皆様お久しぶりです。本田菊です。 いかがお過ごしでしょうか。私は相変わらず毎日漫画を描く作業に明け暮れています。 漫画こそ我が人生。二次元こそ私の生きる場所。そう私の中に渦巻く本能が今日も「萌えを!!俺に萌えを!!萌えで溢れる世界を!!」と叫んでおります。 楽しみに待ってくださっているファンの皆様の為にも私は本能に従い、この仕事である漫画を今日も順調に描き続けています。 そう…じゅん、ちょうに…… 「本田先生〜。原稿まだっすか?早くしないと間に合わないっすよー。真面目にやってんすか?真面目にやってないっしょ先生〜」 4月28日(水) あぁ、この担当早く他の人に変わってくれないでしょうか…。 担当がこの小笠原田吾作(25)になってからと言うもの私のストレスは溜まる一方。 もう一方で私の家の食糧が消えるばかり。 はぁ……こんな時は名さんに癒されたいですね…。 あの笑顔で「本田さん(はーと)」もしくは「お兄ちゃん(はーと)」と呼んでいただければストレスも一気に吹き飛ぶのですが…。 「あの、少し気分転換にポチくんの散歩に行ってきてもよろしいでしょうか…」 「ああ、ポチ君の散歩ならさっき俺が行ってきましたよ」 「え、いつの間に」 「本田先生がトイレに言ってる間に」 「早すぎますよ。どんだけ早いお散歩なんですか」 「庭を一周してランデブーっすよ!!」 「それ散歩じゃありませんよ」 逃げられそうにありませんね…。 仕方ありません、潔く仕事に集中しましょうか… ―ピンポーン 「おや、お客さんのようですね…。ちょっと行ってきますのでそこにあるチーズ蒸しパンは絶対に食べないでくださいね」 「本田先生」 「なんですか」 「それは遠まわしに俺に食べてほしいという事っすよね…?」 「そんなフリは送っていませんよ」 食べるなと言ってもきっと食べられてしまうのでしょうね…。 もう玄関に行ったついでに逃げ出してしまいましょうか…。 「ふぅー…。お待たせしました。どちら様でしょう…?」 「こんんばんはー本田さん!」 「名さん…!」 「この間おはぎいただいた時にお借りしたお皿返しにしました。今時間大丈夫でした?」 「ええ、構いませんよ。わざわざどうもありがとうございます」 なんたる神のお恵みでしょう…!! まさか名さんの方から訪ねてきてくださるだなんて…!! お風呂上がりなのか心なしか乾ききっていない髪とフローラルの甘い香りが私の理性を揺るがしますね… あぁ名さん今日も可愛いです。名さんを産んでくださった両親と育ててくださった祖父母と名さんのDNAに感謝します。 「本田さん、気持ち悪いからそういう事言うの自重してくれませんか」 「あれ、今の声に出てましたか?」 「出てましたよ。なんですかDNAに感謝って気持ち悪いにもほどがありますよ」 「冷たい視線の名さん、素敵です」 「いっぺん死んでください本田さん」 名さんの人を殺せそうな冷たい視線のお陰でとても元気になれました。 つくづく自分と言うのは単純な生き物なのだと実感致しましたよ。 さあ、残りの原稿も気合で仕上げていきましょう…! ![]() ![]() ![]() 「ったく本田さんはもう…」 「皿届に行ってきたのかよ?」 「行ってきたよー。なんか気持ち悪い事言われた」 「いつもの事だろ」 「それが当たり前になってるのが凄く嫌なんですけど…!!前はあんなじゃなかったのになぁ本田さん…もっと冷静で優しくって声を荒げる所なんて見たこと無かったのに」 「今では息荒くして近寄って来るからな」 お風呂上がりに上半身裸でビールを飲むギル。 風邪引いても知らないぞー…。 「ぷっは!親父の送ってきたビール美味すぎるぜ!!」 「昨日もパパさんから連絡来たよー。元気でやってるのかって」 「おお!俺様はいつでも元気だぜ!!」 「心配してるのはギルじゃなくて私みたいだけどね」 「マジかよ!?ったくあの親父…」 「変わったよねぇ、パパさんも」 「俺らが知らなかっただけでアレが本来の性格なんだろ。ルッツによく似てやがるぜ」 「それは私も同意見。心配症なとこなんで親子三人そっくり」 「それ俺も入ってんのかよ…」 「もちろんだともギルベルト君。ほら、髪の毛ぐらい乾かしなさい」 「ん。」 ビールの瓶を口に咥えたままのギルに肩にかけていたタオルを突き出させる。 やれって事ですか…。ったく私はギルの召使いじゃないんだぞ…。 「しょうがないなぁもう…じっとしてるんだよー」 「おー…」 自分でやるのが面倒なんだか、単に甘えたいんだか…。 ソファーに座っているギルの隣に腰を下ろし、タオルで髪の水分をとっていく。 ぽすん、と肩にギルの額が乗せられた。 「乾かしにくい」 「…なぁ」 「なんですかー」 「……きしめても…」 「なんだってー?」 「だから、抱きしめてもいいかって聞いてんだよ」 急に何を言い出すんだろう、このプー太郎は。 視線が届く範囲でギルの顔を横眼で見ると、耳まで真っ赤になっていた。 恥ずかしいならわざわざ聞かなくても勝手に抱きしめればいいものを…。 こっちまで恥ずかしくなるじゃないか… 「いいよー」 「おう」 ぎこちなく背中に腕が回されて、腰の辺りで組まれた腕にギュッと引き寄せられれば自然とギルの胸に頬を寄せるような形になってしまった。 …なにこれ、恥ずかしいんだけど…。 「ふぁー…」 「なにその声…」 「いや、たまにはこういう事しておかねーと…」 「なに」 「なんつーか…充電みたいな…」 「充電しなきゃいけないほど動いてないでしょーが」 「ちょっとぐらいいいだろ。嫌なのかよ…?」 「別に…嫌じゃないけど…」 まぁいいか。私も充電になったし、ね…。 確かにたまにはこういう事をするのもいいかもしれないんんて…恥ずかしくて言えないけど。 明日からゴールデンウイーク突入だもんね。 実家に帰るのは2・3・4日だから明日から三日間は予定も無いしギルと気ままに家でのんびりするのもいいかもしれない。 こうしてまたいつもの生活を送っていると、ふと数か月前の自分を思い出す。 ギルが居なくなって、心が抜け落ちたみたいになって。 もう二度とこの幸せを味わう事が無かったらどうしようと何度も思った。 だけどこうしてギルとまた一緒に居られるようになって本当に良かった。 思い出す度ギルが愛しくなって、皆に感謝して。 そしてまたいつもの幸せをかみしめる。 そんな日々が、ずっと続けばいいな。 . |