『元気でやっているか』 「あの、パパさん」 『どうかしたか?』 「今仕事中なんですけど」 『そうか、すまない。それで、元気でやっているのか?変わりは無いか?』 人って何かをきっかけけに変わっていくものなんだと改めて思った。 どうやらギルとルート君の心配性は父親譲りらしい。 4月27日(火) 「ご心配なく。ギルもルート君も元気ですから」 『あぁ。ルートヴィッヒとは昨日連絡をとったばかりだ。ギルベルトの事は元々心配はしていない』 「じゃあ何すか」 『お前はいつドイツに来られそうなんだ?』 「私の心配!?私じゃなくて息子の心配してあげましょうよ!!なんかルート君には甘いのにギルには素っ気無いし!!」 『そんな事は無い。以前あいつの好きなビールを送ってやっただろう?』 「冷蔵庫に入りきらなくて友達にいくつか譲りましたよ。ダース単位で沢山送らないでください」 『そうか。次は気をつける事にしよう』 ギルとルート君のお父さん…。 こうして暇を見つけては時差も気にせず電話をしてきてくれるんだけど、何故かギルではなく私に電話をかけてくる。 いや、まぁ仲良くしてもらえるのは嬉しいんだけどさぁ…。 ルート君とお父さんが和解し合ってからしばらくたって、春休みの間にルート君はドイツに帰ってお父さんの元で弁護士の仕事について色々と教えてもらったらしい。 その間にも頻繁にルート君と連絡を取り合っていたが、最初は少し不安そうな声をしていたけど日が経つに連れ楽しそうな様子が彼の言葉から伺えたので私もギルもホッとしたいた。 『あいつには弁護士としての素質がある』 「血筋ですね。こっちでも大学で勉学に励んでるみたいですし…」 『早く卒業してこちらに帰ってくることを祈ろう』 「そうですね。だけどルート君が遠くに行っちゃうのは嫌だなぁ。私ルート君大好きですし」 『その時はお前もこっちに来て共に生活すると良い』 「えー、嫌ですよー…仕事まだまだしたいですし」 『しかしもう25だろう?日本の女性は結婚が遅れると世間からはあまり良くない目で見られると聞く。早くギルベルトと籍を入れるんだ』 「悪かったな25歳で!!っていうか籍とかありえないですからね!!そういう期待はしないでください!!」 『ならルートヴィッヒとならどうだ?あいつも満更ではなさそうだが…』 「いや、そういう問題じゃないんですけど…。っていうかもう電話切りますよ。冒頭でも言いましたけど今仕事中ですから」 まだ向こうが何か言いかけている所をプツンと強制終了させた。 まるで口煩い父親みたいだなぁ、ギルのパパさんは…。 実際にパパさんも私の事を娘のように思っていると言っていたし… 昔友達が「お父さん煩い。うざい」と言っていたのを少し羨ましく思っていたことがあるけど今になって少し気持ちが分かるような気がしてきた。 まぁ、心配してくれるのは嬉しいけどね… 「こんばんはー!」 「あら、いらっしゃい名!」 「こんばんはーエリザ!いつものコーヒー貰える?」 「家庭用よね?ちょっと待っててね」 相も変わらず女神のような微笑で迎えてくれたエリザに自然と頬が緩む。 今日もエリザは可愛いなぁ… 「ニヤニヤと笑うんじゃありません。お下品ですよ」 「こんばんはーローデさん。演奏会の練習進んでますか?」 「ええ、お蔭様で」 「ゴールデンウィークが待ちきれないなぁ…。また皆で聴きに行きますね!」 「今度は居眠りなんてするんじゃありませんよ」 「ぜ、前回もちゃんと起きてましたよ…ローデさんの演奏の時だけ…」 「まったく、お馬鹿さんが…」 持っていた楽譜でポンと軽く頭を叩かれた。 暴力反対と訴えれば、次は「お黙りなさい」とチョップを入れられる。 貴族チョップ何気に痛いんだよなぁ…。 「そういえばルート君どうしてます?一週間以上会えてないんですけど…」 「元気にしていますよ。学校の方が忙しいとかで朝早くから夜遅くまでバタバタとしているようですが…」 「大変だなぁルート君も…」 「と、言っても新入生の歓迎会だとかで遊んでいる事も多いようですよ。この間なんて夜中に帰ってきたと思ったら玄関でうつ伏せになって寝ていましたから」 「ルート君が酔っ払うまで飲むなんて珍しいなぁ…」 「ベルリッツ達が暖めてやっていたので風邪はひかなくてすんだようですね」 ワンコ三匹に温められるルート君…可愛いな…!! なんで写真撮ってくれなかったのローデさん…! 「そういえば演奏会なんですけどまだチケット余ってますか?うちの上司も聴きに行きたいって言ってるんですけど…」 「構いませんよ。明日用意しておきますので取りにいらっしゃい」 「ありがとうございます」 ゴールデンウイークの最終日に行われるローデさんの二回目の演奏会。 次は以前より演奏項目が多いらしく今から張り切っているらしい。 なんだかんだ言ってるうちにもうゴールデンウイークだもんねぇ… また皆で実家に帰る予定になっている。 今回はメンバーも増えて慌ただしくなりそうだなぁ…。 ちゃんと予定をたててお婆ちゃんに連絡しておかないとね…! . |