※この作品は史実要素を含みます。ご注意ください。






兄貴の忘れ物を届けにやってきた某国会議場。
今日はここで世界会議をやってるらしいんやけど…。
あのアホ兄貴どこにおんねやろ


「あ…」

「あ」


最悪最悪最悪。よりによって一番会いたくない奴と顔会わせてもた。
あの太い眉毛見てたら昔の記憶が蘇ってきてほんま腹立ってくるわー。
あー、今すぐロマに癒されたい。


「なんでお前がここにいるんだ?」

「はぁー。今日もええ天気やなぁ。あ、蝶々や〜」

「あからさまな現実逃避してんじゃねーよ野蛮女!!」

「あぁ?お前になんかに用ないわ。ほなさいなら」

「待て」


頼むものではない、命令染みたその言葉と共に強く掴まれた右腕。
相手は言うまでもなくクソ眉毛で、捕まれた腕から過去の思い出したくもない記憶がフララッシュバックされてきた。


「…なにか?」

「何しにここに来た」

「兄貴の忘れ物を届けに」

「そんなもの受付にでも渡して置けばよかっただろ」

「国の重要な書類をそんな事できるわけないやろ」

「その大事な書類を忘れたお前の兄貴もどうかと思うけどな」


今まで無理矢理反らしていた目線を合わせ、強く睨みつけるとイギリスは少し戸惑った様子で私の腕を離した。


「私の事を嫌うのは結構。でもな、兄貴の事馬鹿にするのだけは許さえへんよ」

「べ、べつにそんなわけじゃ…」

「じゃ、私もう行くから」

「待てよ名!!」


今度は肩を掴まれたかと思うと、どこからか別の腕が伸びてきてそのイギリスの手を阻んだ。
背中から感じる体温と自分と同じ匂いにさっきまで荒れていた治まっていくような感覚がした。


「俺の妹に何してんねん」

「…スペイン」

「俺の妹になんかしてみろ、全力でボッコボコにしたるからな」


誰もが背筋が凍るような声に言葉を詰まらせるイギリス。
そんな彼を尻目に、兄貴に体をひょいと持ち上げられた私は兄に運ばれその場を後にした。



「名、大丈夫か!?何もされてないか!?」

「どないもあらへんよ…」

「ったくあの眉毛…!!性懲りもなく俺の妹に手ぇ出しやがって!ほんまに変な事されてへんか!?」

「大丈夫だって…。兄ちゃんが助けに来てくれたから何にもされへんかったし」

「そっか…。安心したわー。名がイギリスと一緒におるとこ見つけたとき心臓止まるかと思った」


ぎゅっと、痛いぐらいに私の体を抱き締める兄ちゃん。
ほんま心配性やなぁ、この兄貴は…。


「そろそろ会議始まるんとちゃうの?ほら、書類持って来たから」

「んー…名のおっぱい当たって気持ちええからもうちょっとこのまま…」

「死にさらせ」


持ってきた書類の入った分厚い封筒で兄貴の頭を叩く。
渋々書類を受け取り会議場へ向かう兄を見送り、小さく溜息をついた。



「お、おい名…」

「まだなんか用でもあるの?眉毛様」

「いや、その…さっきは…悪かったな」


通路の影に隠れていたイギリスが姿を現し、もじもじと体を揺らしながら視線を反らす。


「気持ち悪っ!!お前が謝るとかありえんわ!!きっしょくわるぅうううう!」

「なっ、なんだよ人が素直に謝ってやってんのに!!」

「は?べつに謝る必要もないやん」

「いや、でも…」

「私がいいって言ってるんやからええの。ほら、会議始まるんとちゃうの?はよせんと遅刻すんで」

「名……違うんだ…俺は……」


まだ何かを言いたそうにしているイギリスに背を向けて歩き出す。


「名…待てよ名!!」

「しつこいなぁ…ええ加減に、」

「っぅおあ!?」


振り向いた瞬間、視界から消えるイギリスの姿。

と、同時に下半身で何かがずり下ろされるような感覚が。



「え、あ、」



躓いて転んだ拍子に私のはいているスカートを掴んだイギリス。
不幸にもゴムウエスト物を履いてきた私のスカートは勢いと重力に任せて下へずり下ろされる形となった。



「イギリス…?」


「は、はい……」


「何か言う事は?」


「………」


「………」


「………お前…色気ない下着履いてんだな」


「死にさらせぇえええええええええええ!!!!!」



宿敵と、パンツ。



(一度でもこんなやつに惚れてたなんて、一生の汚点や…!!)







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実は以前キリリクで書かせていただいた”欲望”とリンクしていたりします。


2010.5.25





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