そっ…と触れた指先を捕まえて、口元へ持っていくと驚くほど彼女は肩を震わせた。

「怖いのか?」

暗闇のなかでも分かるくらい、泣きそうに歪んだ顔。ざわりざわりと胸の奥を不安で満たしながら問いかければ首をふって否定した。

「恵々子」

「怖くなんか、ありません…ただ」

そこまで言って口ごもる。視線がさ迷ってあちらこちらへと向けられるのが何となく面白くなかった。どうせなら、自分だけを映して欲しいなど…我儘だろうか。

「ただ?」

「ひどく、恥ずかしいだけなんです」

だからあまりみないでください。
暗闇だから顔色までは分からなかったけど、なるほど。よく目を凝らせば真っ赤に染まっていた。あまりにも可愛くて、息だけでわらう。

「私はひどく嬉しい」

「……っ」

首筋に口付ければ小さく震える。固く閉じられた目蓋に、薄らと涙が滲んでいるのを見てなんだかとても虐めたくなった。
大切にしたいのに、壊したいだなんて矛盾しているな。
笑いだしたい気持ちになりながらゆっくりと恵々子を布団に横たわらせる。柔らかい肢体から甘い匂いが鼻をくすぐった。女の子は、皆甘い匂いがするのだろうか。なんてぼんやり考えながらも、恵々子以外の女になど興味もなく。

「恵々子が、すきだ」

まっすぐに瞳を見つめていえば言葉に詰まったように恵々子が息を飲んだ。そしてふ、と細く息が吐き出されて、ひとつ瞬きをする。なにかを決意したような瞳がとてもきれいで、胸の奥が締められたような感覚がした。
細い腕が首に回される。くしゃり、と髪が手のひらでかき回されるような撫で方がきもちいい。

「私にも、あなたを愛してる、と…愛させてください」

耳元で震えた声で紡がれる。柔らかい甘い声が耳から脳へと伝わることが快感に変わるなんて初めてだ。驚きを感じながら恵々子を強く抱き締めて髪を掻き上げる。
もちろん、という返事は、口づけすれば伝わるだろうか。

そんなことを思いながらゆっくりと装束に手をかけた。








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小平太難しいですね。



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