びくり、と吏人の体が大きく跳ねる。動きを止め、じっと息を潜めるがあれだけの大きな音だ。今入ってきた"誰か"の耳にも届いているだろう。それでも吏人はガチガチと鳴る奥歯を食いしばりながら、見つかるな。見つかるな。と頭の中で繰り返す。
靴音は段々と近付き、吏人が入っている一番奥の扉の前でピタリと止まる。
そのまま暫くの間痛い位の沈黙が続き、耐え切れなくなった吏人は「シアン…?」と小さく呟く。それを合図にするかの様にゆっくり扉は開かれ吏人の前に現れたのは、心亜でも他の知っている人でも無い。一度も見た事がない中年のサラリーマンだった。
吏人の頭の中から血の気が更に引く。「ち、がう…これは…」と震えながら言い訳をし、見せない様にと体をよじるが上手くいかない。
他人に見られてしまった事実に絶望を感じている吏人は、サラリーマンの吏人を見る目が妙にぎらついている事に気がついていなかった。
サラリーマンは扉を閉め鍵をかけると、床に置かれていたローションのビニールを乱暴に剥がす。吏人がサラリーマンの行動に驚いている隙にサラリーマンは吏人の両脚を掴み、開く様に固定されている脚を更に大きく開かせる。

「なっ何す…」

サラリーマンはしゃがみ込み吏人のまだ"そういう行為"に使われた事の無い菊門を凝視する。シアンにペン先を突っ込まれたせいで妙に黒くなったそこを見ていたサラリーマンは小さく吹き出し、吏人は羞恥に顔を赤く染める。
うっすらと周りに生えた陰毛の中で硬く閉じられたそれを見られ、吏人の頭の中に更に羞恥と混乱が満ちる。見られている事実に小さく菊門がひくひくと動き、それに気をよくしたのか、サラリーマンはローションの蓋を開きどろりとした液体をそこに大量にかけ始めた。

「ヒッ、ィ…!」

冷たさにぶるりと吏人の体が震える。何をされるのか全く分からない。そんな吏人の不安をよそに、サラリーマンはゴツゴツとした自分の指を吏人の菊門へと這わせる。皺に塗り込むようにローションを擦り付け、指が接触する度にすぼまったそこはひくひくと反応する。
どこかくすぐったいような、そういえばどこかで見た動物の親子の映像で、子供の排泄を促す為に母親が子供の股間を舐めて刺激を与える行動するのを見た事があった。関係あるのかどうなのか分からない記憶を吏人が頭の隅で考えていると、菊門の周りを触っていたサラリーマンが中指をぐいと押し付け、指先を中に埋めていく。
座薬を入れられたような感覚に驚き「何すんだ!」と暴れるが、ガチャガチャと手錠が五月蝿くなるだけで事態は何も解決しない。その内に指はどんどん吏人の中に侵入していき、違和感と嫌悪感がじわりじわりと吏人の中で沸き上がってきた。

「い、や…だ。止め…」

指の根元まで入れられ、苦しげに吏人は息を吐く。サラリーマンが吏人の言葉を無視して中に埋めた指をゆっくり、狭いそこを拡げるように動かし始めると、吏人は冷や汗を体中から流し歯を食いしばる。その苦しげな表情に興奮したのか、サラリーマンはにやつきながら指の律動を激しくしていく。
何度も抜き差し、回し、中で曲げる。何も知らない吏人はただ訳の分からない行動に恐怖しながらぜぇぜぇと息を吐く事しかできなかった。
肛門を嬲られるなど泣きたい位恥に思えたが、それでも吏人は歯を食いしばり涙だけは出さない様に堪える。それが最後の意地だと言うように。
サラリーマンは更にローションをかけると、吏人の中に埋める指を更に増やす。淫靡な水音がぐちゅぐちゅと個室の中に響き時折小さく息を漏らす吏人の耳にも容赦無く聞こえる。
吏人が感覚に慣れる暇もなく指は三本に増やされ、菊門の皺を引き伸ばしえぐる様に奥を突く。突き動かされる行為に嘔吐感が込み上げてくるだけで、吏人の陰茎は最初の時と変わらず萎えたままだった。

「うぇ…げほっ!」

嘔吐感をごまかすように空咳を吐く。吏人の反応にサラリーマンは小さく舌打ちをするとずるりと指を引き抜く。
解放されはぁ。と目を閉じ安堵の息を吐いた吏人だったが、ファスナーの小さな音と衣服の擦れる音が耳に入りゆっくりと目を開ける。
サラリーマンへと視線を向けると、立ち上がりズボンを下着ごと下ろされ露出したサラリーマンの陰茎が目に入る。既に大きく起ち上がっているそれを、ローション塗れになった手で何度か扱き塗り込むと、今度は吏人の菊門に擦り付ける。
何をするのか。呆然する吏人の頭の中に、先程の心亜の声が響く。

『セックスしろって事。ここでさ、お前のケツの穴にチンコ突っ込んでもらって、金貰えって言ってんの』

十分にローションで濡れ、更に大きさを増した陰茎が吏人の菊門に当てられる。ぐり、と腰を捻れば、少し緩んでいたそこは先端を少しだけ受け入れた。

「…い、や…ッ」

だ。と言い終わる前に、サラリーマンは一気に吏人の秘部へと挿入した。
吏人の喉から言葉にもならない叫び声が上がり、個室どころかトイレ中に大きく響く。歯を食いしばり堪える事も出来ない。その間も、無理矢理突き動かし陰茎はどんどん吏人の中へ埋められていく。

「ガッ!ア゛ッ、止め…ヴぁ、あッ!!」

恐怖も混乱も吹っ飛び、痛みだけが吏人の頭の中を支配する。
慣らしたが衝撃で切れたのか、律動する度に吏人の秘部から赤い鮮血がローションと混ざりながらぽたぽたと落ち、便座と床に小さく赤い染みを作る。
尋常でない汗が吏人の体から滲み出し、サラリーマンが逃げる吏人の腰を掴むとじっとりと湿った感触がした。腰を固定し、一度少し引き抜き勢いよく腰を叩きつけると、サラリーマンの陰茎は根元まで吏人の中に埋められる。吏人が痛みに更に絶叫を上げた。
快楽を感じていない吏人の中は食い千切るように締めつけるだけだったが、今にも気絶しそうな吏人の表情を見たサラリーマンは心配するどころか嫌らしい笑みを浮かべて、律動を開始する。



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