「すみませんがポチくんをお願いしますね」

「はーい。行って来まーす!」


締め切り明けでよろよろになってしまった本田さんの変わりにポチ君を散歩に連れ出すことになった。
お天気もいいし、散歩にはもってこいだね!




   4月29日(木)




「ちょっと遠くまで歩くけど、散歩がてらワンコが沢山集まる大きな公園に行ってみない?」

「ん、いいな」


私の腕に抱かれたポチくんの頭をデレデレとした顔で撫でるアーサー。
可愛いもの好きだよね、アーサーって。


「ハッ……べ、べつにデレデレなんかしてないんだからな!!お前がポチと居る姿見て微笑ましいとか思ってないんだからな!!」

「私かよ。ツンデレが仇に出てるよアーサー」

「うううううるせーよバカァアア!!」

「マジでお前気持ち悪いぜ」

「テメェに言われたくないんだよ!!」


腕からポチくんを下ろし仲良く喧嘩を始める二人を無視して公園へと歩き始める。
慌てた様子で後をついてくる二人だったが私の見えない背後で抓り合いしているようだった。
仲いいんだか悪いんだか…。というか本当は仲いいんじゃないのこの二人…。

しばらく歩き公園に着くと犬連れの飼い主さん達が楽しそうに会話を楽しんでいる姿が見えた。
ここならポチくんを放し飼いにしてあげても大丈夫そうだね…


「ほらポチ君、おもいっきり遊んでいいよ!」

「きゅん!」

「おぉー、楽しそうだな!!」


リードを離してあげると嬉しそうに芝生の上を走りまわる。
嬉しそうだなぁ…


「よーしポチ、ボール投げるから取ってこい!!」

「ボール持ってきてたんだギル」

「ポチとの散歩の時は常備だぜ!!いくぞっ!!」


ギルが遠くに投げたボールを勢い良く走り出し追いかけて行くポチくん。
全力投球しすぎだよギル…めっちゃ遠くまで行っちゃってんじゃん…


「それにしてもこうやって見ると色んな犬が居るんだな」

「最近はちっちゃい犬が多いよねー。ティーカッププードルって言うんだっけ?手の平サイズの」

「ティーカップに入るのか…!?」

「みたいだよ。あんまり小さいとふんずけちゃいそうだよねー。二人も足元には気をつけて」

「こえー事言うなよ!!」

「事実じゃん」


二人がキョロキョロと足元を見ていると、ボールをくわえたポチくんが尻尾を振って戻ってきた。
もう一度投げて欲しそうにボールをくわえて見上げる姿に三人声を揃えて「うちの子が一番可愛い」と悶えた。


「ワン!!」

「うぎゃっ!!」

「名っ!!」

「あいたたたた…」


いきなり背中に圧し掛かった重みに思わずバランスを崩してしまった。
地面が芝生で良かったよ…


「急に犬が飛びついて……って、あれ…?このワンコもしかして…」

「こら!!アスター!!」

「あ、やっぱりルート君」

「名…!?」


駆け寄って来たワンコの飼い主事ルート君の驚いた表情。
ルート君も来てたのかぁ。


「お前たちも来ていたんだな」

「うん、本田さんの代わりにポチ君の散歩にね」

「兄さんはどこだ?」

「あれ、さっきまでここに居たんだけど…」

「あいつならポチとお前の犬連れてあっちに転がって行ったぞ」

「あ、ほんとだ。二匹にじゃれつかれて転げまわってる。幸せそうな顔しちゃって…」

「まったく兄さんは…。それよりすまなかったな、アスターがいきなり飛びついてしまって…」

「ううん。でもよく私が居るって気付いたねぇアスターも」

「こいつらはお前によく懐いているからな」


可笑しそうにほほ笑んだルート君の足元に居た残りの二匹のワンコも私の足にしがみつくように「遊んで」とでも言いたげな表情を見せてくる。
可愛いなぁこの子達も…!!


「ルート君は一人?」

「いや、フェリシアーノと一緒に来たんだがナンパに言ってくるとか言ってどこかに言ってしまったんだ…」

「あいつらしいな…。それにしても暑くないか…?」

「お天気いいもんねぇ。ちょっと木陰で休憩しようか」

「俺も一緒に構わないか?」

「もちろん!」


公園の木陰に入り適当に腰を下ろす。
慌ててハンカチを広げたアーサーが「服が汚れるからこっちに座れ!」と私の腕を引いて地面から無理矢理立たせた。


「ありがとう偽紳士」

「偽じゃねえよ馬鹿!!正真正銘の紳士だ紳士!!」

「偽じゃないですかエロ眉毛」

「エロって言うなエロって」

「それにしても気持ちいいねーここ。昼寝しちゃおうかな」

「な、なら俺の膝貸してやってもいいからな…」

「ルート君膝貸してねー」

「あぁ」

「………ぐずっ」


木を背にして本を開くルート君の膝に頭を乗せる。
うーん、芝生が気持ちいいなぁー…。


「あっちぃー!!」

「おかえりーギル」

「うおっ!!なんだよお前ルッツの膝使いやがって!!」

「だって気持ちいいんだもん」

「汗だくだな兄さん…」

「汗臭いからこっち寄らないでね」

「…一人楽しすぎるぜー!!」



四人と四匹でまったりと木陰でのんびりと過ごす。
すごく素敵な休日だよねえ…。
本田さんも元気だったら一緒に来れれば良かったんだけどなぁ。

それからしばらくして、ひとしきりナンパを終えて戻ってきたフェリ君と皆でルート君行きつけのドッグカフェに入った。
犬用のメニューなんかもあってついつい色々頼んじゃったなぁ…。
アーサーが「これ俺にも作れそうだよな」と言った時は全力で殴り飛ばしてやりたくなったけど。



.

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -