「それじゃあ気をつけて帰るんだよ〜」

「今回もまたお世話になりました」

「そうだ名、プーちゃん」

「なんだよ」

「お婆ちゃん曾孫はプーちゃん似の女の子がいいわぁ〜」

「お、おう!!任せとk「余計な期待しなくていいから」




     5月4日(火)



お爺ちゃんとお婆ちゃんに手振って別れ、「まだここに居たい」とごねるアルフレッド君とフェリ君を宥めながらも帰路についた。

出発した時と同じ駅で各自解散した時刻は午後三時。
思ったより早く帰れたかな…。



「悪い、今から少し用があるから俺もここで別れる」

「了解。晩ご飯はどうする?」

「ん、遅くなるかもしれないから今日はやめとく」

「そっか。アーサーも疲れてるだろうしあんまり無理しないようにね」

「あ、あぁ…」


視線を合わせて微笑むと、顔を赤くして視線を反らすアーサー。
また昨日の事思い出してやがるな…。
その緩んだ口元をどうにかしろよエロ眉毛が。


「昨日からあいつ変じゃねーか?」

「さーね。帰りに本田さん家に寄ってお土産渡しに行くよー」

「おー」




  



「そんでな〜!名ちゃんの小さい頃めっっちゃ可ええねん…!!セーラー服が似合っててなぁ…あれで機関銃とか持ってたら最高に似合ってると思わん?」

「セーラー服と機関銃って…お前歳いくつだよ。っていうか帰ってきて早々お兄さんの家に来るとか何、そんなに暇なの?トニー」

「んなわけあるかアホ。ついでにお土産届けに来たっただけやっちゅーねん」

「ああそう…」

「ほんでな、俺の事怯えた目で見る名ちゃんが可愛くて可愛くてもう俺ウヒョーってなってもてな!!」


目の前に出されたクッキーをもぐもぐと食べながら自慢話を続けるトニーに重い溜息が漏れた。
って、結局名ちゃんの自慢話がしたいだけだろこいつ…。



「そういやフランシス、こないだ名ちゃんと一緒にプリン作ってたんやな」

「そうだよ〜。羨ましい?」

「そらな〜。髭ぶち抜いてやりたいぐらいやわ〜」

「…お兄さんたまにお前が本物の天然なのかそれとも裏があって言ってるのか分からなくなるよ…」

「何の事ー?」

「いや、もういいけど」

「まあそんな事はどうでもええねん。お前…名ちゃんとプリン作った日って…」



少し悲しそうな目をしたトニーの瞳に見上げられる。

その視線の意味を理解して、はにかんだような笑みを見せれば「お前がそれでええなら俺も何も言わんけど」と目を伏せられた。



「いいんだって。もう俺自身も忘れちゃってたぐらいなんだしさ」





  




「おやまぁお漬物にお米まで…。後でお婆様にお電話させていただかなくてはいけませんね」

「お婆ちゃん本田さんが来られないから残念だって言ってましたよ〜。いい話相手だからって」

「そうですね…私もお久しぶりにお会いしたかったのですが…。何せ次から次へと締め切りが迫っていて…。ああ、イベントに行きたい…」


よろよろと壁にもたれかかる本田さん。
今日も大変そうだな…。


「今夜は一緒に夕食どうですか?本田さんの好きな肉じゃが作りますから」

「な、なんと…!名さんの肉じゃががあれば私あと50年は元気で居られますよ…!!」

「ほんとどんんだけ生きる気なんですか」


感動で涙ぐむ本田さんを軽くスルーし玄関を後にする。
ギルは居間でポチ君と遊んでるみたいだけど…まぁ置いて行っても良いか。

さて、家に帰る前にあともう一件寄り道だ…!






―ピンポーン



「こんばんはー!リヒちゃーん、バッシュさ〜ん!」


バッシュさん宅の玄関のチャイムを鳴らす。
なかなか出てこないなぁ…。
確か二人とも普段は家に引き篭もってるって言ってたけど、今日はどこかに出かけているんだろうか。


「しょうがない、このお土産はまた今度渡「土産を置いてさっさと帰るのである」


ガラリ。
古びた戸が開き、中から顔を出した不機嫌そうなバッシュさんの姿。

って、居留守かよ!!


「あの、バッシュさん…。今お土産って聞こえたから開けたでしょ。居留守ですかアンタ」

「何か問題でもあるのであるか?」

「大ありですから!!もうなんなんですか!折角ご近所なんですからもっと仲良くしてくれてもいいのに!!」

「貴様と馴れ合うつもりはないのである!!」

「お兄様、いかがなさいました?」

「リヒテン…!!何もないのである」


奥からひょっこりと顔を出したリヒちゃんの姿に強張っていたバッシュさんの顔が緩んでいく。
相変わらずシスコ…いや、妹を大事にしてるんだなぁ…


「こんにちはリヒちゃん」

「ご機嫌麗しゅう、名さん。今日はどうかなさったのですか?」

「実家に帰ってたからお土産持ってきたんだけどねー。チャイム鳴らしたのにバッシュさんが出てきてくれなくって」

「まぁ。すみません、私も気づかなくて…」

「いいのいいの!今度からはちゃんと入れてくださいねバッシュさん」

「仕方ないのであるな…。リヒテンに免じて許可してやるのである」


バッシュさんはどんだけリヒちゃんの事大好きなんだ…。


「しかし今度からここに入るときは玄関の前で合言葉を言え!!吾輩が”ヤギ”と言ったら”チーズ”と答えるのであるぞ!!」

「なんですかその合言葉って!!っていうかなんでヤギ!?」

「お兄様は動物が大好きなのです。その中でもヤギは特に…。お兄様のお部屋にヤギグッズが沢山置いてあるのを見かけましたので」

「なっ、なっ…!!け、決して子ヤギちゃんグッズを集めているわけではないのであるぞ!!」

「子ヤギちゃんですか…」

「そ、そんな目で吾輩を見るなぁああああああああ!!!!!」

「ぎゃぁあああああ!!なに銃なんて物騒なもの出してんですかっていうかどこから出したのそれぇええええ!!!」

「土産を置いてさっさと帰れぇえええええええ!!!」

「理不尽ーーーっ!!」



結局のところお土産だけを置いて無理矢理追い出されてしまったわけですが…。
ほんとにバッシュさんは相変わらず短気と言うかなんと言うか…。

だけど以前からは想像もつかない程に仲良くなれたような気がするなぁ。
リヒちゃんとも一緒にお買い物したりもしてるし。

今度バッシュさんをアンダンテに誘ってみようかな。



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