04 僕の家は、学校から歩いて40分くらいの所にある。 行きは、朝日に向かって、 帰り道は、夕日に向かっていく。 坂の上から太陽が覗くその景色は、とても綺麗だ。 すべてが光に包まれていく。 すべてが輝いていく。 そんな、光景だ。 その道を、今、綾部先輩と歩いている。 「………。」 「………。」 沈黙が続く。 僕の革靴がアスファルトを鳴らす音が、今一番大きい音だ。 綾部先輩はスニーカーなので、音はしない。 「………。」 ちらと綾部先輩を見る。 学校でみた、綺麗な顔が夕日に照らされて、一層綺麗に見える。 ツンとすました顔、ふわふわと揺れる髪、ピンとのびた背筋。 それと、 深い紫の瞳。 つい見とれて、吸い込まれてしまいそうだった。 「…先輩」 「ん?なに」 「あの、何で風紀委員会に入ったんですか?」 ふと気になったことを問うてみる。 「んー…。滝ちゃんがうるさかったから。」 「…はい?」 「ああ、滝ちゃんはね、僕と一緒に住んでる子だよ。同じクラスで、体育委員の。」 「はあ…」 一緒に住んでる…? それってどういうこと? 「僕ら、親はいないんだ。施設育ちで。」 そうだったのか……。 「すみません、こんな話してしまって…。」 「ん、別に。」 綾部先輩の意外な事を聞いてしまった…。 親がいないって……大変なんだろうな。 施設だって、肩身が狭いだろうし。 「…軽蔑した?」 「は?え…?」 「黙っちゃったから。」 「いえ!してませんよそんなこと!」 「そう…。」 「何でですか?僕、綾部先輩好きですよ。軽蔑なんてしません!」 「…ありがとう。」 先輩の顔が、少し曇ったきがした。 でも、なぜかは聞かなかった。 「藤内。」 呼ばれてふと顔をあげる。 綾部先輩は数歩先にいた。 「ねぇ見て。…綺麗。」 気がつくと、あの坂の上だった。 すべてが輝く坂。 太陽がすべてを抱く場所。 「綺麗だね…。藤内。」 それを見る綾部先輩は、なんだかとても遠くにいる気がして。 もう会えない気がして。 切なくなって。 でも、どうしたいのか、わからなかった。 「僕の家、この坂下って右なんだ。」 「あ、僕は左です。」 「そっか。じゃあそこでばいばいだね。」 「そうですね…。」 僕らはゆっくりと、坂を下った。 特に会話はなく、ただ、並んで歩った。 交差点で別れて、一人で歩く。 綾部先輩という人を考えてみたけど、わからない。 まだ知り合って日は浅いけど、 なぜかすぐにどうにかしないと、 どこかへいなくなってしまいそうで。 僕の前から消えてしまう。 そんなきがした。 [目次] [栞] |