※本屋パロ






懐にちょっぴり潤いを補充したくて。学業の合間をぬって始めたバイトも漸く様になってきた。ホンネとタテマエが昔からそれなりに出来ていたもんだから、かなりの営業スマイルだと思う。(営業って形容詞がつくけどね)
職場は所謂有名な系列店の本屋。ぶっちゃけるとレジさえ打っていればいいでしょ!なんて思っていたけど…社会ってそんなに甘くない。疲れはするけどそれに比例して満足感も得られるから満更でもないかなってのが今の心情。

で、やっぱり最初の頃はいろいろ珍しいお客様とかに反応してた。けど、だんだん数を熟す内に、おぉ〜、ぐらいのうっすーい反応(勿論心の中で)になりつつあった筈が、久々に顔を引き締めたりした。

まぁ待て。
お客様が何を買おうとそれはお客様のプライバシーだし、それを笑うとかはやっちゃったらいけない事だし毛頭そんなつもりはない。ただ、なんていうか、一回見たら絶対忘れないなって位のインパクトを持った人だった。

学ランでメガネした真面目そうな高校生。ここは普通だな。
インパクトその1、まずは容姿。オレも平均身長よりは高いんだけどその眼鏡君はずば抜けて高い。きっと身長順で並んだら確実に一番後ろっしょ!て位高い。でもがっちりした感じはない。すらっとしてる。とにかく高いって感想が強い。あと、髪の色が緑色。結構集客数が多い店舗だけどそうそう見掛けない。しかも眼鏡に隠れているけど目の色まで同じ緑色っぽいし天然モノだよな…?

インパクトその2、お買い上げ商品のラインナップ。月バス。部活でバスケやってんだろうね。その有り余る身長を優位に使いこなせそうだ。次に何やらタイトルからして小難しい新書。あぁ好きそう。オレなら3ページ読み終わる前におねんねするわ。もう見た目だけの勝手な予想だけど「得意科目は理数系です」とか言っちゃいそう。てか高校生で新書買っちゃう時点でオレ的がり勉ちゃんイメージ。んでラストは女性向け占い雑誌だ。なんだよこの組み合わせ!ってもしオレがこの眼鏡君のダチだったら即突っ込みを入れたに違いない。もしくは大爆笑。
実は間違えた、とか…?
深読みしつつ、レジに通して確認してみた。

「以上3点ですね?」
「はい」
「あ、ではお会計1938円です」

占い雑誌は間違いじゃないらしい。えぇーマジかー!堂々としてるから逆に疑ってしまった自分スイマセンみたいな。

そしてインパクトその3、何故か眼鏡君の左手の指全部が、何かでぐるぐる巻きだった。身長や商品にばかり目がいっていたもんだから、財布を取り出した時に少しばかりぎょっとしてしまった。色から察するに包帯かテーピング、か?指5本、全部怪我してんのかなとも思ったが、買った本が本だからもしかしたらおまじないの類いかもしれない。あれ、気になんねぇのかな…。


もうとにかくオレはこの時目の前の眼鏡君に興味津々だった。今まで出会った事のない人間だった。ポイントカードをレジに通した事で映し出される名前をちらりと見る。『緑間真太郎』…っぽい。真太郎ってあたりが。つか名前と髪の色の繋がりってなんだろ。気になるなー。うお、高1!?見えねー!ちょい前まで中坊とか信じらんねぇ…。

心の中でぺらぺら自問自答してても手は勝手に動くもので、手早く会計と袋詰めを終えて商品を手渡す。また来てくんねーかなって期待も込めて、ありがとうございました!って言ったらちゃんと目を見返しながらありがとうございましたって小さく会釈してくれた。うわー今時珍しい真面目で律儀ないいやつだ。結構不思議ちゃんだけど。

後ろ姿を見送って、丁度レジに戻ってきたバイト先の先輩である笠松さんにすかさず今の眼鏡君の話をした。

「あー、あいつか。時々来るぞ。大体いつも同じような時間だな。占い雑誌買ってくし目立つしでよく覚えてる」

あんまりお客さんに興味持たない笠松さんも覚えてる位だからやっぱり強烈なんだなって再認識した。曰く、普通のお客様よりは来店頻度が多いらしいから、次のシフトでもオレがレジ打ちの時に来ないかなって期待する。マジで今度はどんな商品買うのか気になって仕方なかった。

店内を出ていく後ろ姿をもう一度見る。
あ、本と一緒に袋に入れといたレシート取り出してる。レシートは財布の中に収納派だったらしい。ミスったな。次回はちゃんと手渡してやろうと思う。











高緑の同年齢だからこその上下関係が萌えるけどその要素を敢えて省いたらどうなの(副題)

もはやただの趣味丸出し。きっとわたしだけが楽しい。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -