「名さーん!これ取引先の方からいただいたんですけどお一つどうですか?」

「シュークリーム…!美味しそう〜!もらってもいいの?」

「もちろんですよ!」

「ありがとうティノ君〜!」


ティノ君に差し出された箱の中からシュークリームを一つ手に取る。
さりげない気遣いでコーヒーを淹れてくれたスーさんとティノ君と三人でほんの少しのおやつタイム…

ああ…しあわ、


「なぁに美味そうなもん食ってんだっぺー!いただきっ!」

「……あ……」




     5月13日(木)
     



上から伸びてきたゴツゴツとした骨ばった手に私の手にあったシュークリームが奪われた。


「ぁああああああ!!!何するんですかデンさぁあああん!!」

「んー、ちと甘すぎんがまぁまぁの味だべ」

「ぎゃあああ私のシュークリームゥウウウ!!」

「で、デンさんダメですよぉ〜名さんの食べ物横取りしちゃあ…」

「行儀わり」

「んだっぺ〜、仕事サボってまたこんなもん食ってったらブクブク太んべ?」

「ふ、太ってなんか…な、いですよ…」

「そ、そうですよ名さん!僕はスレンダーな女性よりちょっとふくよかな女性の方が素敵だと思いますよ!」

「んだ。その方がやわらけぇ」

「え、それフォローになってないよね。結局太ってるって事だよねそれ」

「名、あんこの言う事なんて気にすんでねぇ」

「の、ノルさんっ……!!」

「この国ではむちむちプニプニ萌えっちゅー言葉があっでだな、」

「いやぁあああ!!ちょっ、どこからそんな言葉覚えてきたんですかノルさんぁああん!!」

「お前んとこの近所の漫画家んとこだべ」

「ええええ!?なにちゃっかり本田さんと仲良くしてるんですかもう」

「いいなぁ…僕も今度漫画見せてもらいに行きたいなぁ。ね、スーさん」

「んだべ」

「お願いだからやめて……」


そろそろ自重してくれないかなぁあの爺。

ティノ君にもう一つシュークリームをもらって今度はしっかりと自分の胃袋の中におさめた。
うーん、やっぱり甘いものを食べるとイライラがおさまるなぁ…。





  





「よいしょっと」

「何やってんだ?」

「んー?そろそろ暑くなってきたし衣替えしようかなぁと思ってね。何枚か半袖出しとくよー」

「おう!」

「今年もこのドピンクのクマちゃんTシャツの出番が着ましたなぁ…妙にギルに似合ってて好きだよ私は」

「嬉しくねーっての」


去年ギルが良く着ていたピンクのクマちゃんTシャツを膝の上に広げると、ギルが後ろから覗きこむようにして私の肩に顎を置いた。
重い。


「うーん、新しい服買いに行きたいなぁ…」

「持ってるやつじゃダメなのかよ?」

「ギルは女心が分かんないやつだよねー。持ってても買い物を楽しむのが女ってものなんだよ」

「わっかんねぇ…まぁ俺くらいかっちょいい容姿のやつがこだわるならまだ分かるけどな!」

「…今日はベッドで一緒に寝かせてあげようと思ったけどやっぱりやめとくわ」

「なっ!?ちょっ、今の無し!取り消せ!」

「アウトだよギルベルト君」


数枚取り出した半袖の服を衣類用の引き出しにしまい、分厚いセーターなどをクローゼットの奥に追いやる。
コートなんかはクリーニングに出しに行かないとなぁ…。
明日の朝持っていけば夕方引き取りに行けるかな。


「おい!頼むから今の取り消してくれ!!いや、お願いします!!」

「どんだけ必死になってんのこの子!?ええい腰に抱きつくなぁあああ!!」

「たまには俺様にも寝心地良い場所で寝かせろ!!」

「あーもう…ったく…。じゃあ今度の土曜に私の買い物に付き合ってくれるのなら許可してやろう…」

「そんな事でいいのかよ?」

「うん。だってギルあんまりつきあってくれないじゃん。一緒に行きたくても本田ん家行って来るぜーとかで家にいないからいつもアーサーと二人で行ってたし」

「ふぁ…?」

「無自覚かよ…」


結局今週の土曜日に買い物に付き合わせるという交換条件により今夜はギルをベッドに招いてやる事になった。
前回も結局ベッドで寝られなかったからなぁ…相当悔しかったのだろう。

同じベッドに入って何やら楽しそうに「ベッドは最高だぜー!お前がどうしてもって言うなら毎日一緒に寝てやらねぇこともねーぜ!」と騒ぐギルに背を向けて一足先に就寝した。

こんなのと毎日一緒に寝てたら煩くて寝不足になる事間違いないだろうなぁ…。




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