「ん?何でそいつが犯人になるんだよ」
「いや…コイツしかこの時間殺せる奴がいないんだよ」
「何でだよ。あの女もできそうじゃん」

そう肩に乗せられた頭が言って、腹に回された腕に力が篭り後ろにくっついている佐治と更に密着させる。
恥ずかしさに体をよじって離れようとするが後ろから俺を抱きかかえるように胡座をかく佐治に敵うはずなく、仕方なく背中に熱を感じながらカチカチと携帯ゲーム機を再び操作する。

「あいつは次の犯行ができないだろ…ほら正解した」
「あ、待てよ俺まだわかってねェのに」
「お前待ってたら日が暮れるっての」

「んだとゴルア」と言う言葉は無視してゲームを続ける。大体犯人が分からない攻略してくれお前頭いい高校行ってんだろ。と無理矢理ゲームを渡してきたのは佐治の方だ。
確かに難しい推理ゲームだがしっかりと読み込めばちゃんと犯行の穴が見えてくる。それに頭がいいのとこういうのが得意なのは違うと思うのだが、単純に佐治が苦手なだけだろう。

「…て言うかさ」
「なんだよ」
「いつまでくっついてるんだよ。お前」

俺の家に遊びに来て鞄からいきなりゲームを取り出したのはよしとする。その後さも当然と言うように俺を佐治の膝に乗せて、しかも腹に腕を回して抱きしめる状態にしたのはどういう事か。
まだ昼間で両親も仕事で家にいないからいいが、そうでなかったら蹴ってでも止めさせているところだ。
「別にいいだろ」と肩に頭を擦り寄せる佐治の髪からはいい匂いがして、コイツの匂いってなんかいいんだよな。と気付かれないように鼻をひくつかせる。

「嫌かよ」
「…嫌じゃねェけど」

嫌ではない。そう嫌、ではない。寧ろ恋人である佐治の匂いや声が間近で感じられて、体温と背中越しに聞こえる心臓の音が心地好い位だった。
だけどそう言った途端、耳の軟骨をかぷりと甘噛みされたのには驚いた。
急な刺激にびくりと体を震わせ「止めろ馬鹿」と窘めるが、佐治は舌を耳の中に這わせてきて一向に止める気配が無い。それどころか腹に回していた腕がシャツのボタンを外し、服の中へと入り込む。胸まで指先が這い、そこにある小さな胸の飾りを摘むと一気に体から力が抜けていく。
優しくたまに乱暴に弄られ堪らなくなりゲーム機を床に置いて佐治の腕を掴む。ぞわぞわと体中に鳥肌が立つ様な感覚に流されそうになるが、そうはさせるかと佐治の後頭部の髪を引っ張って耳から顔を離させる。
そのまま文句を言う唇に自分の唇を合わせて、ちゅっと音を立てながら佐治の口内に舌を入れる。
濡れてしまった耳に冷たさを感じながら佐治との口付けを深くしていくと、力が無くなってきた佐治の指先が胸から服の裾に絡まる。胸への刺激が無くなったのでそのままキスに集中していると、服を掴む指先に力が篭り佐治の頬がうっすら赤く染まった。

「は…ずり…」
「つーかいきなりすんなよ…」
「だっていっつも俺が下だろ」

「納得いかねェ」と言う佐治に「ジャンケンで決めたろ」と返すと不満げに眉を寄せる。そんな顔をしても駄目なものは駄目で、と言うか自分が下なんて何がなんでも嫌だから佐治の要求は毎回拒否している。

「可愛いのになァ」
「何、が」
「お前が感じてる顔」
「な、ァ…!」

顔が一気に熱くなり、可愛いのはどっちだ。と思いながらぷいと顔を背ける。
恥ずかしくて佐治の顔を見れないが為にやった行為だったが、しまった。と思った頃にはもう遅く、再びかぷりと耳を噛まれてしまった。

「あ、止めろ馬鹿!」
「お前耳弱いよな」
「や…め…っ」
「胸とかも」

腹筋をなぞられながら反対の手で再び胸を触られ、ぞくりと背中を這う感覚がまた復活する。
コイツ、回を重ねる毎に上手くなってきてねェか。
いつか本当に立場が逆転してしまうのでは無いか。と恐ろしい事を頭の中で考えてしまい、そうはさせるかともう一度佐治の髪の毛を引っ張った。
「痛ェ」と呻く佐治の腕の中で体を反転させると、そのまま体重をかけてカーペットの上に押し倒す。不満げに睨む佐治を見下ろしながら「俺が上だからな」と宣言して、再び唇を奪った。
嫌だ。とでも言うように佐治も散々暴れまくり、お互い俺が上だ俺が上だと言い合いながらばたばたと端から見たら下らない攻防を続けていた。


そんな攻防を続けている間に、ゲームはいつの間にか電池が切れ画面を真っ暗にしていた。



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