私の友人を紹介します。
名前はベールヴァルト・オキセンスシェルナと言います。 長いです。正直全部呼んでたら必ず途中で噛みます。
彼のあだ名は”スーさん”です。 それが何故かは知りませんが、ティノ君がそう呼んでいたので私もスーさんと呼んでいます。
スーさんはとても背が高いです。 その上見た目がとても怖いのでなかなか人を寄せ付けません。 なので彼には友達が少ないです。 一番身近なティノ君でも時々スーさんの事が怖いみたいです。 た、確かに目つき悪いけど…私はそんなに怖くないですよ…
「名」
前言撤回。ちょっと怖いです。
「なんですかスーさん」
「昼飯。でぎた」
「わぁ、ありがとうございます」
今日はスーさんからのご招待でスーさんの家に遊びに来ています。 まだスウェーデンは寒く雪が積もっていて、ここに来るまでに何度か雪で滑って転びました。 その度スーさんにひょいっと起こしてもらったのはここだけの秘密。
「スーさんの作る料理は美味しいですね」
「えがった」
「もごっ。このパンも美味しいでふ」
「・・・・・・」
「もふがふもふっ!」
「・・・・・・何言ってんだかわかんねぇ」
おっといけないいけない。つい口に突っ込みすぎてしまいました。 スーさんの作る料理はすごく美味しいのでついつい食べ過ぎてしまうのがちょっと問題です。 彼の家から帰ってくるといつも体重が増えてるのもここだけの秘密です。
「スーさん、午後はどうします?」
「おめぇは何かしてぇ事でもあんのけ…?」
「そうだなぁー…。あ、折角雪が沢山あるんですしかまくらでも作りましょうか」
「かまくら・・・?」
「知りませんか?私の国では雪の多い場所なんかでよく作られるんですけど…。じゃあ試しに私が一つ作って見せますよ!」
「ん。楽しみだべ」
「任せてください!張り切っちゃいますよ私!」
スーさんが嬉しそうに笑って私の頭をポンポンと撫でた。
スーさんの優しい笑顔に私は弱いです。
「できたぁあああ!!」
「これが・・・かまくら・・・」
「そうですよー!この中に入ってお餅焼いたりするんです。まぁ入ってみてくださいよ」
「ん・・・」
「さぁさぁ遠慮せず、ずいずいっと入ってください!」
「・・・・・・」
先に私が入って、その後にスーさんが続く。
「すみません・・・ちょっと狭かったですね・・・」
腰を丸めてできるだけ小さくなるスーさん。 かなり窮屈みたいです。
「はい、ちょっとじゃないですね。かなり狭かったですね。なんか苦しそうですよスーさん」
「さすけね・・・」
「いや、かなり厳しい顔してますよ!私出ますからもうちょっと広く使ってください」
「それは許さね」
「ええええ〜…」
出て行こうとすればスーさんに引き止められる。ついでに睨まれる。 なんだろうこの状況…狭くて身動きとりにくいし…。 幸いスーさんと密着しているお蔭で寒くはない。 寒くはない、けど…
「…近くないですかスーさん」
「・・・そーけ?」
「はい。近いですよ」
「なら、えがった」
「意味分かんないですよスーさん!」
スーさんは時々意味が分からないことを言います。 そういう時は大抵嬉しそうに笑っているので私もそれ以上何も言えません。
スーさんが嬉しいなら私も嬉しいのでそれはそれで良い事なのだと思います。
ここまでスーさんの事を紹介してきて薄々お気づきかもしれませんが、私はスーさんの事が好きなのです。
スーさんと一緒に居るととても幸せです。 時々じっと見つめられた時は怖いけど、すぐにドキドキに変わります。
今もまた、じっとスーさんに見詰められて。 ぎゅっと手を握られたかと思えばおでこにキスをされて。
ぽかんと口を開けて呆然としていたら、私のマヌケ面が可笑しかったのでしょう。 スーさんが楽しそうに笑います。
普段は無口な彼ですが、私の前ではよく笑ってくれます。 それがとても嬉しくて、幸せな事なのです。
私の友人を紹介します
いつかスーさんを恋人として紹介できる日が来ればいいなぁ、なんて。
2010.5.7
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