!faORCA組学パロ
クリスマス未満クリスマス
未完





雰囲気が浮かれている。
それはもう目に見えるような質量を伴って。
――"浮かれている雰囲気"が"質量"を伴っているかどうかはまあ、ともかく。
とにかく、雰囲気が浮かれている。


ここは私立RN学園。
生徒数こそ一般的な高校とさほど変わりないものの、だがしかし、この学園は恐ろしく広い。それはもうむやみやたらと広大なのだ。
生徒用のACを収めるガレージがそこいらにあるのは当たり前、学園地下に広がる謎の施設(学園全体の管理機構だろうとか、電源施設だとか、いろいろ)や、用途不明な巨大オブジェ(?)、挙げ句の果てに敷地内に銭湯すら存在する、説明するのも馬鹿馬鹿しくなるほどの巨大な学園だ。

とんでもなく浮き世離れした世界に見えるが、通う生徒はまあ殆どが普通の、一般的な高校生であり、それぞれがそれぞれ、人にはよるだろうが充実した日々を送っている。
そんな学園で過ごす彼―メルツェルも、その"一般的"な生徒の一人だった。

穏やかで理知的な外見に違わず、相応に勉強が出来、友人もそれなりに居る。趣味はチェスと少々渋いが、幸いなことにその共通の趣味を持つ仲間にも恵まれていた。

だが、そんな"一般人"の彼にもうひとつの顔があることを知る人間は、多分、あまりいない。


▼或いはまたこうして集まろう(仮


「――と、言うわけで!この予算内で我がORCA旅団のクリスマスを行う事と相成った。―諸君、派手n「また死んだァアアア!ハァアリィイイイ!!!」

突き刺すような切れ長の眼と紺灰の髪―旅団長マクシミリアン・テルミドールが放った渾身の格好付けたセリフは、突然の悲鳴にも似た雄叫びに掻き消された。

「…メルツェル、私は空気か?空気にもなれんか?」
「案ずるなよ、マクシミリアン・テルミドール。…一寸ばかりタイミングが悪かっただけだろう。こんな事でいちいちめげるな。」

べちゃりと机に突っ伏す旅団長を言葉の端に慰めると、メルツェルはたった今吼えた白い短髪に鼻の頭に絆創膏の青年―ヴァオーの頭に、持っていた国語辞典のカドをごつんと落とした。

「痛ッッッ―――ッ!?」

背後からの突然の奇襲をなす術無く貰いヴァオーが悶絶する。
涙目になって仰け反ると、そこには腕組みして眉間に盛大にシワを寄せたメルツェルが彼を見下ろしていた。
「旅団長の話を遮ってやるな。それをやるな、とは言わないがなるべく静かにやれ。な?」

メルツェルがびしりと指した先には、決して控えめとは言えない十二分な大きさのモニタと、"YOU DIED"の文字。どうやらプレイしているゲームでミスをしたらしい。

「ぐうう…わかったぜメルツェル…」

涙目のまま後頭部をさするヴァオーの横から、どこから湧いたのか赤味掛かった黒髪の青年―ハリがひょいと顔を出す。

「全く…何だって?今度はどこで詰まってるんだよ」
「…ハァアリィイイイ!きっと来てくれると思っげふん」

再び雄叫びをあげたヴァオーの後頭部に間髪入れず英和辞書が直撃し、さしもの彼も前倒しにくずおれ、今度こそぴくりとも動かなくなった。

「…そりゃやりすぎなんでないの?」
「安心しろ、その程度でくたばるようならここに居場所はない。」

顔を引きつらさせるハリと裏腹に、メルツェルはあくまで冷静である。
その声に答えるかのようにヴァオーが勢い良く起き上がる。


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