あの日から1週間
曇りか雨の天気が続いていた

相変わらずあいつからの接触はなく
それが、俺の余裕を削っていった

他の選手や漣たちには
変わらず笑顔を振り撒くのに

俺にそれを向けてくれなくなって
胸が苦しくて悔しくなった





どうして

なんで俺なんだ

俺だって、
お前の笑顔見たい、独占したい

なのによ……






「不動っ!!!」

「…っ、ああ」



ぎこちなく基山からパスを貰い
ゴールまで方向転換

その瞬間、ベンチで
漣と話す塑琉奈が見えて

クンッと足がボールを掠めてしまい
間違えてコートの外に出してしまう



「チッ……」

「どうした不動?
あんな凡ミスするなんて、お前らしくないな」

「ハッ…、俺のことより
自分のプレーに集中しろよ、鬼道クン」



皮肉に不動は笑ってやったはものの
鬼道の言う通り、普段なら凡ミスなど不動がするなどごく稀なことだ

それがこの1週間、目立ってきたのは
チームである選手たちは判っていた



「30分休憩ですー!!!!」



ホイッスルがなり、
いつもなら塑琉奈から貰うタオルと飲料をマネージャーたちから受け取り、習慣になってしまった塑琉奈を見やる

すると今度は漣と
大きな声を上げている姿があり

気に食わなくなって
他の選手が木陰に近寄ったり
個人練習する中

俺は一人、倉庫裏の影で休むことにした











「……っ」



ぐいっとタオルで溢れた汗を拭き
一口、飲料を口に含んでから壁に寄りかかる



「…くそっ」



自分が集中できてないのを
悔しくて顔をしかめていれば

ふと、倉庫端から
見覚えのある色を目に捉える





あれは確か…塑琉奈の茶色のパーカー…





「…………」



それが気になり、
じっと風に揺らめくのを見つめていれば

次にヒョコと塑琉奈が顔を覗いた



「……っ!?」



反射的にその塑琉奈と目が合えば
塑琉奈は慌てて顔を引っ込める





うぉおおお
目が合っちまった!!完全にバレてる!!

すげぇ前に出にくいじゃねーかよ!!!





「……」



塑琉奈が顔を引っ込めたと同時に
不動は目が合った、というだけで胸が高鳴った





久々に…
あいつの顔を真面目に見たな…


ただ、それだけというのに
自分の中から動力源が塑琉奈なんだ
と再確認をする



「…おい、用があんなら言え…」



それとは裏腹
久々に塑琉奈に投げ掛けた言葉が
自分にとってはそっけなく感じ
不動は内心舌打ちをする



「う……はっ、はい…」



塑琉奈は不動にそのまま声かけられ
体をビクつかせ、恐る恐る不動の前にでれば

少しだけ歩み寄り、距離の置いた位置にぺたんと座り込んだ



「…なんだよ」

「いや…あの…ですね…」



ギンッと不動に
睨まれているような感覚に陥り

塑琉奈は思わず
肩を小さくして視線を反らす





んでんな遠いとこ座るんだてめぇ…

今さらビクつきやがってよ…





「先ず謝る…、ごめんなさい」

「……あ?」

「っ…んで、ちょっとだけでもいいから話聞いてくれ」

「………」



沈黙を破り、塑琉奈から出た一言に
ポカンと間抜けな声をあげる不動

だが構わず塑琉奈は口を動かした



「お前のファンに因縁つけられて
二度と近寄るなって言われた」

「………」

「その時に俺は不動のなんなんだって聞かれてさ、判らなかったんだよ
俺にとって不動はなんなのか…
不動にとって俺はなんなのか…」


ゆっくりと息を吸い
徐々に真剣になる塑琉奈の顔つきを見て、不動もそれに答えるように耳を傾ける



「判らなくなって…勝手に不動を避けてから、なんか…判ってきたんだそれが…」

「なにが…?」



ピクッと眉を動かし
塑琉奈を見据えれば

そこにはいつものあの笑顔



「俺は不動…いや、
あきおたんが好きだ」



不動はそれを聞いた瞬間
驚きが隠せなく、目を見開いた





好…きだと

俺の…ことが…?





「俺はあきおたんを笑わせたり
楽しませるのが何よりの楽しみだったし、一緒にいないとなんかこう…生きた感じがしなくて

いつの間にか
あきおたんしか考えてなかった」



塑琉奈は照れ臭そうに笑い
頭を掻きながら立ち上がる



「勝手な行動しちゃってごめんな!!!
今度からまたお前を笑わせるから!!!」

「………」



んじゃなっとそのまま
そそくさと逃げようとする塑琉奈

不動はそれを見て
思わずぐいっと塑琉奈の腕を掴んだ



「ぐにっ…!!!?」

「ったく……てめぇは全部勝手過ぎんだよ!!!俺の言い分は聞かねぇのか!!?」

「あっ…あきおたん?」



はぁーっ息を吐き
キョトンとしている塑琉奈を
自分の胸の中へと手繰り寄せる



「勝手に俺のこと避けてよ…
それで俺がいねぇとやっぱダメだ?
ふざけんじゃねぇよ」

「ごめ…ごめんなさい…」



ギュウと腰と背に腕をまわし
不動の肩にコテンッと
塑琉奈の顔が当たる

それでも優しく感じる不動の温もり



「俺だって……」

「……?」

「塑琉奈と同じだよ…」



申し訳なく顔を胸に埋める塑琉奈に
そっと耳打ちをしてやる





塑琉奈が笑ってくれねぇと

塑琉奈が側にいてくねぇと





「俺は…塑琉奈がいねぇと死んじまうんだ」





だからいつもみたいに

俺を呼んでくれ





「あきおたん…」

「名前」

「え…?」

「普通に呼べよ、明王ってよ」





そしてその声で

俺に生きるチカラをくれ





フンッと誇らしげに笑って
塑琉奈を見つめてやれば

また、眩しい笑顔が俺だけに光輝く



「明王…」

「もっと」

「明王、明王」

「塑琉奈…」





心地よい声、笑顔も、姿も全部、全部

俺だけの太陽様

いま………届いた









太陽に手を伸ばして
(俺の日光動力源はお前しかいないんだよ)




(………)
(明王、休憩もうすぐ終わるよ!?)
(んなことよりキスしてぇ)
(こらぁあああ!!!)







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長いくせにグダグダな件w
因みに先に恋したのは明王でしたー

夢主と明王のサイドを交互にしてみましたが、ちゃんと出来てましたでしょうか?

相変わらずオチセンスが無くて泣いた



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