緑間真太郎はメール無精である。
送ったとしても返信なしなんてのはザラだ。極端に返信率が低いだけなのか、はたまたメール嫌いか、或いは単に機械音痴か。性格から考えて、面倒くさくて返信しない、というのは考えたくない。

といってもアドレスを交換してまだそんなにやり取りをしたわけではないんだけど!

でもくだらない事とかまだちょっと面と向かってじゃ言いにくい事とかをだらだらメールでしてみたいっていうささやかな夢があったんです、最初の頃は。

けれど結果はこの通り。
おかげで携帯の送信箱に溢れかえる一方通行な緑間宛のメール。
対して受信箱には交換して以来待てど暮らせどお目見えしない、アイツからのメール。
正直受信拒否されないだけマシだろ?むしろアドレス交換出来た事自体凄い進歩だって!なんて自分自身を騙していないとめげそうになった。


つまりはこんな限りなく望み薄い状況で、もしかしたら一生返ってこないんじゃ…。とまで疑い始めた時に突然メールが来たりなんかしちゃったら、誰でも一時停止するとおもうんだよな。ちなみに驚くことなかれ、俺が送ったものへの返信とかではなく、あっちからの自発的送信メール。

(……初、受信メール…!)

風呂上りでおざなりに濡れた髪から伝う雫はそのまま。携帯を一度閉じる。また開く。うん、見間違いじゃない。正真正銘、緑間からのメールだ。無意識に口からうわーと声が漏れていた。

メールを開く。
初期設定のまま、無意味な英字と数字の羅列。緑間のアドレス。交換した時にこいつらしいと妙に納得した覚えがある。なんだか少し懐かしいと感じるくらい返信がなかったんだなと思うと少々落ち込んだが、そんな些細な落ち込みはメールの中身の衝撃にいとも簡単に意識の隅に吹き飛ばされた。

『明日、付き合って欲しい事があるのだよ。いつもの分かれ道近くの公園に朝7時に来い。遅刻は許さん』

改行も絵文字も何もない簡素なメールだがどうでもよかった。おいおい、いきなり来た初メールの中身が初お誘いメールとはどういう事ですか緑間さん是非行きますとも!


悲しいかな、完全に舞い上がってしまっていたオレは次の日に来る悲劇を知らずのん気にメールでもあの口調かよマジウケる!と文面を見返しながらニヤついていたのである。
出来ることなら、その時のオレに一つ忠告してやりたい。

人生そんなに甘くない。



「高尾、もっと急げ。これでは試合が終わってしまうとさっきから言っているのだよ」
「だぁー!!うるっせ!だから、全速力って、んだろ!オレ、ばっかり、漕ぎっぱなしで、辛いんだよ交代、しろ!」
「フン、じゃんけんに負け続けるお前が駄目なのだよ」
「…くっそ!ムカつく!!次、ぜってぇ勝つ!見てろよ緑間ァ!」










ログその1。無論この後高尾は置いてきぼりである。
公式チャリアカー誕生の秘密がまさか言い出しっぺの法則なんて…!



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -