06

「とーないっ」

教室のドアから顔を覗かせ僕を呼ぶ。

「えっと、委員会の先輩だよね、藤内」
「うん。」
「例の変な先輩だよね。」
「うん。なんだろ?」

綾部先輩のもとへ駆け寄る。
相変わらず土まみれで、ふわふわ。

「今日昼休み集合ね」
「えっ?」
「委員会、生徒指導室。」
「え?え?」

突然告げられ戸惑う僕を見事にスルー、じゃーねと手を振り彼は彼の教室とは逆の方向へと歩いていく。
そこで二時間目開始のチャイムがなった。
またサボリだな。
教科書とかも持ってなかったし。
…シャベルは持ってたけど…。

「何?委員会?」
「うん。昼休みだって。」
「じゃあお弁当ゆっくり食べられないね」
「うん…」

もう最初の委員会から2ヶ月が過ぎている。
他の委員会は三回、四回と回数を増やしているのに、うちはまだたったの一回だけだった。
やることがないのも理由のうちなんだけど。
そういえば活動内容もまだ聞いてないや…。
立花先輩が綾部先輩にまるなげしたっきり。
もしかして、あのときまるなげされたことをするのかな?
とりあえず、またあそこまで行くことに絶望した。


「こんにちは〜…」

昼休み、生徒指導室。
僕はお弁当を胃に無理やり押し込み、急いでこの教室まで走った。
流石に食事の直後に階段ダッシュはキツいな………。

「早いね、藤内。」

あなたは早すぎです。
リバースしそうなのをこらえて声の主を見る。
藤色ふわふわ綾部先輩。
いったいご飯は食べたのだろうか?

「僕お水だけでお腹膨れる人だから。」

まるで僕の心を透ししたような回答。
そんなに顔にでやすいだろうか?
不思議に思って顔をペタペタと触っていたらふふっと小さく笑い声が聞こえた。
顔をあげたときにはもう笑みは消えていた。

……なんで。

「さて、」

ソファから立ち上がった綾部先輩は簡易キッチンに立った。

「?……あ!」

何でキッチンに?と疑問に思ったが、すぐに思い出した。
そういえば委員会のときは下級生がお茶いれるんだ!

「ぼ、僕やります!すいません!!」

とキッチンへ駆け寄り、先輩と変わろうと思ったが

「いいよ。お弁当かきこんでここまで走ってきたんでしょ?休んでなよ」

と、はらわれてしまった。

「あぅ…すいません。ありがとうございます」

素直に従っておいた。
実際、わき腹がキリキリと痛い。
これ以上動くと本気で戻す……。
ぴーっとやかんが声をあげる。
こぷこぷとお湯を注ぐ音がする。
ごぽごぽとポットがお湯を出す音がする。
そんな合唱に聴き入っていたら、カチャと音がして、
顔を上げると湯のみを持った綾部先輩が居た。

「どうぞ。」
「あ、ありがとうございます」
「それ飲んだら、委員会の仕事教えるね。」

やっときた。
少しワクワクしながらお茶を含んだ。





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