「七松先輩の手は、大きいですね」
己の手を小平太の手に重ねながら恵々子は首をかしげた。
「そういう恵々子の手は小さいな」
小平太の手に隠れてしまうほどの小さくて細い手は、「女の子」そのものだ。
くノいちを目指しているため、普通の女の子よりも傷だらけなそれに小平太は指を這わす。恵々子はくすぐったそうに肩をすくめ、くすくすと笑う。
「先輩、くすぐったいです」
「……傷だらけだな」
痛くないか。
問えば恵々子はちっとも、と首を振った。
「そういう先輩こそ、傷だらけですよ」
「私は男だからな」
だから構わない、という訳ではないが少々の傷など気にはしないものだ。
「あまり、無茶しないでくださいね。心配です」
「それは私の台詞だぞ」
「……お互い、思うことは同じですね」
「そうだな」
笑いながら恵々子は小平太に寄りかかる。甘えるように擦り寄る姿に胸の奥が暖まるのを感じながら小平太はそっと恵々子を抱き締めた。
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