それから1週間経とうとしていた


あの日以来
塑琉奈と干渉できなくなった不動は

1週間の中でメンバーでも判るくらいに調子が狂ってしまっていた

それは勿論、塑琉奈自身も知っていて…





「……」

「塑琉奈」

「………んふあ?」



選手たちが練習するそばで
ポーッと空を見上げ、間抜けな顔ばかり

否、練習を見てしまえば
どうしても不動に目がいってしまうのもあり…

ただ来夢に声かけられ
ちゃんと向き直るのは変わってはいない



「あきおたんと喧嘩した?」

「してない」



来夢の言葉に内心ビクつきながらも
ポーカーフェイスを気取り、即答してみれば

来夢は顔をしかめる



「塑琉奈のね、いいとこ教えてあげる」



そのまま、来夢は塑琉奈を見つめ
ピッと指を立てる



「明るくて、馬鹿で面白い、ハッキリしてる」

「………」

「んでもって判りやすくて、露骨」

「……っ!?」



次から次へ出てくる来夢の言葉に
耳を傾けながら、目を合わせると

塑琉奈はハッと自分の今までの行動に気付き、目を大きく開かせた



「………あのさ、
前に言った夢の話覚えてる?」

「あー、あの凄いリアルな?」

「うん」




来夢に言われて
やっと自分の行動に責任を感じ
塑琉奈はゆっくりと口を開く



「あれね、正夢だった」

「えっ…じゃあ因縁つけられたのか」

「うん…で、めんどくさくなって
近寄らないって言っちまったんだよ…」

「……なるほど」



前の嫌な予感が今になって
的中したのを知り、来夢はふうっと息を吐いた



「塑琉奈はそれでいーの?」

「辛い」

「わかってんじゃねーかよ!!!」



来夢に声を上げられ、肩を落とし、視線を地面に向ける塑琉奈



「俺は…今まで不動を楽しませるのが好きだったし、満更でもない顔を見て、『あー、楽しんでくれてる』と思えて幸せだったよ?」

「うんうん」

「だけど『不動のなんなの?』って聞かれても、全く判らなかったし
不動から見て、俺はなんなんだろうってさ…、核心がなくって…」

「…はぁ………」




そこまで塑琉奈の本音を聞いてから
来夢ははあっと深くため息を付いた後、力強く塑琉奈の頭を叩いた



「いいぃってぇええー!!!!」

「塑琉奈さ、なんであきおたんが
最近荒んでんのかわかってんの?」

「わからねーよ!!?」

「塑琉奈がめんどくさくなってホイホイ承諾して、
自分の気持ち判らないからって
あきおたんを勝手に遠ざけて…
全部塑琉奈のせいなんだよ!!?」

「な……っ…」



来夢にキッと睨まれ
肩を竦めながら、耳を真剣に傾ければ

今まで自分勝手なことをみんな、不動に押し付けていたのを思い知らされる



「大体塑琉奈が考え込むとか
マジ気持ち悪いわ!!!鳥肌立つわ!!!
どうりで最近天気が悪いと思ったわ!!!」

「おま……ひでぇ…」

「だから!!!思い切って言ってこいよ
さっきの全部!!!」



そう来夢が言った瞬間だった

ピーッとホイッスルの音が聞こえ
秋ちゃんの『30分休憩です!!!』が
グランド場に響き渡る


選手たちがマネージャーたちから
飲料とタオルを受け取り

各々散らばってゆくのが見え



「ほら塑琉奈!!!
丁度良いから言ってこい!!!」

「ちょちょ…待て待て待て!!!」



その中で一人、倉庫裏に向かおうとしている不動を見つけ

来夢はグググッと
その方向に塑琉奈を押す



「言わないで帰ってきたら…フェアリーダンスの後にダブルラリアットして、お前の首を完全にへし折るぞ」

「うわぁああ!!!死に至らしめる!!!」



そのままゲシッと来夢に
倉庫近くまで移動させられて

塑琉奈は浮かない顔で
倉庫裏に目を凝らした



「………」






確かに、全部全部、来夢の言う通りだ

自分で不動に対する気持ち判らなくて
ハッキリできなくて

不動を言い訳にして逃げてたんだ…

不動がどう俺を思ってるとか
そんなの、解るわけねぇよな

だって、聞いてないんだから



やっと……気付いたかも……

俺が、どう思ってるか……






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