「そろそろ届いたかなぁ、荷物…」

「何の荷物だよ」

「ほら、母の日の。お婆ちゃんが足裏マッサージ機が欲しいって言ってたから今日届くように注文しておいたんだよ」

「マジかよ!それ俺も欲しいぜ!」

「ギルは働いてもいないくせに足疲れないでしょうが」

「俺だって働いてるぜ?掃除に洗濯に洗い物に近所付き合いとかよぉ」

「…そういえばギル、最近下の階や上の階の奥様方に人気あるよね…。この間”名さんの旦那さんとってもいい人ね〜!いつもゴミ一緒に出してきてくれるのよ〜”って言ってた…」

「俺様は近所のアイドルなんだぜ!」

「うーん、いささかパシリにされているような気もするけどまあいいんじゃない?評判悪いよりは良いと思うよ」

「だろだろ!俺様超かっこいいもんな!」

「うわーもうなにこのナルシスト。うぜぇ」




   5月9日(日)




えばっているギルのおでこに軽くデコピンを喰らわすと「DVだDV」と言った。
なんならもっと殴ってやろうかと、そう思ったタイミングを見計らったかのように玄関のチャイムが鳴る。



「はーい、どちらさま?」

「僕。」

「アイス君!」

「家でデンが煩くて……ここで勉強してもいい?」


暑さで少し汗ばんだアイス君が重そうな鞄を抱えてやってきた。


「デンさん…アイス君は受験生なんだから静かに勉強させてくれればいいのにねぇ…。どうぞゆっくりしてって!ギルが居るから煩いかもしれないけど…なんなら追い出すから」

「大丈夫。デンよりはましだと思うし」

「そうだね」


可哀想になぁアイス君も…。
明日デンさんんにアイス君の勉強の邪魔しないように注意しておかないとね。



「おおアイス!なんだよ、遊びに来たのか!?」

「ううん。勉強しにきただけ」

「だったら俺様が教えてやるよ!」

「はいはいギルは大人しくイヤフォンつけてゲームでもしてましょうね〜。アイス君の邪魔したら今夜のビール無しにするから」

「マジかよ…」


漫画が積まれているテーブルを綺麗に片付け、アイス君んが勉強しやすいように整える。
さーて、私は何をしておこうかな。
折角アイス君も来てるんだし何かお菓子作りでもしましょうか。


「アイス君、何か食べたいお菓子とかある?」

「どうして?」

「暇だし何か作ろうかなぁと思ってね。アイス君何が好き?」

「名が作ったものなら何でも好きだけど…」

「あ、アイス君っ!!」


ああもうなんでこんなにいい子なのアイス君!
あまりの衝動に座ったままアイス君を抱き締めると少しよろけながらも背中に手を回してくれた。
いいなぁ…こんな可愛い弟が居たら幸せなんだろうなぁ…。

アイス君の感触を堪能した後、体を離して「それじゃあクッキーでいいかな!」と聞くと少し頬を赤くして「うん」と頷いてくれた。
よーし、アイス君の為にとびきり美味しいクッキー作っちゃうからね!

キッチンに立ち手際良くクッキー作りを始める。
クッキーはフランシスさんと作った事があるしきっと美味しく作れるはず!

数十分もすればクッキーもあとはオーブンで焼くだけとなった。
焼いてる間に少し休憩でもしようかな。


「名」

「んー?どうしたのアイス君」

「ここ分からないんだけど教えてくれる?」

「どれどれ〜?数学かぁ…」


あ、相変わらず難しそうな問題が並んでるなぁ…。
アイス君からシャーペンを受け取り、計算式を書きながら考えてみるものの答えが分からない。
っていうかこんな問題高校の時授業でやったっけ…?


「うーん…ここがこうなるから…」

「名でも分からないの?」

「わっ分からないわけじゃないんだよ…!?た、ただ…理数系はちょっと苦手と言いますか…」


な、情けない…。高校生に勉強も教えてあげられないなんて…
そうこうしていると、急に背中に重みがかかったかと思うと後から回された手によってシャーペンを握っていた手に大きな手が重ねられた。


「ここはこうやってこうすんだよ」

「じゃあここはこう?」

「おう。んで、こっちの問題はこれを応用して…こうだ」

「ああ、そっか」


スラスラスラ。
私の手ごと奪われたシャーペンで難しそうな問題をいとも簡単に解いていった。


「ギルベルトって頭良かったんだね」

「まあな!分からない事があれば俺様に聞け!」

「うん」


また黙々と勉強を再開しているアイス君の隣で固まってしまっていた。


「俺様が頭良くてビックリしたか?」

「うるさい。ちくしょう…ギルに負けた気がする…」

「そりゃ俺は小さい頃からスパルタで勉強させられてっからな!これくらい簡単すぎるってーの」


うっ…そうだった…。
ギルに負けるなんて悔しいなー…


「ギルそこ退いけ。重い。アイス君〜クッキーには紅茶が良い?それともコーヒー?」

「んー…紅茶」

「俺様はコーヒー!」

「ギルには聞いてねーよ」

「やべえなんかあいつ機嫌悪いぜアイス。むやみに近づくとぶっ飛ばされるぞ」

「黙れプー太郎」


アーサーがいつもやっているように丁寧に紅茶を淹れ、クッキーと一緒にテーブルに置いた。
アイス君は「すごく美味しい」って喜んでくれて、紅茶もまだまだアーサーのものには及ばないけどなかなか美味しく淹れることができた。
「まぁまぁなんじゃね?ルッツが作ったやつの方が絶対美味いぜ」とクッキーをすごい勢いで食べ続けるギルを地に沈めて残りの分をアイス君アイス君に持って帰ってもらった。
家でデンさんに全部食べられちゃわないといいけどなぁ…





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