いつからか、部活も終わって、その帰り道。みんなで揃っての時もあったし、気の向いた者のみで一緒にアイスを食べる習慣がついていた。

今日も何となくで集まった僕と黄瀬くん、それから緑間君の三人で、毎日のようにお世話になっているお店のドアをくぐった。

僕はバニラアイスが一番好きだ。だから買うものはいつも決まっているし、そうなると必然的に待たされる側になる事が多かった。待たせる側は大体決まっているが、今日一緒に来た黄瀬くんは特に何を買うかを迷って時間が掛かる事が多い。たった一人、外でアイスを黙々と食べるのはなんだかさみしいので、あーでもない、こーでもないとうんうん悩む黄瀬くんを観察して待ち時間をつぶす事にした。

どうやら今日は定番のチョコと新作の二択のようである。黒子っちはもう決めたんスか?と少し困った顔で聞かれた。正直に、君待ちです。と答えれば焦りの色が濃くなってしまった。もうこの際、紫原くんのように二つとも買えばいいのでは、と思うがどうやら彼は買うものは一つだけと決めているらしい。学業と部活の合間をぬってモデル業も熟しているから僕の知らない色々な制約でもあるのかもしれない。あの、悩むのは分かりますけど、そんなに手に持っていると溶けますよ?

「お前はいったい何時まで選ぶ気なのだよ」
「緑間っちももう決めたんスか?!」
「もうお会計まで済んでいるのだよ。早くしろ。オレのアイスが溶ける」
「あ、あと少しだけ!」
「緑間くんも、いつものなんですね」

声がした方を振り返れば、いつの間にか会計まで済ませてしまった緑間くんが呆れ顔で立っていた。右手に握られたそれをちらりと一瞥する。すぐに食べるので袋にシールを貼っただけのアイスは見慣れた『あいすまんじゅう』と書かれた和風アイスだ。普段、缶でも飲んでいるのを見ますけど、本当好きなんですね、おしるこ。この場合小豆が、でしょうか。

「またそれって…よく飽きないっスね」
「食べたいものがないのだから仕方ないだろう。下手に冒険して不味いのを食べるのは御免なのだよ」
「アイスにハズレなんて無い気がするんスけど…」
「そんな事より、いい加減決めたのか」
「あ…っと、…んじゃ今日はこっちで!黒子っちの分もついでに払ってくるっス」

待たせたお詫びといって、黄瀬くんは僕がいつも買うアイスを持ってレジの方向に走って行ってしまった。あとでお金を返さなくては。…それよりもまず気になる事が。

「緑間くん」
「なんなのだよ」
「いつも君が同じものを買うのは、僕はてっきりそれが好きだからと思ってましたけど、違うんですね。本当は何のアイスが食べたいんですか?」
「そんな事か。決まっている。お抹茶、なのだよ」
「…、おまっ……」
「モナカタイプのやつだ。それなら手も汚れんしな。以前は見掛けたんだが、最近はバニラ味しかないようなのだよ。だから…、なんだ?」
「……いえ、なんだかすごく…、君らしいですね」

お抹茶、という彼の言い方に妙な引っ掛かりを覚えたが敢えて見ないようにした。いちいち言い方一つ気にしていたらキリがないとはまさにこの事だ。
僕の歯切れの悪さに怪訝な顔をした緑間くんが視線で問う。それから逃れる為に僕は黄瀬くんの後を追うことにした。お金も、返さなくてはいけませんしね。

「おい、黒子、言いたい事があるならばはっきりと、」
「断じて何もないです。それより黄瀬くんも戻って来ましたし遅くなる前に帰りましょう」
「待て、なんださっきからその含みのある言い方は!」
「だから何もないです」
「二人ともアイス溶けるっスよー?」










ちょいちょい真ちゃんは言葉遣いがおかしいとかわいい。
てかもうキセキみんな頭ぐりぐりしてやりたい。


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