*古王と首輪付きとパラレル
*首輪付きは強化人間プロジェクト的なものの遺児とかうんたらかんたら
*古王は通常運転
*古王に補佐役でひとり
未完!


「"これ"は俺が貰うぞ、いいよな?」
「そんな気味悪いモン、何に使うんです?きっとまたすぐ壊れちまう。オモチャにもなりゃあしませんよ」
「いーんだよ。――俺は"これ"が気に入ったんだ」
「構いやしませんがね、あなたが良いんであれば。目的の物は手には入りましたし。予想より時間は掛かりましたがね…」
「たかだか10そこら。手間にも数えられるまいよ」
「それはそうですがね。あなたにかかれば、そりゃあそうでしょうよ」


――水音がする。
さらさら流れる"水"ではなく、不吉な粘性を帯びている。それは引き摺るような、纏わりつくような音をしている。それはずるずると、にちゃにちゃとしている。

それに、あたたかい。
毛布や暖房のそれではなく、まして俺の"うち"のあたたかさ、それでもない。これは人肌の暖かさだ。誰かに抱き締められているような。――そんなことは知らないはずなのに。

そうして、誰かが上機嫌に歌っている。どこかできっと聞いたことのある歌を。

――"俺は考える半端者、『彼』を殺す事だって厭わない"――"俺はただ走る、泣き喚いて親を探すガキみたいに"――"俺と、『彼』の話をしよう"

彼とは、いったいなんだろう。

「いいんですか、どうせまた飛び散っちまいますよ」
「なら、それはその時だ。俺は構やしねえさ」
「あなたの"リザ"が汚れちまうのは、私はいただけないんですがね」
「なんでお前が心配するンだ」
「一体誰がメンテナンスしていると思ってるんです」
「はは、まあいいだろう?ほれ、先行け。後から行くからよ」
「…解りましたよ。心配はしてはいませんが、どうか、ご無事でお帰り下さいよ。あなたが居なくなりでもしたら我々は、」
「わかってらァよ。さあほれ、行った行った」

誰かが笑っている。






「――やっぱり来るかね。黙って見逃せば、みすみすくたばる事も無かろうに。なァ、"×××××"?」

誰かが俺に笑いかける。

『目標確認。距離900。逃がすなよ、"あれ"を――』
「よう、随分気張るじゃねェか。そういうのも悪かァないが、"これ"はもう俺のモンだ。返すつもりは無ェンだよ」

ブースターが火を噴く。乾いた大気を更に焦がして炎が踊る。
モスグリーンのネクストが反転、間近に迫っていた警備用の特殊ノーマルにあっと言う間、照準を合わせる。

「ハッ!俺の“リザ”が手前ェらなんぞに追い付かれる程ノロマだと思ったか?」

わざとに決まってンだろう?
また笑い声。
対ネクスト用に調整された重ショットガンがごく近距離で放たれ、特殊高速ノーマルの左腕とコアの半分を吹き飛ばす。吐き出されていたミサイルが次いで後続に命中、チェーンガンの連打で瞬きの間にそれが落ちてゆく。

「面白ェだろう、外は。」

ほれ、もっと良く見てみな。
不思議な事に、"眠って"いても外の情報が明確に、手に取るように伝わって来る。
ネクスト、ノーマル、眩しい、日のひかり、巻き上がる炎、眼前に広がる、ケミカルグリーン、黒く煙り赤熱する鉄塊、…全部が手に取るように伝わって来る。

「お前はお利口だな」

なんのことだろうか。
眠ったまま考えていると、頭に手が置かれた。
それは、よくわからないけれど、これはとても好きだと素直に感じた。

『クソッ!これが"普通"だと!我々の手には、余る…!』
「その通り、当たり前だ。お前らの手には余る。どうして頭良いじゃねェか。でもな、ちょっとばかり遅かったな、」

ようく掴まってな、"首輪付き"。
お前が吹ッ飛ばないように、とりあえず祈っておいてやるよ。

頭の中に直接響く声に、それを受け取った頭より先に身体が反応して、考えるより先にその声の主にしがみついていた。

パイロットスーツ越しでも、よく鍛えられている、無駄の無い身体つきであることが分かる。じくりじくりと命が巡っているのが分かる。あたたかい。やっぱり、俺を抱えていたのはこのひとだったかな。

「大甘にまけて及第点かね」

本当にこのひとはよく笑う。

「今日は気分が良いからな、採点は甘くしといてやるよ」

そして、本当によくうたう。

「I'm a Thinker,to to――」

そして、俺はこのうたを知っている。

「じゃあな、まあまあ楽しかったぜ」

世界がケミカルグリーンに塗り潰された。
――――

「まさか無事とはね。久し振りにマトモに驚きましたよ。あなたのオモチャ選びが当たるなんてね」
「はは、ざまあナントカって奴だな」
「戦闘とアサルトアーマーのフィードバックにも耐えたんですって?まさか嘘でしょう。AMSの実地テストは未だでデータ学習段階だったんですよね?有り得るんですか、そんな生き物が」
「適性なんてそんなもんだろう――しかしお前本当よく喋るな」
「だって信じられませんよ、冗談じゃない。とんだバケモノを連れ帰ってくれましたね。あなたが世話をするんでしょうね。私は関知しませんからね」
「言われなくとも、だ。心配すンなよ、お前にゃ手間かけさせるつもりは微塵も無ェぜ」
「なら結構ですけどね…」

――――

ぼんやりと、続いてなぞるように輪郭がはっきりしていく。いつもよりゆっくり眠れたような気がした。

「―――…?」

いつもの、生温い感触はしなかった。
触れたのは埃臭い布。ソファだろうか。
ぎゅっと押すと、更に埃臭さが増してなんだか面白い。それに、何故か、あの慣れた薬臭さより余程好ましく思えた。

かぶりを巡らす。
自分が今居るのは、ぼんやりと発光するモニタが二面と、床には薄汚れた、脱ぎっ放しの服のようなものが散らかっていて、あとは今寝ている埃臭いソファとその正面のテーブルだけのシンプルな部屋だった。
開けっ放しになっている扉から見える廊下は、ダークオレンジの常夜灯の明かりに満ちている。

(――えっと…?)

何が起きたのか、今一よく理解出来ていない。ここには、今まで自分が居た、どこまでも清潔な白がどこにも無い。くすんだような色があるばかりだ。薬のにおいも、忙しくめまぐるしく変わる機器も無い。ただ、あるべきものがあるようにあるだけのように見えた。

「おう、目ェ覚めたか」
「…あ」

この声だ。
モニタから肩越しに視線を移す。
モスグリーン。彼の目。
煙草をくわえて、無精に髭の生えた口元がつり上がる。

「よう、首輪付き。よく寝たか?」

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