
「エッ……あ、いや……えーとォ」
「わ、忘れて下さい……」
「わーってるヨォ……」
「はい、スポドリ……」
「アリガト」
「……」
「……」
「そ、それじゃあね、頑張ってね!!」
「おー……」


恥ずかし気に頬を染めたなまえは、ばばっと逃げるように走り去っていった。

……今のは、多分オレの人生における忘れられない光景ベスト3に入る出来事だったと思う。しかしそれは、悪い意味で、だ。
頭を全力で殴られたような衝撃を受け、オレはその場に立ち尽くす。

……オレは、なまえの事が、ずっと。
だけど到底許されないことをしてしまった。そんなのは分かってる。罪悪感に見ないフリをして、結局あの下着はコッソリ返してしまったが、今思い知った。自分がどんなに最低な事をしたのかを。心底、思い知った。
……分かっていても、その事実を見ないふりをしてそれ以降なまえと接して来た。そしてこれからも、そうしていくんだ。そうするしか、ないんだ。今更、謝れもしない。どうしたって言える訳がない、あんな変態みたいな事をしちまったなんて。
熱い頬の上を、酷く冷たい汗が伝っていく感触がして、それはやがて落ちた。


「……」


次になまえと話す時、果たしてオレはちゃんとあいつの目を見られるだろうか?




-fin-

2015.1.4


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