どうしてこんなことになっているのか、息も絶え絶えのこの青年には理解出来なかった。
酸素の足りなくなった脳が呼吸を促す。足りない。もっと深く呼吸しろ。でないと死んでしまう。
せき立てられるままに呼吸をしようとするも、喉に異物が絡んで上手く息が吸えない。

―そう、異物だ。
こいつは本来ここにあるべきものではないのに、何が悲しいのか青年の喉と舌に、不快感とともにべたりとへばりついていた。
青臭くて濃い、オスの臭い。
けほ、と力無く咳をする。

「……っ…は、う、」

どうしてこんなことに。
答えの出ない疑問が頭の中で虚しくこだました。






「―――ン、」

誰かが、霞越しに名前を呼ぶ。

「…?……」
「――ン、起きろ。……ジーン!」

語気強い言葉とは裏腹に、ゆるゆると体を揺さぶられ、青年は重く重く再び閉じようとしている瞼をどうにかこじ開けた。

「…なんだ。アゼル…どうした?」
「どうした、じゃあない!」

“豊穣の黄金色”と尊ばれる濃い金髪に、まだ昇りきらない朝日が輪を薄く作っている。
まるで人によっては天使だなどとも羨ましがられる、一本に束ねた金亜麻のそれを不機嫌そうに揺らしてアゼルがジーンを見下ろして居た。
そんな相棒をぼんやり見上げて、ジーンが欠伸をしながら不思議そうに尋ねた。

安宿のベッド。
疲れからか着の身着のままベッドへとダイブした後、小言の多い連れに何か言われたような気がしたが構わず寝てしまったことをぼんやりと思い出す。
―そんなことよりも、青年にとって重要なことは別にあった。

「…もしかして、コレ?

苦笑交じりに自分のズボンを見る。
コートを留めたベルトのせいもあるのか、ひどく前面が張り詰めている。

「…見苦しい。」

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