※やんでれ勘トモ再び。
相変わらずトモミちゃんが酷いめにあってますが愛はあります。重いくらいにあるんです。













本日のくのいちの実習の内容は町の男を引っ掛けて奢らせるというもの。

高価な物であればあるほど、点は良いので皆頑張っていた。捕まってしまった町の男性方には合掌せざるを得ない。斯く言う私もここぞとばかりに普段なら手の出せないようなものを買っていただいたのだけど。


報告を終えて、風呂にも入った。後は寝るだけだと部屋に向かおうとしていたら尾浜先輩に出会した。明日は休みだから夜更かししようと大量のお菓子を見せてきた先輩に苦笑い。だめかな?なんて首を傾げる先輩にご一緒させてください。と返せばそれは嬉しそうに笑った。









――…先輩の部屋に入って座るように促される。久々知先輩は実習らしい。上級生は大変ね、なんて呑気に思う。私は、先輩方の年齢になるまで、此処にいることが出来るのだろうか。
思考の海に陥りそうになった私を不思議そうに見詰めている。なんでもないですと笑顔を見せればそっか、と頭を撫でられた。


……見透かされてる。


お菓子とお茶を渡され、ぽつぽつと今日あったことをお互い話す。面白可笑しく話していく先輩に相槌を打ちながら身を震わせる。なんというか、先輩は人のツボを突くのが上手い。
お互いひとしきり笑って、お茶で喉を潤わせた先輩がところでさ、と切り出した。なんだろうか。


「トモミちゃん」

「はい」


ことり。
湯飲みを置く音がやけに響いた。




「なんで他の男の匂いがするのかな?」




きもちわるいんだけど。




「…え…?」


光を失った瞳に、ひゅ、と息を呑む。

ゆらりとこちらに手を伸ばしてきたことに危険を感じて、先輩から離れようとする。が、その前に先輩が動いた。すばやく襟首を引っ張られて、布団に叩き付けられる。


「――――ぐ、っ…!」


痛くはなかったけど、衝撃に強張って反応できない身体に先輩がのし掛かってきた。腹に容赦なく体重をかけられて苦しい。競り上がってきそうなものを耐えて、睨みつけても先輩は無表情にこちらを見るだけだ。
抵抗しようにも両腕は身体と共に先輩の足に挟まれてる。

ゆっくりと首に手が伸ばされて両手で緩く絞められる。


「……っ、おは、ま…せんぱ…」


力は入れられてない。

入れられてないけど、そのことが逆に恐怖しか感じない。いつでも、その生を奪えるのだと。言われているようで、身体が震えてくる。どくどくと自分の脈の音が聞こえた。
…なんで、先輩は匂いがするなんてわかったのだろう。風呂にだって入った。それに、今日は実習だったのだ。忍たまには先輩しか会っていない。実習でも、疚しいことなんてしてない。貢がせた男にも、微塵も触っていないのに、匂いなんて。なんで。



「なんで?」



再度問いかけられて、説明するために必死に口を開く。なんで、なんて聞きたいのはこちらの方だ。歯がかちりと鳴ったのは仕方ないと思いたい。


「くのいちの実習で…!」

「ううん」


違うよ。
先輩が首を振る。


「なんで、トモミちゃんは俺だけのものにならないのかな」

「?……っ!」


ぐ、と手に力が込められていく。
暴れようにも、びくともしない。こういうとき、男女の力の差が憎くなる。


「、せん…ぱ、やめ…っ!」

「俺さ、心が狭いんだよね」


制止の声も無視して先輩が続ける。


「だからトモミちゃんが俺以外の人間と関わるの、とっても虫酸が走るんだけど……まぁそれは仕方ないって分かってるんだ」


でもね。


「トモミちゃんは俺と同じ想いを持ってくれないでしょ?」

「ひ、」


不公平だなぁって思って。

わらいながら先輩が込める力を強くしていく。苦しさに足を動かすけど意味もない。ぱくぱくと呼吸を求めて開けた口に先輩は愛しそうに口づけて舌を絡める。



「早くおちておいでよ」



そしたら、もっと幸せになれるよ。

ぐるりと視界が回って闇に落ちた瞬間に聞こえてきたのは、先輩の楽しげな笑い声だった。











***


…………ごめんなさい。

ヤンデレ下衆尾浜さん×トモミちゃんはどこにいったら会えますか。



- ナノ -